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しおりを挟む「あんた凪沙 晴臣だよね。」
「どちら様?」
凪沙 晴臣──世間を震撼させた凶悪犯。
逮捕され容姿が公になると、美しき殺戮者──なんて呼ばれ、特集すれば視聴率も売上も桁違いで、テレビも雑誌も挙って凪沙を扱ってたものだ。
「あんたなんか若くない?」
凪沙の死刑が間近に迫ってた頃、年齢よりかなり若く見えてたけど、今じゃ未成年にしか見えない。
「僕のこと知ってるんですか?」
「知ってるもなにも──あんた自分が超有名人て自覚ないわけ?」
「…驚いた。知ってる人が居るとか。」
『 』
「ああ、そういう?──だからもう消えた世界を覚えてるんですね。」
『 』
「え、キモ。こんな時まで独り言とか。あんた電波でもどっかから受信してんの?怖っ」
「チキショー!開け!開けよ!なんで開かないんだよ!」
さっきからずっと、ドアにぶつかったり椅子で殴ったり、ジュドが外に出ようと必死でマジうるさくて会話の邪魔。
あれ?ショーンが使いものにならなくなったのに、なんで魔法消えてないの?
「自称凄腕魔法使いが信用出来なかったんで、僕が重ねといたんでご安心を。」
あたしの考えを察したように言われた。いやそれ安心の要素どこに?あんたが解除しなきゃ出られないし、助けも期待出来ないってやつだよね。まぁ、ジュドには悪いけど、あたしにはすっごく都合いい状態だわ。
だって密室で目の前には極上の獲物。思わず舌なめずりしちゃった。
転生?転移?──どっちなのか知らないけど、殺戮者とか呼ばれてたって、所詮ただの人間だし。
「苦痛と絶望の中殺されるのと、苦痛と絶望をこれでもかって味わいながら死ぬのとどっちがいい?優しいあたしは選ばせてあ・げ・る♪」
『 』
「いいんですか?」
「いいよ!」
「え、キモ。自分に話しかけてると思うとか。あんた自意識過剰なの?怖っ」
さっきあたしが言ったこと微妙に変えてイジッてくる余裕ぶった態度にイラッときた。今すぐ八つ裂きにしてやろうか!いや落ち着けあたし。所詮はただの人間。一方的に搾取されるだけの家畜。どれだけ自分が危うい立場に居るかこれっぽっちも理解出来ないからこその強きな憐れなやつなんだから。
「相手の力量も分かんない雑魚が、いつまでそんな余裕でいられるかしらね!」
「怖っ。」
へらへら笑う凪沙に拘束魔法を放つ。
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