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始まりの大陸編

ザークの生態①(イラスト有り)

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「ファァ...」

 眠たそうに目をこすりながら黒髪の少女は目を覚ます。
 それを側で見るメイドの悪魔が「おはようございます、ザーク様」と挨拶をする。
 メイドの悪魔の姿は、桜色の髪が特徴的で、身長は平均的なものであり、いたって普通の人型ひとがた悪魔だった。
 メイドのヘッドレスを頭につけて、ヒラヒラした服を着ている。
 挨拶をし終えたメイドは青色の瞳を見開いていた。
 ザークは疑問に思ったのか「ダレ?」という声が出る。

「こちらのお召し物を...どうぞ」

 ザークの言葉を無視するかのように服を着せられる。

 少女用の黒い服だった。
 ただ、首付近にある宝石は赤く光っているが。

「よく似合っていますよ...」

 メイドはザークの姿を見て似合うと言っているが、ザークには伝わっていないようだ。

「アカイキラキラ、クロイヒラヒラ~」

 ザークは無邪気な顔でスカートの裾の部分を上げたり下げたりして遊んでいる。
 そこだけを見ると、我々人間の子供とそれほど変わりはない。
 メイドの悪魔はふふっと笑う。

(ザーク様めっちゃ可愛い!)

 メイドの悪魔は内心、ザークの姿がドストライクなのは黙っている。
 ザークはメイドの方を見てこう言葉をかける。

「アナタノオナマエハ?」

 生まれたばかりのザークの言葉はあまりにも幼稚であり、稚拙だ。
 だが、それが愛らしさを表現しているように思える。
 メイドは首を横に振る。

「残念ながら、私に名前はありません、メイシス様が私に名前など必要ないとおっしゃっていました」

 それを聞いたザークは、人差し指で自分の唇に当てて上を向いて何か考えている。
 その姿がまた可愛らしく感じる。
 そしておもむろにザークが声を出す。

「ジャア、アナタノオナマエハアオ、ヒトミノイロガキレイダカラ...」

 満面の笑みを浮かべるザークからもらった名前にアオは嬉しそうな表情で応じる。

「私の名前...アオ...」

「イヤ?」

「いいえ、とても嬉しいです、ありがとうございます!ザーク様」

 ザークに膝まづいてこうべを垂れるアオ。
 ザークはただ呼び名がないのが不便なので、名前を決めただけだった。
 だが、それは名前のない悪魔にとっては生みの親よりも、忠誠を誓ったものから与えられる方が名誉あることなのだとザークが知ったのはこの後のことだった。
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