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ドキドキが止まらない≪三原≫【1】
しおりを挟む迷惑なストーカー女に腕を掴まれたと思ったら違った。
「…あ、ごめん。」
「ううん、こっちこそ急に掴んだりしてごめんね。」
部屋までの道すがら、何だかいつもと様子が違うように感じた。どこか落ち着きがないようなーーそんな雰囲気に引きずられてるのか、俺も何となく落ち着かない。そんな気分のまま玄関を開け中へ。
「すごく静かね。」
「防音がしっかりしてるからね。喧騒とは無縁だよ。」
「ええと、室内が静かだなって。」
おかしなことを言い出した。ーー独り暮らしで留守宅が五月蝿かったら、それは確実に面倒事が発生してる合図だと思う。
「そりゃあ俺達しか居ないし静かだろうね。ーーもしかして会いたかった?」
白檀に会いたかったのかな?ーーでも俺んちで会いたがるって変だよな。ーー何か急用ですぐ顔を合わせる必要が?
「そうね、折角だし会い…」
言いかけて動きが止まった。ーーと思ったら慌て出した。
「え、私たちだけなの!?…うわぁーどうしよう!?どうしたら!?」
「え、何?どうしたの!?何か問題が!?」
これ程感情を露にしたことがあっただろうか?ーー否無い。ーーえ、何!?マジでどうした!?今すぐ白檀に会わないとなんかヤバいことになるの!?
「ナ、ナンデモナイヨ(棒)」
ドナイヤネン…。
俺を怖がらせるためちょっと言ってみたとか言わないよね?何なの?俺のチキン度を計りたかったの?取り合えずチキン度を計るのは止めてほしい。嫌な感じに心臓がドキドキするから。出来れば違うドキドキ感をください。
「座って待ってて。」
「う、うん。」
焼き菓子と紅茶を用意しながら、昼休みに言われたことを思い出す。ーーまさか本当にストーカー女を飼ってるとか思われてないよね?…目障りで迷惑な女がいつまでもチョロチョロしてることで、俺がストーカー女を許容してると思われてるのかもしれない。あ、あり得る。
「お待たせ。」
紅茶と焼き菓子を運んで隣に腰をおろす。
焼き菓子が目の前にあるのに何故か手をつけようとしない。
「どうしたの?食べないの?」
「た、食べるよ?」
隣から仄かに香る知らない香りに刺激されたのか、すごく触れたくて堪らなくなる。気持ちを抑えるのも何だか惜しくて、気が付けば焼き菓子に伸ばされた手に触れていた。ーー握ったその手から微かに震えが伝わってきた。
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