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第一章 無能令息と最強王子
<3>最強の王子アラン・ベリンガム2
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(思い出すだけで胸糞わりぃな……本当、信じられないぐらい最低だな今回の親は)
頭痛で蹲っていた俺を心配したリアムによって、今は再びベッドの中だ。とはいえ眠気は一切ない。両腕を頭の後ろに回して、寝転がったままあれこれとこれまでの人生を振り返ってみる。
もっと早く記憶が戻っていたら、こんな目には遭わなかったかもしれない。
(だってこんなに魔力に満ちている。もしかしたらこの魔力量は前世の俺以上かもしれないな)
右の手のひらにほんの少し意識を集中させるだけで、手全体がぼうっと薄桃色の光に覆われる。これだけで戦場なら何十人もの傷を一度に治してしまうことができるだろう。
(神官がゴミだったんだな。たまにいるって話は聞いたことがあるが……)
魔力量を査定する神官が優秀な人間ではなかった場合、たまに査定を誤ることがあると前世で耳にしたことがあった。
特に魔力量が大きすぎると、神官の能力によっては測定することができず「測定不能」という結果になるらしい。
おそらく俺の魔力を査定した神官は、「測定不能」をゼロと判断したのだ。
だがこれで良かったのかもしれない。こんなにも強大な魔力を保持していることがわかれば、エリスの自由は今と違う形で奪われていたかもしれない。
(こんだけ魔力があったら、国が放っておかねえだろ……ま、魔力がなくても国から放り出されちまうけどな)
エリスは3日後、隣国のベリンガム帝国の婚約者の元へ向うことになっているのだ。あの両親のことだ、ケガをした
ところで日程を遅らせたりするなんてことはしてくれないに決まっている。
ベリンガム帝国は他国民の出入国を厳しく制限しているため、情報があまり伝わってこない。その上軍事大国ということで、近隣諸国からは得体の知れない国として恐れられている。だからこそ両親は迷うことなく俺を差し出したのだろう。
「ま、別に俺はいいけど……勝手知ったる母国だしな」
ただ、まさかアイツの婚約者として帰国することになるとは思わなかった。
(あの泣き虫坊主が氷狼を引き継いでくれてるなんて、思いもしなかったなあ)
前世の最後に見たのは幼いレヴィの泣き顔だった。頭を打ったときのプリシラの泣き顔とも重なるように思えた。
(もしかして、記憶が戻るきっかけはあいつらの泣き顔だったのかもな)
婚約者というのは複雑だが、強く逞しくなった小さな弟子と再会できると思うと心が躍る。
だが今の俺はレヴィから見たら何の関りもない隣国の公爵令息だ。生まれ変わったなんて言ってもにわかには信じられないだろう。
(とりあえず正体は黙っておくか……20年ぶりだし、昔よりいい国になっているといいなあ)
目を閉じて、祖国の青い空を思い浮かべていると部屋のドアが控えめにノックされた。
「どうぞ」
リアムがひょっこりと顔を出す。眉は八の字に下がり、今にも泣きそうな顔をしている。
「今度はなんだ?」
「旦那様と奥様がお呼びです」
「目覚めたと伝えたのか?」
「いえ……。あの、まだ意識が戻らなかったら叩いてでも起こしてきなさいと……」
最後は気まずそうに目を逸らしながら声を小さくしていく。その様子に苦い笑みがこぼれる。
「リアム、気にしなくていいぞ。あの人たちに何を言われたとしても俺はもう気にしない。行くぞ」
「は、はいっ……!」
まるで子犬のように後を追ってくる乳兄弟を従えて俺は両親の部屋へ向った。
頭痛で蹲っていた俺を心配したリアムによって、今は再びベッドの中だ。とはいえ眠気は一切ない。両腕を頭の後ろに回して、寝転がったままあれこれとこれまでの人生を振り返ってみる。
もっと早く記憶が戻っていたら、こんな目には遭わなかったかもしれない。
(だってこんなに魔力に満ちている。もしかしたらこの魔力量は前世の俺以上かもしれないな)
右の手のひらにほんの少し意識を集中させるだけで、手全体がぼうっと薄桃色の光に覆われる。これだけで戦場なら何十人もの傷を一度に治してしまうことができるだろう。
(神官がゴミだったんだな。たまにいるって話は聞いたことがあるが……)
魔力量を査定する神官が優秀な人間ではなかった場合、たまに査定を誤ることがあると前世で耳にしたことがあった。
特に魔力量が大きすぎると、神官の能力によっては測定することができず「測定不能」という結果になるらしい。
おそらく俺の魔力を査定した神官は、「測定不能」をゼロと判断したのだ。
だがこれで良かったのかもしれない。こんなにも強大な魔力を保持していることがわかれば、エリスの自由は今と違う形で奪われていたかもしれない。
(こんだけ魔力があったら、国が放っておかねえだろ……ま、魔力がなくても国から放り出されちまうけどな)
エリスは3日後、隣国のベリンガム帝国の婚約者の元へ向うことになっているのだ。あの両親のことだ、ケガをした
ところで日程を遅らせたりするなんてことはしてくれないに決まっている。
ベリンガム帝国は他国民の出入国を厳しく制限しているため、情報があまり伝わってこない。その上軍事大国ということで、近隣諸国からは得体の知れない国として恐れられている。だからこそ両親は迷うことなく俺を差し出したのだろう。
「ま、別に俺はいいけど……勝手知ったる母国だしな」
ただ、まさかアイツの婚約者として帰国することになるとは思わなかった。
(あの泣き虫坊主が氷狼を引き継いでくれてるなんて、思いもしなかったなあ)
前世の最後に見たのは幼いレヴィの泣き顔だった。頭を打ったときのプリシラの泣き顔とも重なるように思えた。
(もしかして、記憶が戻るきっかけはあいつらの泣き顔だったのかもな)
婚約者というのは複雑だが、強く逞しくなった小さな弟子と再会できると思うと心が躍る。
だが今の俺はレヴィから見たら何の関りもない隣国の公爵令息だ。生まれ変わったなんて言ってもにわかには信じられないだろう。
(とりあえず正体は黙っておくか……20年ぶりだし、昔よりいい国になっているといいなあ)
目を閉じて、祖国の青い空を思い浮かべていると部屋のドアが控えめにノックされた。
「どうぞ」
リアムがひょっこりと顔を出す。眉は八の字に下がり、今にも泣きそうな顔をしている。
「今度はなんだ?」
「旦那様と奥様がお呼びです」
「目覚めたと伝えたのか?」
「いえ……。あの、まだ意識が戻らなかったら叩いてでも起こしてきなさいと……」
最後は気まずそうに目を逸らしながら声を小さくしていく。その様子に苦い笑みがこぼれる。
「リアム、気にしなくていいぞ。あの人たちに何を言われたとしても俺はもう気にしない。行くぞ」
「は、はいっ……!」
まるで子犬のように後を追ってくる乳兄弟を従えて俺は両親の部屋へ向った。
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