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そのじゅうはち
しおりを挟む入学試験がうまくいった俺は、機嫌よく亮のカフェに寄ったが、早くも後悔する。
本気だしたな、亮・・・
次に来たときは抹茶の新作の人体実験するっていってたしな。
まさか、本当に実験台の様を呈しているとは。
見た目は同じ抹茶ミルクレープなのだが、粉の量や、砂糖の量や焼き時間など色々を少しずつ変えてるらしい。
砂糖だけならまだいいが、どこまでなら調味料を許せるかという実験もロシアンルーレット並みになっていた。
いやいや、無理。
それがテーブルの端から端へと、ところに狭しに順番に置かれている。
でたよ。
こいつがこだわると、ろくなことにならないと思っていたが・・・
草
取り敢えずさっさと終わらせてやる。
いや、先にやみを出して、もふらせようか。
だが、やみを呼んでも出てこない。
どこ行きやがったと心の中で愚痴りながら・・・仕方がない、実験台になってやった。
俺たちは大食い選手じゃないんだぞ。
結論
ケーキは普通のが一番いい。
もうしばらくは、デザートいらんわ。
ベルは涼しい顔してるがお腹一杯で動けない模様。
味の細かいレポート提出も義務づけられ、やっとお役ごめんになった。
俺がレポートに夢中になってる間、ベルとやみについて話してる。
「もう、すっごいかわいいの」
「へえ、兄貴にもペットいたんだ」
「精霊だ」
一応訂正しなければ。
「うん、やみちゃんっていう猫だよ。」
おいっ、つい
「お母さん、精霊だってば」
久しぶりにうっかり、お母さんって言っちゃったよ。
でも、亮の食いつきはすこぶる良かった。
「ええっ猫なんだ。いいな、見たい、見たい」
かかったな、あとはやみが素直に出てくれればいいだけだが。
「まあ、魔力強いんだから亮はちゃんと見えるはず」
「やみ」
呼ぶとすぐに出てきた。
さっきはどこ行ってたんだよと小声で言ったら無視しやがった。
ローストビーフ要らなかったな・・・
亮はやみに夢中だった。
おい、やみめ、おかしいほど亮にゴロゴロしている。
おまえ、俺にはゴロゴロは精霊がすることじゃないって怒ってたじゃないか。
ベルも不思議そうに
「もしかして魅了のせい?」
と聞いてきた。
それはないな。
「精霊には魅了は効かないはずだけど」
やみは、ああ見えて高位の精霊だ。
それにしてもやみめ、懐きすぎだろ。ローストビーフは俺が全部食ってやる。
ベルは俺が買ってあげた魔道具をつけたり外したりしている。
ピンクのトルマリンの魔石がキラキラ光ってる。
でも・・・
老眼鏡じゃないんだから・・・
使えているようでひとまずは安心した。
亮はすっかりメロメロだ。
可愛い女の子と猫のじゃれあいはとても絵になるが。
なぜか急に寒気がしたので、何気なく極楽鳥の方に目を向けるとあいつでも嫉妬するんだな、と思った。
亮の肩、壊れるぞ。
亮も相当鈍感だな。
ようやく亮がやみから離れた。
するとやみがガタガタ震えながら極楽鳥に土下座している。
なんじゃそりゃ?
極楽鳥はそれを無視していた。
やみは土下座が終わるとすぐに俺の影に潜り込んだ。
帰ったら説明してもらうからな、とやみに念を押して俺達は帰路に着いたのだった。
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