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【血染めのグレイン】②

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「なんだ? さっきからその矮小な攻撃は?」

 そう【血染めのグレイン】が呟くのも仕方がない。

 ミルティの腕力では奴にダメージをほとんど与えられないのだ。

 俺がデバフで防御力と攻撃力、そして素早さを下げた状態でようやく5分以下の戦闘を繰り広げている。

 素のステータスのまま戦えばきっと彼女は1分と持たないだろう。

 それに亡霊だからか毒も麻痺も睡眠も効かないという強敵なのだ。

 しかし、それほどの強敵と合間見えていると言うのに、ミルティの表情は明るい。

「つぇぇな...。あの伊藤って奴も強かったけどお前もそのくらいつぇぇ...! 沼にいたどの生物よりも強い奴がこんなにいるなんて驚ろいてしょうがない!」

 驚いている割にはすごく楽しそうだなあいつ。

 本当にスポーツでもしているかのように戦闘を楽しんでいるミルティの感性が俺には分からないが、それでも絶望されるよりかは遥かに良い。

「クハハっ! 追い詰められていると言うのにその気合だけは買ってやろう。だがそれでは私は倒せんぞ!」

「そうかな? 和希の戦略は必ず通じる。あいつは私よりずっと頭がいいんだよ!」

 なんかミルティに買い被られている気がするがまあ良いか。

「ミルティ」

「次の指示はなんだ?」

「絶対に勝て」

「...了解!」

 俺は今ミルティとの確かな信頼を感じている。

 今ならアレが達成できそうだ。

 俺は自分のメニュー画面からEXスキル欄で光輝く項目をタップするのだった。
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