最強魔剣士の天職探し

寺鳥米味

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友の知らせ

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「──ッキシ!」
「団長、風邪ですか?」

 突如廊下に響いたクシャミの音に、隣を歩いていた藍色髪の少女が尋ねれば、団長と呼ばれた男は「あ゛ー」と間延びした声を出しながら鼻をすすった。
 

「噂かもなぁ……それか虫の知らせとか?」
「虫、ですか」
「虫ではないが知らせはあるぞ」


 突如背後からかけられた声に二人は足を止め振り返る。
 影のような男は、まるで先程からそこにいたかのように場の空気に溶け込んでいた。
 場内に容易く侵入し、自分達の背後をとなど只者ではない。
 
 フードを被った男の正体にようやく気付いた藍色髪の少女──ソニア・スノーウェルは、反射的に剣にかけていた手を離すと居住まいを正して頭を下げた。

「も、申し訳ありません魔殺者殿!」
「いや、気にしなくて良い」
「そうだソニア、気にしなくていいぞ。今のはコイツが悪い」
「あぁ、そうだ。ここの警備がザルなのが悪い、直ぐにでも警備責任者の変更を推奨する」
「お前なぁ……!」

 警備責任者……つまり騎士団長のパーシヴァル・グレイミットは旧友のあんまりな物言いに目元を痙攣させる。
 遠回しなようで直球ストレートに罵倒してきやがった。
 そりゃお前相手なら例え城の出入り口全てを溶接したってザル警備だろうよ、そう言いたくなったのをグッと飲み込み、ため息をついた。

「……で、何か用か? 昔の仲間が恋しくなったとか?」
「冗談が上手くなったな」

 パーシヴァルの軽口に取り合う事なく、ルーファスは適当な部屋の扉を開けて勝手に中へ入っていく。
 パーシヴァルとソニアは黙ってその後に続いて部屋に入った。
 中に入るとルーファスは窓の横にある壁に背を預け、ドアが閉まったのを確認してから話し始めた。

「……例の魔石強盗の件だ」

 魔石強盗、少し前までは遠方の街のみで起きていた小さな事件だったが、数ヶ月の間で王都付近の街まで被害が広がっていた。
 全てが同一の犯行とは断言できないものの、パーシヴァルは何か嫌な予感がした為、個人的に旧友のルーファスに情報収集を依頼していたのだ。
 悲しいことに騎士団内部に裏切り者がいないとも限らない、なのでパーシヴァルはソニア含む数名の確実に信用できる人間にしかルーファスの事を話していない。

「……何か分かったのか」

 先程とは打って変わって真剣な様子のパーシヴァルに、ルーファスは静かに首を縦に振る。

「既に共有してある盗賊の件、それから奴隷の首輪についてはまだ分かっていないが、それとは別の盗賊連中から話を引き出せた」

「噂程度のものだが」と前置きをして、ルーファスは続けた。

「その盗賊曰く、集められた魔石は『研究』に使用されているらしい」
「……研究、ですか」
 
 ソニアが呟く。魔石は魔力の籠った鉱物だ。
 それ自体を研究に使用するのは何らおかしなことではない。
 宮廷魔法師団でも研究が行われている素材でもある。
 しかし盗んでいるとなると話は別だ、何より既に加工済みの魔石を使った武器なども集めているのはどう考えてもおかしい。

「以上だ、悪いが次の報告までは暫く時間がかかりそうだ」
 
 そう断りをいれたルーファスに、パーシヴァルはニッと人好きのする笑顔を向ける。
 
「いや、十分だ。ありがとなルーファス」
 
 そう言って、部屋を後にしようとしたパーシヴァルとソニアは「あぁ、」と何か思い出したような呟きにドアノブにかけた手を止め、振り返ろうとした。

「そう言えばレトロに会ったぞ……パン屋でバイトをしていた」
「っはぁ!?」

 バッと勢いよく振り返るが、既にその部屋にルーファスの姿は無かった。
 窓も開いていない。
 まるで最初からその部屋にはパーシヴァルとソニアの二人しかいなかったかのように、気配一つ残さず……その割に大きな疑問だけ残して、魔殺者は何処かへと消え去ったのだった。
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