ゲスいお嬢様的日常(仮)

胸の轟

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月下香を君に

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博史は三人兄弟の末っ子として、あまり裕福ではない家に生まれた。


寡黙で厳しく、多くを語らないが、博史に愛情ある眼差しを向けてくれる父親、少し気は強いが、子ども達に愛情を注いでくれる母親。

元気で活発な兄達と末っ子特有の甘えん坊な博史。

家族の愛情を受けて育ち、幸せな日々を送っていた。(中略)






博史が十二になった頃、幸せは崩れた。

父親には長年愛人が居り、それが露呈し、家庭は崩壊していく。


母親は兄達を連れ家を出ていき、後には父親と愛人、そして、置いていかれた博史が残ったのだった(中略)







それは、父親の留守中に行われた。



博史の入浴中、愛人が突然押し入ってきたのだ。

その目は生々しい欲にまみれ、博史の全てを絡め捕ろうとするように、じっとりと眺めている。


初めてぶつけられた女の情欲が、精神を、身体を、恐怖で押さえ付け、まるで蛇に睨まれた蛙のように、博史はただただ震えるのみで動くことも出来ない。


女の情欲を、絡み付く視線を、世界を遮断するように目を強く閉じる間際に見えたのは、弧を描くような女の真っ赤な唇だった(中略)







元愛人のクソババア(後妻)は、捨てられるように仕向けて無一文で追い出してやった。


女なんか浅ましくて醜悪で、全てが気持ち悪い。



感情的でヒステリックで、泣けば許されると本気で思っているのが解って嫌悪しかわかない。


隣で安らかな寝息をたてて眠る相手を眺める博史の眼差しは、何処までも暗く澱んでいた。


じっと注がれる視線を感じたのか、女が身動ぎする。


「…ぅん……、…もう起きてたの?」

「奈菜さんの可愛い寝顔見てたんだ。」


博史の瞳の暗さも澱みも霧散し、そこには“恋人”を眺めるに相応しい、愛し気な色のみが存在していた。


「やだもうっ、恥ずかしいから見ないで!」

「恥ずかしがる奈菜さんも可愛い。」


“恋人”の唇に、軽く口付ける。


あの忌まわしい日から数年に及ぶ苦痛な日々を経た結果、博史は女に憎しみをぶつける人間へと進化していた。


“恋人”の部屋に転がり込んで、どれくらい経つだろう。この女にも、たくさんの“愛”をくれてやった。
そろそろ良い頃合いだろう。


愛情など所詮夢幻だと思い知ればいい


暗い感情が揺らめく。


女の行く末を思うと、堪らなく興奮し、見も心も快楽に支配されていく。


「っん…」


快楽に身を任せ、熱く疼くものを吐き出すため、啄むようだった口付けから深みのあるものへと変えた…







あれから十年が経ち、博史は二十五(中略)




及川会長に徹底的に仕込まれた技と美貌で、博史は今日も女を堕とす。


じっくりと時間をかけ、心も身体も自分に夢中にさせ開発し、ハニートラップ要員に仕上げていくのだ。(中略)



博史の思惑に気付いた時には、すでに引き返すことは出来ない。


「どうしてなの!?なんでこんなっ…愛してるって言ったじゃない!」


愛?そんなものなどこの世に存在しないさ。馬鹿で愚かなお前も、一つ利口になれただろ?

チラリと契約書に目をやった後、博史はほの暗い愉悦混じりの瞳を向ける。


「お前のお蔭で俺の懐が潤うよ、有り難う。…お礼といっちゃなんだが、俺からお前に最後の贈り物だ。受け取れよ。」


「待ちなさいよ!ねぇっ待ってよ!待って!」



ヒラヒラと手を振り、悲痛な叫びに心動かされることもなく、博史は部屋を出ていく。





後には裏切られた女と、月下香だけが残された~終~









博史の人生がシリアス祭りな件。





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