怠惰な蟲使い(仮)

胸の轟

文字の大きさ
1 / 47

1.

しおりを挟む
いかにも冒険者といった服装の若者が二人。

一人は剣を、もう一人は弓を携えている。

二人の周りには仲間と思われる数名と、魔物が地に伏し、よく見れば立っている二人も満身創痍といったところか。


「ハァッハァッ…」

「ハァッ…ハァッ…アロイス、これくらいでバテるなんて運動不足なんじゃない?」

「ハッ…ユリウス、お前こそ鍛え直せば?バテバテじゃないか。」


俺たちは負けない。
負けるわけにはいかない。

決意を込め敵を睨む。


それは2メートル近い魔物、大猿だ。

どちらも相手の出方を見定めるように動かない。ーーが、魔物が一瞬早く攻撃を仕掛けた。


走り寄る魔物にアロイスが駆け出し、剣を振るう。

「クッ」

いつものアロイスであれば、その一振りで容易く魔物を仕留められただろう。

だが今は満身創痍。一撃は致命傷を負わすこと叶わず、魔物の腕がアロイスを殺すべく伸ばされた。


「アロイス!」

すかさずユリウスが矢を放つ。

矢は魔物の目を貫き、よろめく魔物にアロイスが渾身の一撃を繰り出した。


グワァァアーー

ドドーン!!


断末魔とともに魔物が倒れ土埃が立った。


「……」

魔物を倒したというのに、アロイスは油断なく前方を見据える。


土埃の向こうに、いつの間に現れたのか、顔半分を仮面で隠した男が立っていた。

そして男の横には

「アロイス!ユリウス!」

「「ケイトッ」」


彼らの幼なじみが縛られた姿で立って居た。


「まさかアレを倒すとは思いませんでしたね。」

「ケイトを返せ!」
「嫌だと言ったら?」

「お前を倒す。」

「クッ、ハハハッ!この私を倒すだと?アレを倒したくらいで、調子に乗るなよ若造が!」


仮面の男の放つ殺気に、アロイスとユリウスが気圧される。


けれどそれも一瞬。


「お前を倒す!」


剣と弓を構える二人と仮面の男の間に火花が散り、一触即発の緊迫した場に、突如乱入した影。

「ジキタリス様!───」


何事かを告げられたジキタリスと呼ばれた仮面の男は、舌打ちするとケイトのロープを引き撤退をー

「させるか!」


ユリウスの放った矢が、ジキタリスとケイトを繋ぐロープを見事断ち切る。

一瞬の迷いの後、ジキタリスはケイトを残し撤退した。

アロイス達とケイトを隔てる炎を置き土産にして。

「「ケイト!」」

「ユリウス、これを!」

アロイスから投げられた魔石を鏃に、天井めがけ矢を放つ。

途端、勢いよく水が降り注ぎ、無事炎を消し去った。


「アロイス!ユリウス!」

「ケイト!」

アロイスが駆け寄り、ケイトを抱き締めた。


「ケイト、ケイト、ケイト!ああ、ケイト…無事で良かった。」

「アロイス…。」

「ケイト、俺さ、やっと自分の気持ちに気付いたんだ。俺は「ストーップ。そういうのは二人の時にお願いします。」

「なんかここ熱くね?炎があったせいかな。」

「いつまでそうしてる気?さっさとロープ解いてやんなよ。」

「そ、そうだな!」

気まずげなアロイスとケイトを、仲間達が生暖かい目で見守る。


ケイトのロープを解いたアロイスは、もう一度抱き締めた後、ケイトの手を握った。

再びジキタリスが現れ、またケイトを連れ去るかもしれない。


「大丈夫。」


アロイスから何かを感じ取り、ユリウスが呟く。


「帰ったら鍛え直しだな」
「俺はまだまだ強くなれる!成長期は終わってないからな。」

「お前ら…」
「後ろ向きなんてアロイスらしくない。」

「そう、だな…。」


ジキタリスの目的が何なのか、謎のままだ。

この先も幾度となく戦うのかもしれない。

けれど、仲間達が居る。

何度危機が訪れようと、仲間達が居ればきっと乗り越えられる。


アロイスの胸に光が灯った。






「これにてダンジョンショーは終了です。またのご参加お待ちしております。」








「出口に向かいまーす。慌てず騒がず移動してください。万が一魔物が襲って来ても、スタッフが対処しますので安心してください。ーそこのお姉さん、勝手は止めてね。」


たまに居るんだよね。何食わぬ顔で勝手するヤツ。

ちゃんと注意事項は伝えてあるし、守らないヤツの生死なんか知ったこっちゃない。まぁ金と権力があるヤツは助けるけど。

世の中そんなもんです。




「あの…、すみませんでした。」

勝手女が謝ってきた。


「あー…はい。」

「つい珍しくて。あの、スタッフさんですよね?ショーの間見かけなかったですけど。」

「まぁいろいろやることあるんで。」

アロイスと対峙したり。


「やっぱりスタッフともなると忙しいんですね。私、ショー初めて見たんですけど、凄かったです!炎とか水とか!…大丈夫なんですか?あんなに派手なことして。」

「あれば本物じゃなく装置で見せてるだけです。…がっかりさせちゃいましたかね。」

「いえッそんなことは!──そう言えばケイトさん?も冒険者ですか?」

「一般の方です。」

「え、じゃあどうして?」

「"本日のお姫様"ってヤツで、ヒーローに助けられる役です。」

「素敵な役ですね!」


役を射止めるのに大金かかるけどね。

金があるならゲットすれば?





「アロイス御用達、匂袋はいかがですかー?」

「ユリウスが魔物を仕留めた矢はいかがですかー?」



ダンジョンを出ればスタッフが、グッズを売り込んでいる。

街に帰ってから売れば良いと思うかもしれないが、二人の勇姿に興奮してるうちに売り込んだほうが売上が良いんだよね。



「お疲れ様でしたー。暫く休憩後、馬車が出まーす。良かったらグッズ見てってくださいねー。」 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ダンジョン嫌いの元英雄は裏方仕事に徹したい ~うっかりA級攻略者をワンパンしたら、切り抜き動画が世界中に拡散されてしまった件~

厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
「英雄なんて、もう二度とごめんだ」 ダンジョン出現から10年。 攻略が『配信』という娯楽に形を変えた現代。 かつて日本を救った伝説の英雄は、ある事情から表舞台を去り、ダンジョン攻略支援用AI『アリス』の開発に没頭する裏方へと転身していた。 ダンジョンも、配信も、そして英雄と呼ばれることも。 すべてを忌み嫌う彼は、裏方に徹してその生涯を終える……はずだった。 アリスの試験運用中に遭遇した、迷惑系配信者の暴挙。 少女を救うために放った一撃が、あろうことか世界中にライブ配信されてしまう。 その結果―― 「――ダンジョン嫌いニキ、強すぎるだろ!!」 意図せず爆増するファン、殺到するスポンサー。 静寂を望む願いをよそに、世界は彼を再び『英雄』の座へと引きずり戻していく。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と側室母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

もう、終わった話ですし

志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。 その知らせを聞いても、私には関係の無い事。 だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥ ‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの 少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

処理中です...