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「もしかして、ヤマトタケル?」
ほっぺに指をぶっ刺されたままアタシが訊くと、男は頷いた。
身長はアタシより高いけど、高すぎるわけでもない。一つ結びにした黒髪、鋭い目つき、通った鼻筋。顔はいいほう。首も太い。ブラックレザーのシングルジャケットとデニムにエンジニアブーツ。パッと見はバイカーの青二才って感じ。
ってゆーか、今コイツ、アタシのこと弱いっつった?
ヤマトタケルの喉仏を狙った手刀が、彼の反対の手に止められた。ほっぺの指が離れて、アタシのハイキックを止めた。連続した蹴りも拳も、鞭みたいな動きで全部躱された。
さすが神話ネーム。まったく歯が立たない。ムカつく!
悔しいから攻撃を続けても躱されるか、受け流されるか。リッキーさんたちのいるカウンターまでヤマトタケルを追い詰めたつもりが、最後のハイキックで足首を捕まれ半回転させられて放り投げられ、胸の真ん中に手根の一発を喰らい、床に倒された。息が詰まって起き上がれない。
「さっき注文したテキーラ・サンライズを取りにきた」
ヤマトタケルはリッキーさんにそういうと、テキーラサンライズを二つ受け取った。
そして、やっと起き上がったアタシに一つを差し出す。
「町田八重子。これ好きなんだろ?」
アタシは頷いて、差し出されたタンブラーグラスを持った。
「お前は弱いが、安心しろ。今からおれたちはパートナーだ。よろしくな」
はァ? 自分が強いからって、こんなに他人見下す? っていうか、コイツ、最初から躱しながらカウンターに行ってた? むーかーつーくー!
「どうせアタシ弱いんで! 今日の飲み代、強ーいアンタが全部持ってよね!」
腹いせにいうと、ヤマトタケルは眉一つ動かさず、そっけない声でいう。
「もちろんだ。安心しろ。おれは弱者から奪ったりしない」
そしてアタシをチラッとみて、フッと鼻で笑った。
頭に血が上ってプチッとキレそうになった。何こいつマジでムカつく!! 初っ端から人のことバカにしすぎじゃない!? テキーラサンライズを飲み干して、カウンターにタンブラーグラスを置く。
「リッキーさん。おかわり」
「大丈夫?」
「まだ一杯しか飲んでない」
「いや、今の、神話組だろ?」
「アタシ一人いなくなったってここの売上に影響ないと思うけど」
「塵も積もれば山となるっていうでしょ? それにやっぱり可愛い女の子は減って欲しくないじゃない?」
「リッキーさん……♡」
コン、とアタシとリッキーさんの間に空のタンブラーグラスが置かれた。
「甘すぎて吐き気がする。テキーラ。ショットでライムもつけてくれ」
「はーい」
とリッキーさんは、いそいそとカウンターを離れていった。
「甘すぎて吐き気がする? アタシが好きなの知っててそんなこという? 意地悪くない? サイテー」
横目で睨んでも、ヤマトタケルは微動だにせずカウンターに肘をついている。どうせ、アタシになにを言われようとどうだっていいんだろうけど!
あんなヤツとこれからペアで仕事をしなきゃならないなんて本当にサイテーだ。
ほっぺに指をぶっ刺されたままアタシが訊くと、男は頷いた。
身長はアタシより高いけど、高すぎるわけでもない。一つ結びにした黒髪、鋭い目つき、通った鼻筋。顔はいいほう。首も太い。ブラックレザーのシングルジャケットとデニムにエンジニアブーツ。パッと見はバイカーの青二才って感じ。
ってゆーか、今コイツ、アタシのこと弱いっつった?
ヤマトタケルの喉仏を狙った手刀が、彼の反対の手に止められた。ほっぺの指が離れて、アタシのハイキックを止めた。連続した蹴りも拳も、鞭みたいな動きで全部躱された。
さすが神話ネーム。まったく歯が立たない。ムカつく!
悔しいから攻撃を続けても躱されるか、受け流されるか。リッキーさんたちのいるカウンターまでヤマトタケルを追い詰めたつもりが、最後のハイキックで足首を捕まれ半回転させられて放り投げられ、胸の真ん中に手根の一発を喰らい、床に倒された。息が詰まって起き上がれない。
「さっき注文したテキーラ・サンライズを取りにきた」
ヤマトタケルはリッキーさんにそういうと、テキーラサンライズを二つ受け取った。
そして、やっと起き上がったアタシに一つを差し出す。
「町田八重子。これ好きなんだろ?」
アタシは頷いて、差し出されたタンブラーグラスを持った。
「お前は弱いが、安心しろ。今からおれたちはパートナーだ。よろしくな」
はァ? 自分が強いからって、こんなに他人見下す? っていうか、コイツ、最初から躱しながらカウンターに行ってた? むーかーつーくー!
「どうせアタシ弱いんで! 今日の飲み代、強ーいアンタが全部持ってよね!」
腹いせにいうと、ヤマトタケルは眉一つ動かさず、そっけない声でいう。
「もちろんだ。安心しろ。おれは弱者から奪ったりしない」
そしてアタシをチラッとみて、フッと鼻で笑った。
頭に血が上ってプチッとキレそうになった。何こいつマジでムカつく!! 初っ端から人のことバカにしすぎじゃない!? テキーラサンライズを飲み干して、カウンターにタンブラーグラスを置く。
「リッキーさん。おかわり」
「大丈夫?」
「まだ一杯しか飲んでない」
「いや、今の、神話組だろ?」
「アタシ一人いなくなったってここの売上に影響ないと思うけど」
「塵も積もれば山となるっていうでしょ? それにやっぱり可愛い女の子は減って欲しくないじゃない?」
「リッキーさん……♡」
コン、とアタシとリッキーさんの間に空のタンブラーグラスが置かれた。
「甘すぎて吐き気がする。テキーラ。ショットでライムもつけてくれ」
「はーい」
とリッキーさんは、いそいそとカウンターを離れていった。
「甘すぎて吐き気がする? アタシが好きなの知っててそんなこという? 意地悪くない? サイテー」
横目で睨んでも、ヤマトタケルは微動だにせずカウンターに肘をついている。どうせ、アタシになにを言われようとどうだっていいんだろうけど!
あんなヤツとこれからペアで仕事をしなきゃならないなんて本当にサイテーだ。
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