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前編
しおりを挟む走りながら時折後ろを振り返り、追手のないことを確認する。今のところ追手の影は見えない。
閉じ込められていた身体は鈍り、すでに息が苦しい。
休みを要求する身体を騙し騙し走り続ける。
もっともっと遠くへ、ずっと遠くまで行かなくちゃ。じゃないと私を閉じ込めたアイツに、直ぐに見つけられてしまう。
逃げ出した私を捕まえたら、アイツは私をどんな目に合わせるか分かったものじゃない。きっと、ううん、絶対恐ろしい目に合わせるに違いない!
アイツの冷たい眼差しを思い出し、ブルッとなった。
アイツを思うと頑張れる。そして私は頑張って頑張って頑張って、代わり映えしない森の中を走り続けた。
いくら走ってもすぐ後ろにアイツが居るような恐怖幻影に急かされ、森を抜け山を走り河を渡り、また森を走りー・・・
幾つ目かの森をそろそろ抜けられそうになった頃、漸くアイツの幻影を忘れ、気持ちが盛り上がってきた。
さあ、何処へ向かおう?船で海を渡る?汽車に乗り華やかな西へ行く?ーー何処だって構わない。だって私は自由を手に入れたんだから!今の私なら何処だって行ける!
「イヤッホーーーイッ!自由最ッッ高!!」
解き放たれた心と身体で、今なら私、空だって飛べちゃいそう!
鼻歌まじりにスキップして浮かれ過ぎたのがダメだった。
「あ」
足下の石に躓き
「ぬわぁぁあああぁあ」
ゴロンゴロンと勢い良く転がり
「ちょっ、待っ!?」
崖から華麗に飛び立つ
「ぅうぉおおおおぉおおおお死ぃいぃいいいいぬぅうううーーーー!!」
ザッパーーーン!!
激流突入。
前略お祖父ちゃん、人間はやはり飛べませんでした。
錐揉みで意識が遠退きながらそんなことを思った。
◆◆
前略お祖父ちゃん、私は元気です。ただーー
「ちょっとそこの新入り!さっさと部屋を掃除しな!」
「あ、はい。」
掃除すればした場所を指でなぞられて埃があると言われ、何をどうやっても全てが気に入らないらしい仕事仲間にガミガミ言われ、私だけが朝早くから深夜まで仕事をーーあれ、何か他人の仕事まで押し付けられてね?な感じで働き、挙げ句録な働き出来ないからこれで十分と食事は粗末な物を与えられーーあれ、これ虐め?的な毎日。
拾い物な何処の馬の骨とも分からんお前は給金とか必要無いよねってことで、タダ働き。優秀な働きをご希望ならお金払って!
自由を手に入れたと思ったら、自由の先が全然自由じゃなかった。
目覚めた時は優しくされ、良い人に助けられたと思ったら良い人じゃなかった。おまけに激流下りで錐揉みで、ボロくなってた私を拾ってくれたここん家(貴族相手の商人)の息子は、隙有らばエロいことに持ち込もうとしてくる始末。
どんな思いで私を拾ったのかは知らないが、一応助けられたことには変わらないから、取敢えずご恩返しで暫くはタダ働きしてあげようとは思ってる。
食事の量が少なくて、お腹空いて眠れない・・・
屋敷内をフラフラ。ーーしてたら息子に遭遇。
「こっち来いよ。」
よし、気づかなかったことにしよう。
「おい、待てお前」
腕を掴まれそうになったのをさっと避けーー見えてない見えてない。私は何も見えてない。
「おい、待てと言ってるだろう!」
さかさか急ぎ足で歩く私の後を追いかけてくるゲス男。
「くっ、このッ、早ッ!?おい、待て!」
あーあー聞ーこーえーなーいー
私に与えられてる三人部屋へスルっと滑り込み事なきを得た。ーーと、この時は思った。
次の日
「は?」
「給金の少ないお前が、店の金を使い込んだことは調べがついてるんだ!」
ぇえ~・・・。いやいや給金少ないも何も貰ってません。
「汚ならしいお前を拾って衣食住や仕事まで与えてやった恩がこれか!」
「何処の馬の骨とも分からないお前に、親身になったというのにこの仕打ち!恥を知りなさい!恥を!」
「図々しくも俺に言い寄るお前を傷付けまいと、やんわりと注意してやったのに通じず、調子に乗って言い寄るのを止めないばかりか隙有らば俺と既成事実を作ろうとする始末!」
「んまぁ!何てことでしょう!破廉恥な!ウーゴの優しさにつけ込むこの毒婦が!ああ、万が一ウーゴが毒牙にかかっていたらと思うと・・・!ウーゴも商会もこの女の思うままにされていたことでしょう!」
「ゾッとするな。こんな恩知らずは衛兵に突き出してくれる!」
「待ってくれ父さん!いくら恩知らずで恥知らずな人間とはいえ、直ぐに衛兵に引き渡すのはどうだろう。一先ずじっくりと如何に悪いことをやらかしたのか言い聞かせ、反省を促した後は無償で俺達に尽くさせるってのはどうだろう?それでも悔い改められなかったら、その時は衛兵ってのでも遅くないんじゃないかな。」
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「そうと決まれば、じっくり言い聞かせてやるから来い!」
ゲス男に腕を掴まれ、部屋に連れ込まれた後ベッドに乱暴に投げ出されー
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