上 下
1 / 6

1.

しおりを挟む
王国第三王子のロングは、我儘で傲慢。自分以外は虫けら並の存在だと公言して憚らないような人間で、良いところと言えば容姿くらいしかない王子だ。

ロングがそんな人間になったのは、ロングだけのせいではない。まわりに居る人間のせいでもある。

ロングが何をしようと、何を言おうと、何を望もうと、皆、全てを叶え肯定し誰一人として咎めなかった。



王族としてのマナーを学ぶ時間に、いつものようにサボッて部屋に居ると、母親が訪ねて来て言った。

「あなたと婚約者の顔合わせの日が決まりました。」

「…は?」

婚約者が居るなど初耳であったロングは一瞬ポカンとした後カッとなった。

自分の預かり知らぬ間に、勝手に婚約者などというものをあてがわれていたとは許しがたい。


「嫌だ!何勝手に決めてんだよふざけるな!相手は俺が選ぶんだ!」

「これはあなたが生まれた時からの決定事項です。」

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!そんなの認めないからな!」

ロング13歳。癇癪を起こし手当り次第に物を壊すが、生まれて初めて要求が通ることはなかった。

この時、話をする母親をよく見ていれば、母親の顔色がとても悪かったことに、声は少し震えていたことに気付いたことだろう。

人の感情など気にする価値もないと思っているロングはもちろん、最後までそんなことには気付かなかった。



そして迎えた初顔合わせの茶会。そこに居たのは陰気で薄気味悪い少女だった。






しおりを挟む

処理中です...