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第一章 家族
第四話 食卓
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迷彩服を着ていること、名前、日本語と英語、血液型、理科、社会、数学は分かる。
だが何も思い出せない。
どうやら健忘症になってしまったらしい。
迷彩服を見るところ、自衛隊かなにかの組織に属していたのだろうか。
そもそも、ここはどこだ。
日本でも無ければ、英語が通じないあたり、有名どころの欧米・北欧の国ではないようだ。
父親は緑のチュニックにベージュのズボン、革紐で縫われた革靴を履いていた。
母親は色褪せた緑のチュニックに装飾の施された革の腰帯を巻いて、同じ色のスカートを履いていた。
靴も同じく革靴であった。
娘は白いチュニックに革ベルトを巻き、ベージュのスカートを履いていた。
中世ヨーロッパにでもタイムスリップしたような出で立ちの三人である。
言葉は、ヨーロッパ系と片付けられれば楽なのだろうが、正直アジア系でもアフリカ系でもラテン系でも良いくらい、さっぱり見当がつかない。
思考が行き止まったところで、父娘がテーブルを持って部屋に入ってきた。
彼が寝ているベッドの横へテーブルを置いて出ていくと、椅子を三脚持って来て、テーブル横に並べ再び出ていった。
(忙しいなぁ)と思っていると、食器を持ったさっきの二人と、料理が入ったフライパンと、パンがぎっしり詰まったカゴを持った母親が入ってきた。
やがて、テーブルの上には、パンとフライパンを中心に四枚の皿が並んだ。
「ヨウヘー。フィーダー。ウー・ネーデェ・ステターターティウ」
ダヴィタがスプーンをさし出す。
「良いのか。かたじけねぇ」
洋平の食いっぷりは凄まじかった。
パンをかごから引っ掴み、そのままかぶりつく。
硬くて噛むたびに顎が軋む。
それを流し込むように注がれたスープを飲む。
父娘は目をまん丸くして、母親だけがニコニコと笑っていた。
三人の視線に気づいた洋平の手は止まり、三人を見返していた。
どうやらウリーヤの作ったスープに硬いパンを浸け、ふやかして食べるらしい。
(なるほど、顎が外れなくて済む)
このスープはデミグラスのようにトマトを煮込んで作ったのであろう物に、芋などの根菜を大量に入れた物であった。
少し心もとない薄味だが、素材の味が最大限に引き出された温かみを感じた。
それをパンに吸わせることによって腹持ちが良くなるのだ。
食事を再開していた洋平が三人を見るとクスクスと笑いながら団欒している。
「いつぶりだっけか。一緒に誰かと食べたのって…」
何か記憶に浮かびそうな気がしたが、それはさっそうと去っていった。
我に帰った洋平は、三人にペースをあわせて食べ始めた。
会話がさっぱりなので、三人の観察をしていた。
ウリーヤさん。
おそらく二十代後半から三十代前半だろう。
長身で見るからに美人だが、少し頬がコケている。
ダヴィタさん。
歳は三十代後半だろう。
整った顔立ちにそばかすがチャームポイントだ。
少し細身だが、筋肉質。
ウリャーナちゃん。
十代前半くらいだろうか。
栗色の髪を降ろしている。
よく笑い、あどけなさがあるが、少し大人びているところが見え隠れしている。
手には豆らしき角質ができていて、その幼さとは裏腹に、仕事を任されていることが窺える。
そして一番の食べ盛りである。
やがて完食したので解散した。
そして、凄まじい睡魔に襲われた洋平は、身を任せてそのまま眠りについた。
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(*´ω`*)
だが何も思い出せない。
どうやら健忘症になってしまったらしい。
迷彩服を見るところ、自衛隊かなにかの組織に属していたのだろうか。
そもそも、ここはどこだ。
日本でも無ければ、英語が通じないあたり、有名どころの欧米・北欧の国ではないようだ。
父親は緑のチュニックにベージュのズボン、革紐で縫われた革靴を履いていた。
母親は色褪せた緑のチュニックに装飾の施された革の腰帯を巻いて、同じ色のスカートを履いていた。
靴も同じく革靴であった。
娘は白いチュニックに革ベルトを巻き、ベージュのスカートを履いていた。
中世ヨーロッパにでもタイムスリップしたような出で立ちの三人である。
言葉は、ヨーロッパ系と片付けられれば楽なのだろうが、正直アジア系でもアフリカ系でもラテン系でも良いくらい、さっぱり見当がつかない。
思考が行き止まったところで、父娘がテーブルを持って部屋に入ってきた。
彼が寝ているベッドの横へテーブルを置いて出ていくと、椅子を三脚持って来て、テーブル横に並べ再び出ていった。
(忙しいなぁ)と思っていると、食器を持ったさっきの二人と、料理が入ったフライパンと、パンがぎっしり詰まったカゴを持った母親が入ってきた。
やがて、テーブルの上には、パンとフライパンを中心に四枚の皿が並んだ。
「ヨウヘー。フィーダー。ウー・ネーデェ・ステターターティウ」
ダヴィタがスプーンをさし出す。
「良いのか。かたじけねぇ」
洋平の食いっぷりは凄まじかった。
パンをかごから引っ掴み、そのままかぶりつく。
硬くて噛むたびに顎が軋む。
それを流し込むように注がれたスープを飲む。
父娘は目をまん丸くして、母親だけがニコニコと笑っていた。
三人の視線に気づいた洋平の手は止まり、三人を見返していた。
どうやらウリーヤの作ったスープに硬いパンを浸け、ふやかして食べるらしい。
(なるほど、顎が外れなくて済む)
このスープはデミグラスのようにトマトを煮込んで作ったのであろう物に、芋などの根菜を大量に入れた物であった。
少し心もとない薄味だが、素材の味が最大限に引き出された温かみを感じた。
それをパンに吸わせることによって腹持ちが良くなるのだ。
食事を再開していた洋平が三人を見るとクスクスと笑いながら団欒している。
「いつぶりだっけか。一緒に誰かと食べたのって…」
何か記憶に浮かびそうな気がしたが、それはさっそうと去っていった。
我に帰った洋平は、三人にペースをあわせて食べ始めた。
会話がさっぱりなので、三人の観察をしていた。
ウリーヤさん。
おそらく二十代後半から三十代前半だろう。
長身で見るからに美人だが、少し頬がコケている。
ダヴィタさん。
歳は三十代後半だろう。
整った顔立ちにそばかすがチャームポイントだ。
少し細身だが、筋肉質。
ウリャーナちゃん。
十代前半くらいだろうか。
栗色の髪を降ろしている。
よく笑い、あどけなさがあるが、少し大人びているところが見え隠れしている。
手には豆らしき角質ができていて、その幼さとは裏腹に、仕事を任されていることが窺える。
そして一番の食べ盛りである。
やがて完食したので解散した。
そして、凄まじい睡魔に襲われた洋平は、身を任せてそのまま眠りについた。
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