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4.ケイト〈1〉
しおりを挟むこの世はお金が全て。
高価な宝石、高級な仕立てドレス。有名職人のレアな調度品に、異国の珍しい果実にお菓子。
望めば贅を尽くしたあらゆる物が、難なく手に入る。
それだけじゃないわ。お金さえあれば、黒を白にだって出来てしまう。
お金が全てではないと、お金では得られないものもあるのだと、富とは無縁の人ほど言うわね。──負け犬の遠吠えにしか聞こえない主張は、残念ながら私の心に響くこともなく、お金が全てという私の考えは変わることもないまま。
「ケイトさん、貴女にお似合いの宝石があるよ。僕に贈らせてもらえないだろうか?」
「まぁ、有り難う。」
今日も私の家の財産を手に入れたい男が、気に入られようと貢ぎ物をくれるのを笑顔で受け取るの。
そのうちお父様が、私に侍る男の中から、一番相応しい男を選ぶことでしょう。──私はその相手と結婚をし、今までと変わらず贅を尽くした生活を送り、跡取りを産むのでしょうね。
既に未来ははっきりとしているけれど、特に不満はないわ。──そう、不満などあるはずがないわ。
ただ、そうね…、ちょっと子どもっぽい望みかもしれないけれど、物語に出てくるような王子様と恋に落ちたいわ。
そんな気持ちを見透かすように、ある日メイドが話を持ち出してきたの。
「冒険者が何だと言うの?」
「ただの冒険者ではございません。アイドル冒険者です。彼らはーー」
メイドの言うことは良く分からなかったけれど、要するに見目麗しい男が、ショーを見せてるとかなんとか。
見目麗しいと言っても、所詮荒くれ者の集まりでしかない冒険者でしょう?たかが知れてるじゃないの。
大方冒険者の中ではマシな男達ってところでしょうね。
でも、まぁ、そうね。折角教えてくれたのだし、ちょっと暇潰しに見てみるのも良いかもしれないわ。
冒険者のショーとやらをやっている場所へ、メイドの口利きで裏口から中へ入った時
「よぉ。」
「あ?ー珍しいな、お前がここに来るなんて。」
私は出逢った。
生涯愛し合う運命の人に。
「たまには顔出そうかと思ってさ。最近客の入りはどーよ?」
「まぁ、それなり?ー人気商売だし、最近ライバルも増えたから仕方ないっちゃ仕方ないけどな。」
「そっか。──邪魔して悪い。そろそろ行くわ。」
私に気付き彼が笑みを浮かべた。
錫色の髪、知性溢れる菫の瞳。スラッと伸びた背に引き締まった体躯。
服装から冒険者らしいことが伺えるけれど、粗野とはかけ離れた洗礼された姿。
こんなにも美しい男性を、見たことがない。──こんなに、美しい人が冒険者だなんて信じがたい。
仕立ての良い服に着替えたら、誰も彼を冒険者だとは思わないんじゃないかしら?
「楽しんでね。」
互いの視線が交わった時、私は理解してしまった。
彼も私と同じ気持ちなのだと。
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