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今日は常連になりつつある店に、ジンジャーブレッドを買いに行くことにした。
アロイスさんありがとう。色ボケ野郎で顔しか取り柄のないムカつくヤツだけど、お前のお陰で菓子が沢山買えます。ーー買えますが、ダンジョンショーだけでも実入りは良いんで、そっちでだけ恩恵に預かりたいです。
カランコロンー
「いらっしゃい。」
こじんまりした店のカウンターで、キャサリンが笑顔を見せる。
「やぁ、ジンジャーブレッドおくれ。」
「あんた好きよね、ジンジャーブレッド。」
「うん。」
「オマケしてあげようか?」
「うん?」
キャサリンがなんかニヤニヤして俺を見てる。
「んふふ~、じゃあ私にキス出来たらーー!?なななっ何すんのよ!」
頬を打とうと振り上げられた手を避ける。
「何避けてんのよ!」
「いや、打たれる意味が分からないし。希望通りキスしてあげたのに何が不満?」
「じょ、冗談に決まってるでしょ!何真に受けてホントにしてんのよ!バッカじゃないの!」
「何だ冗談か。ーー顔がすごく赤いよ。キャサリンてキスしたことないの?」
「こ、これは怒ってるから赤いのよ!私だってキ、キスくらいなな何度もしたことあ、ありますからね!」
したことないんだね。
「ごめんね?」
お姉さんぶって俺をからかいたかったんだろうなと、何となく察する。ニヤニヤしてたし、俺にはキスなんて出来っこないと思ってたっぽいね。俺のこと童貞野郎だと思ってんのかな。
ご期待に添って、頬染めながらアワアワしてあげれば良かったかな。そしたら沢山オマケくれたかもしれない。
「誠意がちっとも感じられない!」
カランコロンー
「あっ!い、いらっしゃいませ!」
「…何だか大きな声がしていたみたいですけど、大丈夫ですか?」
入ってきた客がチラリと俺を見る。
「へあっ!?やっ、あの大丈夫です!」
「何だかお顔も赤いようですけど、本当に大丈夫ですか?」
だから何でチラチラ俺を見るかな。
「じゃあ俺そろそろ行くね。」
「あ、うん。…またのご来店お待ちしてまーす。ーーえっと、もう欲しいものは決まってますか?」
「ええ、欲しいものはーー」
包みを開けると、多めにジンジャーブレッドが入ってた。怒ってたのにオマケしてくれてた。
良い人だなキャサリン。今度蜂ちゃんの蜜を分けてあげよう。キャサリンならきっとすごく美味しいお菓子を作るに違いない。ーー作ったら俺にくれるといいな。
ジンジャーブレッドを噛りながらブラブラする。
甘くてスパイシーな味が口の中に広がっていく。すごく癖のある味だから、ダメな人はダメだけど、俺は割りとお気に入りだ。
このジンジャーブレッドって、入ってるのはシナモンやカルダモンとかで、ジンジャーなんて入ってないのに何でジンジャーブレッドって言うんだろ。
沢山の店が建ち並ぶ賑やかな大通りを冷やかしながら歩き、ご機嫌な俺は口笛を吹き、気の向くまま脇道に逸れ、珍しい物がないか見ながらブラブラする。
いろいろな道をフラフラしてるうち、いつの間にかすっかり寂しげな場所だ。
「ねぇ!」
「何?」
「久しぶり!って、もしかして私のこと覚えてないの?」
「ごめん覚えてない。」
「そっか…。見かけてつい声かけちゃったけど、迷惑だっかな?」
シュンとした姿が何とも庇護欲をそそるね。ーー覚えてないことに罪悪感を抱かせるくらいに。
「用があるわけではないの?」
「えっと、…用は、久しぶりに逢えたから、お茶でもしながらお喋りを…」
こっちは全然覚えてないのに、誘おうとしてたのが恥ずかしいような態度で、最後の方は声が小さくなっていた。
「一緒には行けない。」
「えっと、お喋りしてるうちに私のこと思い出すかもしれないじゃない!美味しいケーキを出すお店を知ってるの。だから行きましょ?」
「店だけ教えてよ。後で行くから。」
「…そう。一緒に来る気はないのね。出来れば穏便に進めたかったんだけど。」
そんなことは全く思ってもなさそうな声で言ったのを合図に、柄の悪い男達が現れた。
アロイスさんありがとう。色ボケ野郎で顔しか取り柄のないムカつくヤツだけど、お前のお陰で菓子が沢山買えます。ーー買えますが、ダンジョンショーだけでも実入りは良いんで、そっちでだけ恩恵に預かりたいです。
カランコロンー
「いらっしゃい。」
こじんまりした店のカウンターで、キャサリンが笑顔を見せる。
「やぁ、ジンジャーブレッドおくれ。」
「あんた好きよね、ジンジャーブレッド。」
「うん。」
「オマケしてあげようか?」
「うん?」
キャサリンがなんかニヤニヤして俺を見てる。
「んふふ~、じゃあ私にキス出来たらーー!?なななっ何すんのよ!」
頬を打とうと振り上げられた手を避ける。
「何避けてんのよ!」
「いや、打たれる意味が分からないし。希望通りキスしてあげたのに何が不満?」
「じょ、冗談に決まってるでしょ!何真に受けてホントにしてんのよ!バッカじゃないの!」
「何だ冗談か。ーー顔がすごく赤いよ。キャサリンてキスしたことないの?」
「こ、これは怒ってるから赤いのよ!私だってキ、キスくらいなな何度もしたことあ、ありますからね!」
したことないんだね。
「ごめんね?」
お姉さんぶって俺をからかいたかったんだろうなと、何となく察する。ニヤニヤしてたし、俺にはキスなんて出来っこないと思ってたっぽいね。俺のこと童貞野郎だと思ってんのかな。
ご期待に添って、頬染めながらアワアワしてあげれば良かったかな。そしたら沢山オマケくれたかもしれない。
「誠意がちっとも感じられない!」
カランコロンー
「あっ!い、いらっしゃいませ!」
「…何だか大きな声がしていたみたいですけど、大丈夫ですか?」
入ってきた客がチラリと俺を見る。
「へあっ!?やっ、あの大丈夫です!」
「何だかお顔も赤いようですけど、本当に大丈夫ですか?」
だから何でチラチラ俺を見るかな。
「じゃあ俺そろそろ行くね。」
「あ、うん。…またのご来店お待ちしてまーす。ーーえっと、もう欲しいものは決まってますか?」
「ええ、欲しいものはーー」
包みを開けると、多めにジンジャーブレッドが入ってた。怒ってたのにオマケしてくれてた。
良い人だなキャサリン。今度蜂ちゃんの蜜を分けてあげよう。キャサリンならきっとすごく美味しいお菓子を作るに違いない。ーー作ったら俺にくれるといいな。
ジンジャーブレッドを噛りながらブラブラする。
甘くてスパイシーな味が口の中に広がっていく。すごく癖のある味だから、ダメな人はダメだけど、俺は割りとお気に入りだ。
このジンジャーブレッドって、入ってるのはシナモンやカルダモンとかで、ジンジャーなんて入ってないのに何でジンジャーブレッドって言うんだろ。
沢山の店が建ち並ぶ賑やかな大通りを冷やかしながら歩き、ご機嫌な俺は口笛を吹き、気の向くまま脇道に逸れ、珍しい物がないか見ながらブラブラする。
いろいろな道をフラフラしてるうち、いつの間にかすっかり寂しげな場所だ。
「ねぇ!」
「何?」
「久しぶり!って、もしかして私のこと覚えてないの?」
「ごめん覚えてない。」
「そっか…。見かけてつい声かけちゃったけど、迷惑だっかな?」
シュンとした姿が何とも庇護欲をそそるね。ーー覚えてないことに罪悪感を抱かせるくらいに。
「用があるわけではないの?」
「えっと、…用は、久しぶりに逢えたから、お茶でもしながらお喋りを…」
こっちは全然覚えてないのに、誘おうとしてたのが恥ずかしいような態度で、最後の方は声が小さくなっていた。
「一緒には行けない。」
「えっと、お喋りしてるうちに私のこと思い出すかもしれないじゃない!美味しいケーキを出すお店を知ってるの。だから行きましょ?」
「店だけ教えてよ。後で行くから。」
「…そう。一緒に来る気はないのね。出来れば穏便に進めたかったんだけど。」
そんなことは全く思ってもなさそうな声で言ったのを合図に、柄の悪い男達が現れた。
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