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第三章 ベリンガム帝国の異変

<1>変わった嫁※レヴィ視点

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「レヴィ様」
マークの戸惑いを隠せない声に振り返る。すでに着替えもシャワーも済んだ。後は軽い朝食を取ったら戦地へ戻るつもりである。

「なにあったの? 僕もう戻るし、面倒ごとならおまえでどうにか処理してよ」
「はあ……それが」
「なに。はっきり言えよ」

戦地へ赴くために少し神経がピリついているのが自分でもわかる。少し荒い口調に、マークがビクリと肩を揺らした。

「ごめん。怒ってるわけじゃない。ちょっと気が立ってるだけだ」
「申し訳ございません。先ほどエリス様から依頼がありまして」

「なに? この国の娼館でも教えてほしいって?」
彼は父と一緒に夜な夜な夜会や街の娼館へ繰り出して享楽的な日々を過ごしていたと聞いている。1日でも静かに夜を過ごすことなど耐えられなかったのかもしれない。

「いえ、それが……」
「どんなとんでもないこと言ってきたの、あのガキ」

「図書館を見て回りたいと……」
「は?」

予想外過ぎる言葉に間抜けな声が出る。マークは複雑な表情で再び言葉を繰り返した。
「この国について知りたいので図書館へ行く許可を得たいと。またヴァンダービルトの屋敷にそういった所蔵があれば読ませてほしいとのことで……」

「へえ……わかった。従者にシェーンを付けて許可を出してあげて。少しでも怪しい動きがあれば報告するように伝えて」
「かしこまりました」
マークは一礼して部屋から消える。まさか図書館に行きたがるとは想像していなかった。

(アイルズベリーにスパイ活動でもさせられるのか? まあだとしても尻尾を掴んだら用が済むまで監禁するまでだけどね)

いったい何処でいつ聞いたのかは知らないが、この国で起きている異変に気付いたのかもしれない。

「あのガキ、意外と勘がいいのかもしれないな」

度々こうして戦地に駆り出されているのも、豊饒な土地をベリンガムの領地にするための策の一貫なのだ。

騎士団長としてこの対策に諸手を挙げて賛成している訳ではない。けれど、そうしなければ国民の不安は大きくなるばかりで、国力も落ちていく一方だ。

だがどんな豊かな土地もこの国の領地になった途端、1年も経たないうちに異変が起きてしまう。このままではベリンガム帝国の領土が大きくなればなるほど、この大陸には異変が広まってしまうのだ。

そうしてそれは、この20年余りベリンガム帝国が抱えるもっとも大きな秘密であり、問題だった。何人もの有識者が原因を調べてきたが、誰も突き止めることはできてない。

他国から嫁にきたばかりの20歳の青年に何ができるとも思えないが。まあ好きに動けばいい。どうせ何も解決できるわけがないのだから。その間、大人しくしてくれるのであれば正直助かる。

「そろそろ行くか」
魔法陣を踏み、ダイニングへと飛ぶ。朝食の後はすぐに戦地へと戻らなければいけない。すでに頭の中は戦況のことでいっぱいになった。

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