17 / 27
第一章 家族
第十七話 屋敷
しおりを挟む
(血の匂いがだんだん濃くなっている…)そうジョートルの鼻が危険を察知していた。
夕暮れが屋敷の影に隠れるように沈み、辺りが暗くなっていく。
屋敷は立派な石レンガ造りで、二階建ての平屋根の建物であった。
庭は広く、ヘッジアートが多数見受けられる。
女神やそれに追随する重要な信仰対象なのか、もしくは家主の知人女性なのか。
それらを囲う形で高い鉄柵があり、道路の正面には鉄柵門があった。
三人は門に近づく。
誰もそこにはいない。
「おかしい…門番がいないのう…領主様が門に門番をつけない訳が無い。領主様が不在でも起こるはずがない…」
「モシカシタラ、領主様ガ文句を付けられナイ状況カモ」
「あいつらが追い出しちゃったのかな…」
三人とも背中に冷や汗を垂らした。
「いずれにしろ、賊共が増長していることは確かじゃ…どうしたものやら…状況が余計こじれてきておる」
「簡単。門番イナイなら入るマデ」
クリンコフが固く握りしめられた。
「お前さんはバカか!? 領主様の敷地内に無断で侵入したことが知れたら、どうなることやら…そもそも、中に何人居るかも分からんのだぞ。もしかしたら賊どもが屯しているかもしれん!」
「カマワナイ。コノ子の親を助ケルためナラ命は支払エル」
洋平が門を開け、そのまま走って敷地内へと消えていく。
「無謀じゃ…」
洋平の後を追うようにウリャーナも門に向かうが、ジョートルが立ちふさがる。
「お前は行ってはならん」
「そこをどいて、おじさん。私行かなきゃ」
「中は賊どもでうようよかもしれん。それに…中からきな臭い匂いがするんじゃ。お前には危険すぎる」
しばらく無言が間を差した。そして諦めたようにウリャーナが言った。
「そうね。じゃぁ私が何を言っても無駄ってことね…」
肩を落としたウリャーナは門から離れ、鉄柵沿いを歩き出した。
「お父さんとお母さんがあの中に居るかもしれない… 行かなきゃいけないッ」
ウリャーナは駆け出し、助走の勢いで飛び、鉄柵に飛びつくと登り始めた。
「ウリャーナ! お前、何をしている。早く降りてきなさい!」
それに耳を貸すことなく登り終えると、鉄柵から飛び着地。
そのまま洋平の方へ駆け出した。
洋平は玄関の扉の前にいた。
扉に耳を当て中の様子を確認する。
(人の様子は…一人二人。門番役の可能性アリ。迂回や窓からの侵入が望ましいだろう)
音を立てずに屋敷の窓へ向かって走っていった。
その窓はカーテンで覆われていた。
中の様子は、辛うじての隙間から確認ができる。
開け放たれた扉から廊下の明かりが部屋に入っている。
扉横の廊下から人影が見えた。洋平は次の窓へ移動した。
次の窓にはカーテンが掛かっていなかった。
扉は閉められており、明かりも灯っていないので、様子が分かりづらいが、外の夕暮れ明かりが辛うじて暗い部屋を照らしていた。
床には何かが散乱していて、タンスや椅子のような家具が無造作に倒されている。
(他の侵入経路を確認する必要アリ)
次の窓に移動しようとすると、後ろから気配を感じた。
ナイフの柄に手を掛け振り向くと、そこにウリャーナが身をかがめていた。
「…音ヲ立てナイようニ。身ハ小さク」
そう言うと次の窓へ移動した。
次の窓からは声と音が漏れていた。
壁を這うようにそっと近づく。
音が不明瞭で内容が分からない。
顔を少しでも出せば丸見えだろう。
(感じる…このきな臭い感じ。これは紛れもないロクでもないの匂いだ)
その窓を離れ進むと排水管を見つけた。
クリンコフにセーフティーをかけ、排水管を登り、バルコニーへ手をかけ頭を出しすぎないように覗く。
(クリア…侵入経路確保)
バルコニーへ登り、スタコラと扉前へ駆け寄る。
腿からナイフを抜き、扉へ耳を当てる。
音は聞こえない。
音を立てないように扉を開け、そろりと屋敷内に侵入した。
————————————————————————————————————————————————————
✰感想やハートで作者がニマニマします。
気に入っていただけたらブックマークや星をポチっとお願いします!
いただいた感想にはニマニマしながら返信しますので、よろしくなのです!
(*´ω`*)
夕暮れが屋敷の影に隠れるように沈み、辺りが暗くなっていく。
屋敷は立派な石レンガ造りで、二階建ての平屋根の建物であった。
庭は広く、ヘッジアートが多数見受けられる。
女神やそれに追随する重要な信仰対象なのか、もしくは家主の知人女性なのか。
それらを囲う形で高い鉄柵があり、道路の正面には鉄柵門があった。
三人は門に近づく。
誰もそこにはいない。
「おかしい…門番がいないのう…領主様が門に門番をつけない訳が無い。領主様が不在でも起こるはずがない…」
「モシカシタラ、領主様ガ文句を付けられナイ状況カモ」
「あいつらが追い出しちゃったのかな…」
三人とも背中に冷や汗を垂らした。
「いずれにしろ、賊共が増長していることは確かじゃ…どうしたものやら…状況が余計こじれてきておる」
「簡単。門番イナイなら入るマデ」
クリンコフが固く握りしめられた。
「お前さんはバカか!? 領主様の敷地内に無断で侵入したことが知れたら、どうなることやら…そもそも、中に何人居るかも分からんのだぞ。もしかしたら賊どもが屯しているかもしれん!」
「カマワナイ。コノ子の親を助ケルためナラ命は支払エル」
洋平が門を開け、そのまま走って敷地内へと消えていく。
「無謀じゃ…」
洋平の後を追うようにウリャーナも門に向かうが、ジョートルが立ちふさがる。
「お前は行ってはならん」
「そこをどいて、おじさん。私行かなきゃ」
「中は賊どもでうようよかもしれん。それに…中からきな臭い匂いがするんじゃ。お前には危険すぎる」
しばらく無言が間を差した。そして諦めたようにウリャーナが言った。
「そうね。じゃぁ私が何を言っても無駄ってことね…」
肩を落としたウリャーナは門から離れ、鉄柵沿いを歩き出した。
「お父さんとお母さんがあの中に居るかもしれない… 行かなきゃいけないッ」
ウリャーナは駆け出し、助走の勢いで飛び、鉄柵に飛びつくと登り始めた。
「ウリャーナ! お前、何をしている。早く降りてきなさい!」
それに耳を貸すことなく登り終えると、鉄柵から飛び着地。
そのまま洋平の方へ駆け出した。
洋平は玄関の扉の前にいた。
扉に耳を当て中の様子を確認する。
(人の様子は…一人二人。門番役の可能性アリ。迂回や窓からの侵入が望ましいだろう)
音を立てずに屋敷の窓へ向かって走っていった。
その窓はカーテンで覆われていた。
中の様子は、辛うじての隙間から確認ができる。
開け放たれた扉から廊下の明かりが部屋に入っている。
扉横の廊下から人影が見えた。洋平は次の窓へ移動した。
次の窓にはカーテンが掛かっていなかった。
扉は閉められており、明かりも灯っていないので、様子が分かりづらいが、外の夕暮れ明かりが辛うじて暗い部屋を照らしていた。
床には何かが散乱していて、タンスや椅子のような家具が無造作に倒されている。
(他の侵入経路を確認する必要アリ)
次の窓に移動しようとすると、後ろから気配を感じた。
ナイフの柄に手を掛け振り向くと、そこにウリャーナが身をかがめていた。
「…音ヲ立てナイようニ。身ハ小さク」
そう言うと次の窓へ移動した。
次の窓からは声と音が漏れていた。
壁を這うようにそっと近づく。
音が不明瞭で内容が分からない。
顔を少しでも出せば丸見えだろう。
(感じる…このきな臭い感じ。これは紛れもないロクでもないの匂いだ)
その窓を離れ進むと排水管を見つけた。
クリンコフにセーフティーをかけ、排水管を登り、バルコニーへ手をかけ頭を出しすぎないように覗く。
(クリア…侵入経路確保)
バルコニーへ登り、スタコラと扉前へ駆け寄る。
腿からナイフを抜き、扉へ耳を当てる。
音は聞こえない。
音を立てないように扉を開け、そろりと屋敷内に侵入した。
————————————————————————————————————————————————————
✰感想やハートで作者がニマニマします。
気に入っていただけたらブックマークや星をポチっとお願いします!
いただいた感想にはニマニマしながら返信しますので、よろしくなのです!
(*´ω`*)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…
アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。
そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる