5 / 47
〈2〉
しおりを挟む倒れた魔物のあげる土埃が収まった先に、私の愛するアロイス様が。
「アロイス!ユリウス!」
「「ケイトッ」」
縛られた私をアロイス様が見つめる。
その瞳は、すぐにでも愛する私の元へ駆けつけたいと如実に語りかけてくる。
嗚呼!アロイス様!私も今すぐあなた様の元へ駆け出したい。
アロイス様ですら、まだ触れたことのない身体を、汚らわしい男に為す術もなく触れられ、ロープで繋がれている私をどうかお許しください。
「お前を倒す!」
アロイス様達が、私を取り戻すべく動こうとした矢先、男の仲間が。
「ジキタリス様!ーーー」
何事かを告げられた憎きジキタリスが、私のロープを引き撤退しようとしたその時ー
「させるか!」
ユリウスの放った矢が、ロープを見事断ち切ってくれた。
さすがアロイス様の弟だわ!
一瞬の迷いの後、ジキタリスは撤退。
どこまでも往生際の悪い姑息な男は、炎を置土産にして行ったわ!
アロイス様!アロイス様!助けてください!
「「ケイト!」」
切羽詰まった二人の声が、私の危機感を煽る。ーーイヤッ死にたくない!
「ユリウス!これを!」
アロイス様から投げられた魔石を鏃に、天井めがけ矢を放つユリウス。
途端、勢いよく水が降り注ぎ、無事炎を消し去っていった。
「アロイス!ユリウス!」
「ケイト!」
アロイス様が駆け寄り、私を抱きしめてくれたわ。
もしもユリウスが、ロープを断ち切ることに失敗していたら、私はあのまま連れ去られ、そしてその後はーー卑劣なあの男のこと、私の身体を…
自分の考えにゾッとしてしまう。待ち受けていたであろう行く末。ーーそうならずにアロイス様に抱かれている状況に、心底安堵する。
「ケイト、ケイト、ケイト!ああ、ケイト…無事で良かった。」
「アロイス…」
「もう二度と君に会えないかと…、君を失うかもって…。」
申し訳ないと思いながら、アロイス様が誰よりも何よりも、私を大事に想ってくれてることを感じ、それが嬉しいと胸がどうしようもなく震える私を知ったなら、あなた様は私を嫌うでしょうか。
「ケイト、俺さ、やっと自分の気持ちに気づいたんだ。俺は「ストーップ。そういうのは二人きりの時にお願いします。」
誰?折角のアロイス様の愛の言葉を遮ったのは!ーー代償を払わせてやるから覚悟することね。
ロープを解いてくれたアロイス様が、もう一度抱きしめてくれた後、私の手を握りしめる。
アロイス様の瞳が、不安げに揺れていることに気づいてしまった。
愛する私を奪われた事実が、アロイス様を苦しめているのね…。
ジキタリスの目的が分からない以上、これまでのように離れて暮らすのは得策ではないように思えてならない。
出来ることなら何時だって一緒に過ごしたいけれど、結婚をするまではひとつ屋根の下、暮らすようなはしたない真似は許されないもの。だから我慢して別々の家で暮らしていたけれど、いつまたジキタリスに拐われないとも限らないし、離れているとアロイス様が不安で壊れてしまいそう。
取り敢えずお兄様に相談してみましょう。お兄様なら必ず解決してくださるわ。
2
あなたにおすすめの小説
俺の伯爵家大掃除
satomi
ファンタジー
伯爵夫人が亡くなり、後妻が連れ子を連れて伯爵家に来た。俺、コーは連れ子も可愛い弟として受け入れていた。しかし、伯爵が亡くなると後妻が大きい顔をするようになった。さらに俺も虐げられるようになったし、可愛がっていた連れ子すら大きな顔をするようになった。
弟は本当に俺と血がつながっているのだろうか?など、学園で同学年にいらっしゃる殿下に相談してみると…
というお話です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ダンジョン嫌いの元英雄は裏方仕事に徹したい ~うっかりA級攻略者をワンパンしたら、切り抜き動画が世界中に拡散されてしまった件~
厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
「英雄なんて、もう二度とごめんだ」
ダンジョン出現から10年。
攻略が『配信』という娯楽に形を変えた現代。
かつて日本を救った伝説の英雄は、ある事情から表舞台を去り、ダンジョン攻略支援用AI『アリス』の開発に没頭する裏方へと転身していた。
ダンジョンも、配信も、そして英雄と呼ばれることも。
すべてを忌み嫌う彼は、裏方に徹してその生涯を終える……はずだった。
アリスの試験運用中に遭遇した、迷惑系配信者の暴挙。
少女を救うために放った一撃が、あろうことか世界中にライブ配信されてしまう。
その結果――
「――ダンジョン嫌いニキ、強すぎるだろ!!」
意図せず爆増するファン、殺到するスポンサー。
静寂を望む願いをよそに、世界は彼を再び『英雄』の座へと引きずり戻していく。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
道化たちの末路
希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と側室母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる