怠惰な蟲使い(仮)

胸の轟

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〈2〉

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「イヤッ!放してっ」


まるで愛しいかのように強く抱き締めてやる。

どんなに必死に抵抗しても、これから身に降りかかることからは決して逃れられないというのに、逃れようと必死になる様が、とても哀れで気分を高揚させる。


ふと抱き締める力が緩んだ瞬間、石ころが腕から逃げ出した。

テーブルを挟む形で向かい合い、右に動けば左に。左に動けば右へと動き、近付けさせまいと必死だ。

視線はドアへチラチラと向い、隙をついて何とか外へ逃げようと思っているのが手に取るように分かる。


テーブル越しの攻防をした後、石ころが上に乗っていた花瓶をこちらへ投げつけ、避けた瞬間に乗じてドアへと走った。


石ころがドアを開けるよりも先に、来訪者がドアを開けた。

石ころがこちらに背を向けているため表情は見えないが、見えなくても安堵の表情を浮かべているのが分かる。

「助けて!──」


名を呼ばれる前に素早く部屋に滑り込んだ来訪者は、石ころを捕らえ、口を塞いだ。

「残念。世の中そんなにタイミング良く助けなんて現れやしないよ。」



石ころという存在は、なんて無様で滑稽なのだろう。敢えて一度逃がし、また捕まえた時の顔がとても素敵だから、この遊びを止められない。


「んーッんーッ!」


来訪者が暴れる身体をズルズルと引き摺り、ベッドまで行き乱暴に投げ出す。


「きゃあ!」

逃げ出そうとする石ころを押さえ付け、手足をベッドに括り動きを封じた。


「これから行われることは、とても光栄なことだよ。石ころでしかない君が、特別な存在に身を捧げられるんだ。」

「じょ、冗談よね?ジョッシュ。」

裏切られたという現実を、まだ理解していないらしい。すがるような眼差しをジョッシュに向けている。

ジョッシュはといえば、蒼白な顔で立ち尽くしている。

「や・・・め・・・」
「ジョッシュ!」


その言葉からジョッシュが乗り気ではないことが分かり、石ころが期待を込めた瞳でジョッシュの名を呼んだ。

ジョッシュはきっと何が行われるか知らずに手を貸してしまったに違いない。でも、分かった今ならきっと止めてくれる。──そんなことを思っているのだろう。

だが、ジョッシュは絞り出すように言葉を吐いただけで、実際はピクリとも動きを見せない。


「ジョ、ジョッシュ・・・?」

「言った筈。助けなんて都合良く現れないと。ジョッシュは味方じゃないことにいい加減気付くべきだ。」

「・・・お、お願い・・・やめて。」

「石ころに拒否権など無いと知れ。さぁ、ジョッシュ、楽しもうじゃないか。」

「ぃ・・・嫌、だっ・・・嫌だ!俺は──」

「ジョッシュ、ちゃんと分かってる。ちゃんと理解しているよ。とても弱い人間だと。君は嫌だと言いながら、結局やってしまうような弱い人間だってことを。」

「嫌だ、俺はっ!・・・俺はっ・・・こんな・・・」

「ジョッシュ、お願いっ!助けて!」

ブルブルと震え、嫌だと繰り返しながらジョッシュが動く。

さぁ、ジョッシュ、楽しい時間の始りだ。


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