裏切りダメ、絶対。

胸の轟

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後編

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水に手を浸すように、何の抵抗もなく胸を貫けた。


「身体柔すぎじゃない?ちゃんと鍛えないと。ねぇ聞いてる?――ってもう死んじゃったの?」


片手で頭を押さえてから、突っ込んでた手を抜き、果江の頭に手をかけ、ミカンを二つに割るように割る。

剥き出しになった脳のなんと美味しそうなことか。


血と脳の匂いが混じりあい食欲をそそり、グウとお腹がなった。…ちょっと恥ずかしい。


行儀悪いけど、片手で喉を掴み、もう片方の手で脳ミソを鷲掴み頬張った。


私は脳ミソが大好物だ。


脳ミソの中でも特に、裏切り者の脳ミソが大好きだ。

どうしてかは知らないが、裏切り者とそうじゃない者の脳ミソを食べ比べると、裏切り者の方が何倍も良い味がする。



ずっと泳がせて育つのを待った甲斐があった。


何度欲望に負けそうになったことか。

歓喜に震える心の赴くまま、殺っちゃわないでホント良かった。


んん…、滑らかな舌触り。そして口の中に広がる濃厚で高級な味わい。

「クヒッ、最高~。」


我慢して我慢して我慢してーーやっとありつく好物って、普通に食べる時の何倍も美味しい。


果江の脳ミソを平らげ、ちょっとだけ悲しくなる。

私の誕生日のご馳走にしようと思ってたのに食べちゃった…。


口のまわりに付いた脳ミソを舐め取る。

他の裏切り者は、果江よりグッと味が落ちそうで微妙。


「…ぅ、うわーーッ!!うわーー!!」


誰かが叫んだのを合図に、恐怖で何も出来ずにいた奴等が、蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。



逃げたところで行く末は一択しかないのに、全く無駄なことをするものだわ。



用済みになった果江の死体を捨てる。


はしたないと思ったけど、名残惜しくて、脳ミソを掴んでた手を舐めてしまう。

維知衣を見ると、なんか顔がおかしなことに。


「やぁだ、維知衣ったら。おキレイな顔が、酷いことになっちゃってるよ。」


今更ながら自分の仕出かした、おぞましい行為に身震いしちゃった?


無理もないね。果江の指示とは言え、相手、下等生物だもの。底辺這いずってるような相手にあんなことするなんて、いろんなものが入り交じって、そりゃ不細工にもなるわ。


維知衣以外で“育児袋”の“お世話”をしていたのは、下等生物だ。

あれは卵を立派に育てる為の餌。


奴等は自分が何をしてるかなど理解せず、ただ卵に栄養を与え続ける。


故郷では狩人ハンターが、狩った餌に洗脳系を寄生させ操ってたけど、ここだとどうなんだろ?


この星に適応した身体に進化してるから、何もかもが故郷と一緒かと言えばそうじゃない。


“栄養”は、あんなモノではなかったし、餌は自分の持つ全てを与え続け、そして死ぬのだ。



私はここに来て、まだ子を成したことがないから、システムがどう変化してるか分からない。

でも、分かることもある。餌の最期は死以外ない。



それはさておき。


操り人形な餌の下等生物と違い、維知衣がやったことは、私のスペアである果江が生成した無精卵への授精だ。


ああ、ホントおぞましい。下等生物にあんなマネして。


故郷では育児室にある大量の卵へ授精という、同胞を増やす崇高な役割を担っていたというのに、落ちぶれたものだ。



「の、能…無、……たんじゃ…」

ガタガタ震えながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ維知衣。


「こういうの何て言うんだったかな?…え~と、…拘りプレイ??」


この星の下等生物は愚図で愚鈍だし、哀れなくらいショボい身体能力で細々と暮らしてるから、私なりの拘りで過ごしてみたら、勝手に維知衣達が勘違いしただけのこと。


ゆっくりと歩み寄れば、維知衣はへたり込んだまま後ずさる。


その目に在るのは恐怖と絶望。


「私の卵に授精出来る権威ある存在なのに、なぁにその情けない態度。誇り高く常に凛としてなさいよ、みっともない。」

「そ、そうだな!俺は選ばれた者。誇りを忘れずに己の役割を全うすると誓う!」

急に希望らしき光が瞳に宿ったけど、どうしちゃったの?維知衣の行く末に希望なんかあるわけないのに。

維知衣って案外夢見がちだったんだね。



女王クイーン
「あれ、どうしたの?似衣。」

「遅かったのでお迎えにあがりました。」

「ご苦労、似衣。ちょっとした行き違いはあったが、女王クイーンと俺は、今日、新たな絆を築くことが出来き、有意義な時間を過ごせた。」


立ち上がり胸を張る維知衣を、似衣はチラリとも見ない。


「おい!スペアの分際で俺を無視とは良い度胸だな。」

「アレは如何なさいますか?」

「育児袋。」
「なッ!?」

「畏まりました。ーーおい。」


似衣が声を掛けると、ドアから同胞が現れ、維知衣を乱暴に連行していく。


「おい!放せ!俺を誰だと思ってる!女王クイーン、俺に無礼を働くなと言ってくれ!――放せと言っている!」


維知衣のお蔭で、下等生物の腹を使わずに済む。


壊れたりしないように、たっぷり入念に解して広げるように言っておかなきゃ。 



似衣ルビ。」
「はい。」

「君はもう維知衣いちいのスペアじゃないから、今日から波時芽はじめって名乗ると良い。」

「光栄です。」


似衣――改め波時芽が跪付いて私の手を取る。

見上げてくる瞳は宝石のように輝き、その奥には隠しきれない熱が揺らめいていた。







私と君でここから始めよう。

子を成して同胞を増やそう。

私達の王国を作ろう。






さぁ、侵略を始めよう
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