ゲスいお嬢様的日常(仮)

胸の轟

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コンコンー

「ハッ!!」

全身にグッショリと汗をかきながら目覚めた。

もう…駄目だと思った。あまりにも力が強くて、あれが最期だって思った。ーー今度こそホントに死ぬんだと………


「よ、良かった…。い、生きてる!」


コンコンッー

ノックの音に知らず身体がビクリとなった。折角助かったのに、また命の危機が!ーーいやっ!死にたくない!


「いい加減起きなさい!朝食が冷めるでしょ!」

「ぇ、え?…ママ?」


なんでママが居るの!?ーーそこで気付く。あれ?ここ…支配者の家……じゃ…ない……?ーー私の家の、私の部屋だ。

「ぁは…あははっ…覚めた!覚めたんだ!やっぱり全部夢だったのね!そうよね!支配者があんな人間なわけないじゃない!バッカみたい私ったら!」


自分自身に言い聞かせるように、声に出して言った。

誤魔化すようにひきつった笑いを浮かべながら、自分の身体が震えていることに気づかないふりをした。


夢から覚めて安堵したのも束の間、朝食の席でグダグタと見当違いなお説教をされ、ものすごく不愉快な気分にさせられた。


全てが夢だと思ってたのに、支配者との仲を反対されたのって夢じゃなかった。ああ、もう、最悪!全部夢だったら良かったのに!

腹立たしい気持ちで寮に戻る羽目になった。




◆◆


移動教室で廊下を歩いていたら、前から支配者が。ーー近付く支配者の姿にーー私の身体はガタガタと震え出した。


嘘、何で!?何で支配者を見て私は…!?

それは緊張でも寒さでもなく、紛れもなく恐怖によるものだった。ーーしっかりしなさいよ私!今は現実よ!現実の支配者はあんなんじゃない。何を怖がる必要があるのよ!


夢の支配者と現実の支配者は別人だって分かってるのに、震えが止まらない。ーーまだ、ゆ、夢を見たばかりだから仕方ないわね!うん、そう、あんな夢を見たばかりだから仕方ない。少し時間が経てば大丈夫!

ごめんね支配者…。ちょっとだけ、ちょっとの間だけ寂しくても私が側に居ない時間を我慢してね。


たとえ側に居なくても、私の心は貴方のすぐ側に寄り添ってるから。ーー貴方なら感じ取れるはず。



支配者に見つからないように、そっと隠れてやり過ごす。ーー姿が完全に見えなくなったところで安堵のため息を吐く。


そんな自分の心に愕然とする。

や、やだ!私ったら!支配者に見つからなかったことになんで安堵してんの!?そこはどうして気付いてくれないのって思うところでしょ!?


ポンー

「ヒッ!」

急に肩に手を置かれビクッとなる。

「ごめん、びっくりさせちゃったみたいだね。」

黒ぶちメガネがニコニコしながら私を見ている。

何を考えてるのか、黒ぶちメガネは私を追い詰め、壁に手をつき見つめてきた。

「ちょっ、何ッー」


黒ぶちメガネの指が唇を撫でる仕種と、見つめてくる瞳がやけに色っぽくて驚きで固まった。

な、何?何なのコイツ!?ーーいつもの冴えなさは鳴りを潜め、色気を駄々漏れされている。


顔のラインを撫でる指にゾワゾワとしたものが背に走った。ーー人目からは死角になっていて、誰も私たちに気づかない。


や、ちょっ、これヤバくない!?こ、こいつ無理矢理私の唇を奪う気じゃ!?

そんなのいやっ!大声を出そうとした途端


「ゴミがついてたよ。」
「へ…?」

「じゃあ授業に遅れないように急ごうか。」

そう言って笑顔を浮かべた黒ぶちメガネは、もういつもの冴えない黒ぶちメガネだった。

「あ、俺、ちょっと用があるんだった。先行っていいよ。」


な、な、何なのよ!意味分かんない!!

あんな冴えない男にちょっとドキドキした自分が腹立たしい!黒ぶちメガネを睨み付け、不機嫌さを隠す気もなく荒々しい足取りで私はその場を去った。




古里羅が見えなくなった後、慈狼は通信を入れる。

ー《主、アイテム回収しました。》
ーー《ん、ありがとう》







恐ろしい夢を見ることはもうなかった。だから安心して支配者の元に行ける!ーー筈だったのに…………


姿を見れば見つかる前に隠れてやり過ごす自分がいた。


少し時間が経てば大丈夫!ーーなんて思ってたのに、全然大丈夫にならなかった。



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