俺が悪役令嬢だった件

知花虹花

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その44

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 やれやれ、とりあえずは、ひと安心だな、と思ってたら、ぽん、とやみが飛び出してきた。

 びっくりしたな、猫とはいえ飛び出してくるのは心臓に悪い。

「レオンは?」

 やみが珍しく焦っているな。

「どうした?」  

「ごめん、アルフォンスが、ベルを監禁した」

 なあーんだ。

「へえ、ついにか・・・」

 そのうちやると思ってたから想定内だ。

「オレが、うっかり獣人の話をしたら、それを聞いてたみたいで・・・」

「ああ、親父が嫉妬に狂ってか?相変わらず嫉妬深いな」

 でも、まあ、もったほうか。

「レオンによると、親父、ずっと耐えてたらしいからな。そもそも、親父は待てないと思っていたからいいんだ」

「なにのんきなこといってるんだよ、ベルの貞操危機だぞ」

 貞操の危機って・・・もう、違う世界では息子も二人いるんだぜ・・・と思い、

「いやあ、あいつら、一度は、夫婦だったんだから、自分達で何とかするだろ」

「でも、ベルはまだ記憶ないんだぞ。無理矢理やってアルとこじれたらどーするんだよ?」

「ああ、覚えてなくても、もう親父にまかせたから・・・」

「冷たいな」

 冷たいとは心外な・・・

「だってさ、考えてもみろよ、呪いでは記憶をなくすほど大切な相手だったわけだぞ」

 俺じゃなかったなんて、決して根には持ってないが・・・いや、やっぱり根に持ってる。

「むしろ攻略対象と、どーにかなっちゃった方がモブのお母さん、いや、ベルは大変だと思うわ。だとしたら親父の方が何倍もましさ。それに亮が薬を持ってきてくれたから、記憶ならすぐに取り戻せるぞ」

「えっ?亮の薬って?」

「記憶を取り戻す薬を極楽鳥と取りに行ってくれらしい」

「本当かよ、薬があるなら渡さないと・・・あっ、でもオレ、レオンの結界の中に入れないんだけど」

「大丈夫だ、レオンに薬を渡せばいいと思うぞ。」

 レオンの侍女が、いつの間にか待機しているので、俺は小瓶を預けた。

「これで大丈夫だ」

「ほんとかな?安全なのか?その薬・・・」

 やみもなかなか鋭くなったな。

「一応、亮も、俺も試したからな、やみも試すか?」

 結局、もらった薬、本当に大丈夫か、確信がいまいち取れなかったので、俺は自分で試すことにしたのだ。

 本当にマザコンだと思う。

 いくら、亮も試したからって言って、あいつの体力は尋常じゃないし、極楽鳥もいまいち信用してないからな、さすがに危険なものかもしれないものを、いきなりお母さんに使うのは躊躇した。

 でも、亮も飲んだって言ってたし、俺も一滴ぐらいなら大丈夫だよな・・・と思ったのだが、

「はあ、一滴でも、充分、思い出せるものなんだな・・・」

 黒歴史を・・・

 後から、亮に、水ですごく薄めて飲むんだよって教えられた。
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