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3.

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「──で、その時は取り敢えず──」

出そうになるため息を堪え、天使像の前を通る。

こっちは話を聞く気もなく、あんまり会話をする気もないことを、スマホをいじりながら生返事で教えてるのに、気にするでもなくずっと話し続けてるのが鬱陶しい。


散々冷たくして別れたいアピールしてるの気付けよ。

あまりにもしつこく──うんと言うまで許さない気迫みたいなのに負け、嫌嫌下見に付き合ったが、こんなに鬱陶しい思いするならやっぱ断ったらよかった。そしたら今頃あの娘とイチャイチャ楽しく過ごせてたのに。





乗り気じゃないからなのか気のせいかもしれないが、なんとなく薄暗さを感じる廊下をどこか落ち着かない気持ちで歩き、下見する部屋につくと彼女がドアを開けた。

「あ、

そう言うと素早くドアが閉まり、ご丁寧に鍵をした音が。


「おい、ふざけんな!」


♪~♪♪

「うわっ!」

自分以外誰も居ないはずなのに、突然俺のじゃない着信音が鳴り心臓がドキリとした。

おそらく不動産屋が先に来て待って居たんだろう。閉じ込められたのが自分1人じゃなくて、どこかホッとした。この部屋に入ってから、なんだか気持ちがざわざわしていたから。

ここから早く出るべき──何故かそう感じる。


廊下を進んだ先に居ると思った不動産屋が見当たらない。


「不動産屋さーん、どこですか?鍵閉められて困ってるんですよ。──ん?」

少し開いてたドアの方から何か音がした。

そっちか?


「不動産屋さ──」


ドアを開けた中に──






昔、とあるマンションの一室で、血の海に沈む男女の遺体と、浴室で自殺したと思われる遺体が見つかった。


それからというもの、その一室に特別なことが起こるという噂が、まことしやかに囁かれている。



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