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第三章 ベリンガム帝国の異変
<8>レヴィの帰還
「なにこの部屋」
レヴィは目を見開いて呆然としている。帰ってきたレヴィが、突然俺の部屋に現れたのだ。
ベッドに潜り込んだ途端、部屋の魔法陣が光ったのには驚いた。部屋着にガウンを羽織ったレヴィは信じられないという表情で部屋を見渡した。
「いきなりなんすか? ていうか俺、もう眠いんで明日にしてほしいんだけど」
せっかくライトを落とした部屋が、今は煌々と照らせている。入眠体制万全だった俺は少しイライラしてきた。
やっとこっちを見たかと思ったら、レヴィは鋭い目になって俺を見据える。
「この部屋。どうしたの」
「部屋?」
「色。変えたでしょ」
「あ……」
(しまった。もしかして色を勝手に変えたことで怒っているのか?)
「ごめん、変えちゃいけいないと思わなくて――」
「別にいいよ」
「え?」
「色を変えるのは別にいいよ。けど、なんでこの色にしたの?赤と黒の組み合わせもだけど、家具の配置も絨毯やカーテンの模様まで……これじゃまるで……」
そう言ったきり、レヴィは黙ってしまった。
そうだ、レヴィは俺の部屋に何度も遊びに来たことがあった。すっかり忘れていた。
(しまった……!)
心の中で舌打ちをする。居心地のいい部屋にすることばかりを考えていたら、前世の俺の部屋そっくりにしてしまったのだ。それにまさかレヴィが俺に好意を持っているなんて思ってもみなかったから。
一人で考えを巡らせている間も、レヴィは探るような目つきでじっと俺を見ている。とにかく、うまくごまかしてこの場を乗り切らなければ。
「な、何か問題でもあるのか? 俺、赤と黒が好きでこの色が落ち着くから変えたんだけど」
「……それだけ?」
「そ、そうだけど。なんだよ」
レヴィはふっと目元を緩めて美しく笑った。
「別に? でも、もしきみが意図を持ってこの部屋を模様替えしたんだとしたら、思ったよりバカじゃないんだなと思っただけ」
「い、意図って……」
ダメだ。レヴィの考えていることも言ってることもさっぱりわからない。だがレヴィはすっと目を細める。優雅に見えるその奥に、激しい憎悪の炎が燃えていた。
「こんなことをして僕に取り入ろうとしてもムダだよ。絶対にね。シェーンや使用人たちのことは上手く手懐けたみたいだけど」
「はぁ? なに言ってんだよさっきから」
「へぇ。しらばっくれるのも上手いんだ」
「……」
嫌な言い方だと思うが、レヴィの発言が意味不明すぎて反応に困る。黙っていると、レヴィはうんざりしたように息を吐いた。
「まあいいや。それより本題に入るね。5日後、国王陛下に僕らの結婚のお披露目がある。陛下と王妃様、それに王子たちの前で結婚の挨拶をするだけだよ……僕が上手くやるから、きみは何もしなくていいよ。ていうか、むしろ何もするな。いいね?」
「……わ、わかった」
5日後。父上だけでなく、母上や兄弟たちにも会える。そう思っただけで胸が喜びで震える。
「話は終わりね。じゃ、僕戻るから」
レヴィは返事も待たずにガウンの裾を翻して魔法陣の方へ歩いていく。
「あ。忘れることだった」
だが魔法陣に足を踏み入れる直前、踵を返すと俺に向ってくる。
「な、なに……んっ」
突然両腕を掴まれて、そのまま有無を言わせず唇を合わせられる。前も思ったがレヴィの唇はとても冷たい。まるでキンキンに冷やしたゼリーやムースを押してられているようだ。
驚いている間にキスは終わり、突き放すようにして解放された。
「そろそろヤバそうだったから。力、もらったよ。じゃあね」
それだけ言うとレヴィは部屋から姿を消した。
「なんだアイツ……すげー感じ悪い……」
再び薄闇に包まれた部屋の中に俺の声が間抜けに響いた。
レヴィは目を見開いて呆然としている。帰ってきたレヴィが、突然俺の部屋に現れたのだ。
ベッドに潜り込んだ途端、部屋の魔法陣が光ったのには驚いた。部屋着にガウンを羽織ったレヴィは信じられないという表情で部屋を見渡した。
「いきなりなんすか? ていうか俺、もう眠いんで明日にしてほしいんだけど」
せっかくライトを落とした部屋が、今は煌々と照らせている。入眠体制万全だった俺は少しイライラしてきた。
やっとこっちを見たかと思ったら、レヴィは鋭い目になって俺を見据える。
「この部屋。どうしたの」
「部屋?」
「色。変えたでしょ」
「あ……」
(しまった。もしかして色を勝手に変えたことで怒っているのか?)
「ごめん、変えちゃいけいないと思わなくて――」
「別にいいよ」
「え?」
「色を変えるのは別にいいよ。けど、なんでこの色にしたの?赤と黒の組み合わせもだけど、家具の配置も絨毯やカーテンの模様まで……これじゃまるで……」
そう言ったきり、レヴィは黙ってしまった。
そうだ、レヴィは俺の部屋に何度も遊びに来たことがあった。すっかり忘れていた。
(しまった……!)
心の中で舌打ちをする。居心地のいい部屋にすることばかりを考えていたら、前世の俺の部屋そっくりにしてしまったのだ。それにまさかレヴィが俺に好意を持っているなんて思ってもみなかったから。
一人で考えを巡らせている間も、レヴィは探るような目つきでじっと俺を見ている。とにかく、うまくごまかしてこの場を乗り切らなければ。
「な、何か問題でもあるのか? 俺、赤と黒が好きでこの色が落ち着くから変えたんだけど」
「……それだけ?」
「そ、そうだけど。なんだよ」
レヴィはふっと目元を緩めて美しく笑った。
「別に? でも、もしきみが意図を持ってこの部屋を模様替えしたんだとしたら、思ったよりバカじゃないんだなと思っただけ」
「い、意図って……」
ダメだ。レヴィの考えていることも言ってることもさっぱりわからない。だがレヴィはすっと目を細める。優雅に見えるその奥に、激しい憎悪の炎が燃えていた。
「こんなことをして僕に取り入ろうとしてもムダだよ。絶対にね。シェーンや使用人たちのことは上手く手懐けたみたいだけど」
「はぁ? なに言ってんだよさっきから」
「へぇ。しらばっくれるのも上手いんだ」
「……」
嫌な言い方だと思うが、レヴィの発言が意味不明すぎて反応に困る。黙っていると、レヴィはうんざりしたように息を吐いた。
「まあいいや。それより本題に入るね。5日後、国王陛下に僕らの結婚のお披露目がある。陛下と王妃様、それに王子たちの前で結婚の挨拶をするだけだよ……僕が上手くやるから、きみは何もしなくていいよ。ていうか、むしろ何もするな。いいね?」
「……わ、わかった」
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「あ。忘れることだった」
だが魔法陣に足を踏み入れる直前、踵を返すと俺に向ってくる。
「な、なに……んっ」
突然両腕を掴まれて、そのまま有無を言わせず唇を合わせられる。前も思ったがレヴィの唇はとても冷たい。まるでキンキンに冷やしたゼリーやムースを押してられているようだ。
驚いている間にキスは終わり、突き放すようにして解放された。
「そろそろヤバそうだったから。力、もらったよ。じゃあね」
それだけ言うとレヴィは部屋から姿を消した。
「なんだアイツ……すげー感じ悪い……」
再び薄闇に包まれた部屋の中に俺の声が間抜けに響いた。
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