怠惰な蟲使い(仮)

胸の轟

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10.

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今日は常連になりつつある店に、ジンジャーブレッドを買いに行くことにした。


アロイスさんありがとう。色ボケ野郎で顔しか取り柄のないムカつくヤツだけど、お前のお陰で菓子が沢山買えます。ーー買えますが、ダンジョンショーだけでも実入りは良いんで、そっちでだけ恩恵に預かりたいです。



カランコロンー

「いらっしゃい。」


こじんまりした店のカウンターで、キャサリンが笑顔を見せる。

「やぁ、ジンジャーブレッドおくれ。」

「あんた好きよね、ジンジャーブレッド。」
「うん。」

「オマケしてあげようか?」

「うん?」

キャサリンがなんかニヤニヤして俺を見てる。

「んふふ~、じゃあ私にキス出来たらーー!?なななっ何すんのよ!」

頬を打とうと振り上げられた手を避ける。


「何避けてんのよ!」
「いや、打たれる意味が分からないし。希望通りキスしてあげたのに何が不満?」

「じょ、冗談に決まってるでしょ!何真に受けてホントにしてんのよ!バッカじゃないの!」

「何だ冗談か。ーー顔がすごく赤いよ。キャサリンてキスしたことないの?」

「こ、これは怒ってるから赤いのよ!私だってキ、キスくらいなな何度もしたことあ、ありますからね!」

したことないんだね。


「ごめんね?」


お姉さんぶって俺をからかいたかったんだろうなと、何となく察する。ニヤニヤしてたし、俺にはキスなんて出来っこないと思ってたっぽいね。俺のこと童貞野郎だと思ってんのかな。

ご期待に添って、頬染めながらアワアワしてあげれば良かったかな。そしたら沢山オマケくれたかもしれない。


「誠意がちっとも感じられない!」


カランコロンー

「あっ!い、いらっしゃいませ!」
「…何だか大きな声がしていたみたいですけど、大丈夫ですか?」

入ってきた客がチラリと俺を見る。


「へあっ!?やっ、あの大丈夫です!」

「何だかお顔も赤いようですけど、本当に大丈夫ですか?」


だから何でチラチラ俺を見るかな。


「じゃあ俺そろそろ行くね。」
「あ、うん。…またのご来店お待ちしてまーす。ーーえっと、もう欲しいものは決まってますか?」

「ええ、欲しいものはーー」



包みを開けると、多めにジンジャーブレッドが入ってた。怒ってたのにオマケしてくれてた。

良い人だなキャサリン。今度ビーネちゃんの蜜を分けてあげよう。キャサリンならきっとすごく美味しいお菓子を作るに違いない。ーー作ったら俺にくれるといいな。


ジンジャーブレッドを噛りながらブラブラする。

甘くてスパイシーな味が口の中に広がっていく。すごく癖のある味だから、ダメな人はダメだけど、俺は割りとお気に入りだ。

このジンジャーブレッドって、入ってるのはシナモンやカルダモンとかで、ジンジャーなんて入ってないのに何でジンジャーブレッドって言うんだろ。

沢山の店が建ち並ぶ賑やかな大通りを冷やかしながら歩き、ご機嫌な俺は口笛を吹き、気の向くまま脇道に逸れ、珍しい物がないか見ながらブラブラする。


いろいろな道をフラフラしてるうち、いつの間にかすっかり寂しげな場所だ。


「ねぇ!」
「何?」

「久しぶり!って、もしかして私のこと覚えてないの?」

「ごめん覚えてない。」
「そっか…。見かけてつい声かけちゃったけど、迷惑だっかな?」


シュンとした姿が何とも庇護欲をそそるね。ーー覚えてないことに罪悪感を抱かせるくらいに。


「用があるわけではないの?」
「えっと、…用は、久しぶりに逢えたから、お茶でもしながらお喋りを…」


こっちは全然覚えてないのに、誘おうとしてたのが恥ずかしいような態度で、最後の方は声が小さくなっていた。


「一緒には行けない。」
「えっと、お喋りしてるうちに私のこと思い出すかもしれないじゃない!美味しいケーキを出すお店を知ってるの。だから行きましょ?」

「店だけ教えてよ。後で行くから。」

「…そう。一緒に来る気はないのね。出来れば穏便に進めたかったんだけど。」



そんなことは全く思ってもなさそうな声で言ったのを合図に、柄の悪い男達が現れた。
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