15 / 85
第二章 氷狼騎士団長の秘密
<8>塩対応
「ごめん。話の途中だったね」
呆然とする俺のことなど気づきもせずにレヴィは話を続ける。
「ちなみに僕のためにきみを一生縛りつけておくなんてことも考えてないよ。僕、優しいから」
「はあ」
「即位してからずっと、他人の力なんか借りずにこの呪いを解呪できる薬を作る実験をしてるんだ。けっこういい線まできてるから、近いうちに完成すると思う」
「すごい! ……ですね」
さすがレヴィだ。俺も魔法薬草学は好きだったが、レヴィもよく俺の実験を興味深そうに眺めていたことを思い出す。ちょっとおかしなところはあるが、弟子の成長は素直に嬉しい。
「まあね。自分で言うのもなんだけど、僕にできないことはない。だからきみにはあと数年だけ、癒しの力を貸してほしいんだ。完全に解呪できたら国に返してあげる。だからその後は本命と再婚でもなんでもすればいいよ。離婚理由もあっちの王サマや公爵たちに怒られないように、きみに否がないものをちゃんと考えてあげるから」
「ありがとうございます」
正直、家に戻れるのが嬉しいかと言われればまったく嬉しくない。また使用人のような扱いや虐めを受けるに決まっている。
(ああ、でも帰ったら魔力を見せつければ、あいつらも黙るか。それだけじゃ心許ない気もするな。ベリンガムにいる間に、何か金を稼ぐ方法でも考えるか)
自分の未来に頭を巡らせていると、レヴィが言葉を続ける。
「僕は戦場に出向いていることも多いから、一緒にいる時間もそんなに多くはないよ。だからきみも普段は好きに暮らしてね。欲しいものとか、やりたいことがあれば使用にたちに言って。僕に干渉したり迷惑をかけないこと――お金で解決できることなら、基本的にはなんでもしてあげる。どう? 悪くない条件でしょ」
「ですね」
「ただし、離婚して国に戻ってもヴァンダービルトの秘密は誰にもしゃべってはいけないよ」
「え?」
穏やかだが冷たい声の方に視線を向けると、鮮やかな青が楽しそうに煌めいた。
「もし国に帰って誰かにこの秘密を話したら――君のこと、殺しちゃうからね」
「……はい」
「じゃあそういうことで。契約成立だね。よろしく、ええと……なんだけっけ、きみの名前」
「エリスだ……じゃなくて、です」
「そうそうエリス! ごめんね。僕って興味のないこととか必要ないことって全然覚えられなくって。それときみ、敬語苦手でしょ? いちいち言い直すのウザいから、もう敬語使わなくていいからね
」
てへという仕草でウインクをしてくる。超絶可愛らしいが、言っていることはまったく可愛くない。
(要は俺の名前を覚えることは必要ないってことだろ……なんだコイツ)
昔はこんな子どもだったろうか。もっと素直で優しい性格だった気がする。うーんと唸りながら首を傾げていると、再びレヴィの声が飛んできた。
「ねえ。いつまでいる気? そろそろ帰ってほしいんだけど」
「は?」
「話は終わったし、用事も済んだ。僕、明日にはまた戦場に戻るから少し休みたいんだよね。帰ってくる時期がわかったらマークにでも連絡しとくから。じゃ」
レヴィはしっしと追い払うような仕草をすると、立ち上がって部屋の奥の方へ歩いていく。
赤い扉を開けて別の部屋入ってしまうと開け放された中から声だけが聞こえた。
「ベッドの近くに魔法陣があるでしょ? 上に乗ればきみの部屋に帰れるから。僕が着替えてる間に帰ってよ」
「わかった。じゃあ」
聞こえるように少し大きな声で返事をすると、俺は魔法陣を踏み自室へと戻った。
呆然とする俺のことなど気づきもせずにレヴィは話を続ける。
「ちなみに僕のためにきみを一生縛りつけておくなんてことも考えてないよ。僕、優しいから」
「はあ」
「即位してからずっと、他人の力なんか借りずにこの呪いを解呪できる薬を作る実験をしてるんだ。けっこういい線まできてるから、近いうちに完成すると思う」
「すごい! ……ですね」
さすがレヴィだ。俺も魔法薬草学は好きだったが、レヴィもよく俺の実験を興味深そうに眺めていたことを思い出す。ちょっとおかしなところはあるが、弟子の成長は素直に嬉しい。
「まあね。自分で言うのもなんだけど、僕にできないことはない。だからきみにはあと数年だけ、癒しの力を貸してほしいんだ。完全に解呪できたら国に返してあげる。だからその後は本命と再婚でもなんでもすればいいよ。離婚理由もあっちの王サマや公爵たちに怒られないように、きみに否がないものをちゃんと考えてあげるから」
「ありがとうございます」
正直、家に戻れるのが嬉しいかと言われればまったく嬉しくない。また使用人のような扱いや虐めを受けるに決まっている。
(ああ、でも帰ったら魔力を見せつければ、あいつらも黙るか。それだけじゃ心許ない気もするな。ベリンガムにいる間に、何か金を稼ぐ方法でも考えるか)
自分の未来に頭を巡らせていると、レヴィが言葉を続ける。
「僕は戦場に出向いていることも多いから、一緒にいる時間もそんなに多くはないよ。だからきみも普段は好きに暮らしてね。欲しいものとか、やりたいことがあれば使用にたちに言って。僕に干渉したり迷惑をかけないこと――お金で解決できることなら、基本的にはなんでもしてあげる。どう? 悪くない条件でしょ」
「ですね」
「ただし、離婚して国に戻ってもヴァンダービルトの秘密は誰にもしゃべってはいけないよ」
「え?」
穏やかだが冷たい声の方に視線を向けると、鮮やかな青が楽しそうに煌めいた。
「もし国に帰って誰かにこの秘密を話したら――君のこと、殺しちゃうからね」
「……はい」
「じゃあそういうことで。契約成立だね。よろしく、ええと……なんだけっけ、きみの名前」
「エリスだ……じゃなくて、です」
「そうそうエリス! ごめんね。僕って興味のないこととか必要ないことって全然覚えられなくって。それときみ、敬語苦手でしょ? いちいち言い直すのウザいから、もう敬語使わなくていいからね
」
てへという仕草でウインクをしてくる。超絶可愛らしいが、言っていることはまったく可愛くない。
(要は俺の名前を覚えることは必要ないってことだろ……なんだコイツ)
昔はこんな子どもだったろうか。もっと素直で優しい性格だった気がする。うーんと唸りながら首を傾げていると、再びレヴィの声が飛んできた。
「ねえ。いつまでいる気? そろそろ帰ってほしいんだけど」
「は?」
「話は終わったし、用事も済んだ。僕、明日にはまた戦場に戻るから少し休みたいんだよね。帰ってくる時期がわかったらマークにでも連絡しとくから。じゃ」
レヴィはしっしと追い払うような仕草をすると、立ち上がって部屋の奥の方へ歩いていく。
赤い扉を開けて別の部屋入ってしまうと開け放された中から声だけが聞こえた。
「ベッドの近くに魔法陣があるでしょ? 上に乗ればきみの部屋に帰れるから。僕が着替えてる間に帰ってよ」
「わかった。じゃあ」
聞こえるように少し大きな声で返事をすると、俺は魔法陣を踏み自室へと戻った。
あなたにおすすめの小説
過労で倒れかけの騎士団長を「カツ丼」で救ったら、なぜか溺愛され始めました。
水凪しおん
BL
王都の下町で、亡き両親が残した小さな食堂をたった一人で切り盛りする青年、ルカ。
孤独な日々の中で料理だけを生きがいにする彼の店に、ある冷たい雨の夜、全身を濡らし極限まで疲弊した若き騎士団長、レオンハルトが倒れ込むようにやってきた。
固形物さえ受け付けないほど疲労困憊の彼を救うため、ルカが工夫を凝らして生み出したのは、異世界の食材を組み合わせた黄金色の絶品料理「カツ丼」だった。
その圧倒的な美味しさと温もりに心身ともに救われたレオンハルトは、ルカの料理と彼自身に深く魅了され、足繁く店に通うようになる。
カツ丼の噂はまたたく間に王都の騎士たちや人々の間に広がり、食堂は大繁盛。
しかし、その人気を妬む大商会の悪意ある圧力がルカを襲う。
愛する人の居場所を守るため、レオンハルトは権力を振るって不正を暴き、ルカもまた自らの足で立つために「ルカ商会」を設立する決意を固める。
美味しいご飯が傷ついた心を癒やし、やがて二人の絆を「永遠の伴侶」へと変えていく。
胃袋から始まり、下町の小さな食堂から王都の食を支える大商会へと成り上がる、心温まる異世界お料理&溺愛ファンタジー!
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
【完結】義妹(いもうと)を応援してたら、俺が騎士に溺愛されました
未希かずは(Miki)
BL
第13回BL大賞 奨励賞 受賞しました。
皆さまありがとうございます。
「ねえ、私だけを見て」
これは受けを愛しすぎて様子のおかしい攻めのフィンと、攻めが気になる受けエリゼオの恋のお話です。
エリゼオは母の再婚により、義妹(いもうと)ができた。彼には前世の記憶があり、その前世の後悔から、エリゼオは今度こそ義妹を守ると誓う。そこに現れた一人の騎士、フィン。彼は何と、義妹と両想いらしい。まだ付き合えていない義妹とフィンの恋を応援しようとするエリゼオ。けれどフィンの優しさに触れ、気付けば自分がフィンを好きになってしまった。
「この恋、早く諦めなくちゃ……」
本人の思いとはうらはらに、フィンはエリゼオを放っておかない。
この恋、どうなる!? じれキュン転生ファンタジー。ハピエンです。
番外編。
リナルド×ガルディア。王族と近衞騎士の恋。
――忠誠を誓った相手を、愛してはいけないと思っていた。切ない身分差、年の差の恋。恋の自覚は、相手が成人してからになります。