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助けられた人間
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「聖女様ーっ!」
二人が声のする方へ視線をやれば、何やら一箇所に子供達が集まっており、その中の一人の男の子が輪を抜け出してフローラの元へ駆け寄ってきた。
「どうかしたの?」
目線を合わせるように屈んで、駆け寄ってきた男の子の乱れた前髪を優しく整えながら尋ねれば、その子供は泣きそうな顔で後ろを指さす。
「エリーが転んじゃって」
輪の中心で、髪を二つに括った女の子が泣いている。
それを見たフローラは「大丈夫よ」と男の子の乱れた髪を手櫛で整えてやると、そのまま手を引いて女の子も元まで向かう。
レトロも黙ってその後をついて行った。
「うっ、うっ……フローラさま……」
「あらあら、転んじゃったのね」
フローラは泣いている子供をあやしながら、血の滲んでいる膝に手を翳した。
するとそこからフワリと淡黄色の光が現れて、子供の怪我がみるみる内に治っていき数秒もしないうちに傷口は綺麗に無くなっていた。
周りの子供達や修道女達はワッと歓声を上げる。
「わぁ! すごーい!」
「もう大丈夫?」
「うん! 痛くない! ありがとうフローラさま!」
「どういたしまして……さぁみんな、そろそろ中へ入りましょう」
レトロも相変わらずに腕前に感心しつつ、子供達の手を引いて教会の中へと入って行く背中を見守っていると、服の裾が引っ張られた。
「ん?」
「ねーちゃん知ってる?
わんぱくそうな男の子は頭の後ろで腕を組んで、何故か得意げにレトロを見上げていた。
「何を?」
「へへっ! 聖女様は国で一番、治癒魔法上手で千切れた腕をくっつけたこともあるんだって!」
治癒魔法の使い手は何もフローラだけではない。
先程の擦りむいた怪我や切り傷程度なら治せる魔法使いは探せば幾らかはいる。
しかし欠損した部位を縫合する程の腕前は間違いなく『聖女』と呼ばれるフローラだけだ。
死者をも蘇らせる、だなんて噂も過去にはあったくらいだ。
実際それを聞いたフローラは眉を釣り上げ「そんな事はできないし、眠りについた方を生者の都合で起こすなどあってはなりません」と珍しく怒っていた。
レトロは子供のした聖女の逸話に対して頷く。
「知ってるよ」
「えー! 何だよびっくりさせようと思ったのに!」
男の子は「ちぇー、つまんねー」と言って唇を尖らせると、そのままフローラ達の後を追いかける。
黙ってその後を追って中へ入れば、既に昼食の準備ができていた。
野菜がゴロゴロ入ったシチューだ。
食事の前のお祈りを済ませ、子供達が楽しそうに食事をする様子を眺めながらレトロは昔を思い出す。
フローラの治癒魔法に助けられた物は多い。あの戦場にいた人間は必ずと言っていいほど、彼女の世話になっている。
『フローラ、切断された腕を拾ってきた』
『分かりました、すぐに治療を』
『お願い』
『怪我をしたのはどなたですか?』
『私』
『貴女ですか!?』
ふと過去の事を思い出した。あの時はしこたま怒られたものだ。
……レトロもフローラに助けられた人間の一人である。
子供が自慢げに話した『ちぎれた腕』は自分の事だろうな、と思い出しながらレトロはミルク色のスープを啜った。
二人が声のする方へ視線をやれば、何やら一箇所に子供達が集まっており、その中の一人の男の子が輪を抜け出してフローラの元へ駆け寄ってきた。
「どうかしたの?」
目線を合わせるように屈んで、駆け寄ってきた男の子の乱れた前髪を優しく整えながら尋ねれば、その子供は泣きそうな顔で後ろを指さす。
「エリーが転んじゃって」
輪の中心で、髪を二つに括った女の子が泣いている。
それを見たフローラは「大丈夫よ」と男の子の乱れた髪を手櫛で整えてやると、そのまま手を引いて女の子も元まで向かう。
レトロも黙ってその後をついて行った。
「うっ、うっ……フローラさま……」
「あらあら、転んじゃったのね」
フローラは泣いている子供をあやしながら、血の滲んでいる膝に手を翳した。
するとそこからフワリと淡黄色の光が現れて、子供の怪我がみるみる内に治っていき数秒もしないうちに傷口は綺麗に無くなっていた。
周りの子供達や修道女達はワッと歓声を上げる。
「わぁ! すごーい!」
「もう大丈夫?」
「うん! 痛くない! ありがとうフローラさま!」
「どういたしまして……さぁみんな、そろそろ中へ入りましょう」
レトロも相変わらずに腕前に感心しつつ、子供達の手を引いて教会の中へと入って行く背中を見守っていると、服の裾が引っ張られた。
「ん?」
「ねーちゃん知ってる?
わんぱくそうな男の子は頭の後ろで腕を組んで、何故か得意げにレトロを見上げていた。
「何を?」
「へへっ! 聖女様は国で一番、治癒魔法上手で千切れた腕をくっつけたこともあるんだって!」
治癒魔法の使い手は何もフローラだけではない。
先程の擦りむいた怪我や切り傷程度なら治せる魔法使いは探せば幾らかはいる。
しかし欠損した部位を縫合する程の腕前は間違いなく『聖女』と呼ばれるフローラだけだ。
死者をも蘇らせる、だなんて噂も過去にはあったくらいだ。
実際それを聞いたフローラは眉を釣り上げ「そんな事はできないし、眠りについた方を生者の都合で起こすなどあってはなりません」と珍しく怒っていた。
レトロは子供のした聖女の逸話に対して頷く。
「知ってるよ」
「えー! 何だよびっくりさせようと思ったのに!」
男の子は「ちぇー、つまんねー」と言って唇を尖らせると、そのままフローラ達の後を追いかける。
黙ってその後を追って中へ入れば、既に昼食の準備ができていた。
野菜がゴロゴロ入ったシチューだ。
食事の前のお祈りを済ませ、子供達が楽しそうに食事をする様子を眺めながらレトロは昔を思い出す。
フローラの治癒魔法に助けられた物は多い。あの戦場にいた人間は必ずと言っていいほど、彼女の世話になっている。
『フローラ、切断された腕を拾ってきた』
『分かりました、すぐに治療を』
『お願い』
『怪我をしたのはどなたですか?』
『私』
『貴女ですか!?』
ふと過去の事を思い出した。あの時はしこたま怒られたものだ。
……レトロもフローラに助けられた人間の一人である。
子供が自慢げに話した『ちぎれた腕』は自分の事だろうな、と思い出しながらレトロはミルク色のスープを啜った。
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