殺し屋女子ですが、レベチの先輩にターゲットにされた挙句、一年間同棲するんですって。おかしくない!?

蜂屋蜜

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 仕方がない。仕事だ。
 アタシは書類を受け取り、二人と別れて、ヤマトタケルの方へ向かった。隣のスツールに腰掛け、カウンターに頬杖をつく。
「改めて、こんばんは。アタシは町田八重子。よろしくね。ヤマトタケル
「ああ。タケルでいい」
 差し出された手を取る。軽く握った指先は手練の手だった。
「今からアタシとタケルは恋人同士。初めての夜だけど、どうする?」
 一瞬、タケルの表情が固まった。言い方がお気に召さなかったようだ。冷たい気配が漂ってくる。
「明日は引越しだ。早く帰って寝た方がいい」
「別々に行動するの?」
「おれの部屋にはなにもない」
「じゃ、アタシの部屋にくる? ベッドもお風呂もあるし」
 ヤマトタケルはジッとこちらを見る。何を考えているのかわからない。表情からなにも読みとれない。
「……それは、性行為の誘いか?」
「はァ!? 何勘違いしてるの!? 入浴と睡眠は人間生活の基本でしょ!?」
「ずいぶん平和でのんびりした生活を送っているんだな。町田八重子」
 またしても鼻で笑われた。どうせアタシはアンタに比べれば全然修羅場くぐってないでしょうね! ぐうぅ~! 悔しいぃ。なんでアタシが“どうせ”とか卑屈にならなきゃいけないのよ~っ!
「お前の荷物はどうするんだ?」
「向こうで揃ってるんじゃないの?」
「もちろんだ」
「だったら、なにも持っていくものなんてない」
「そうか。じゃあ、出発するぞ」
「は?」
 ヤマトタケルは答えない。一瞥して席を立った。アタシは口をつぐんでヤマトタケルの後を追った。
「食い逃げ?」
「もう払った」
 赤い扉を出た瞬間、ヤマトタケルに後方へ突き飛ばされた。尻もちをつく前に体勢を持ち直して踏みとどまる。その間に奴は前方と左右から襲ってきた男たちを気絶させた。
 なるほど。店内は殺戮禁止だけど、この町は組織のものだから何が起きてもかまわない。この町の住人は。神話ネームを倒したらそれこそ次の神話になれる。
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