冴えない男子の育て方〜元カレを見返すためにクラスの三軍男子をスパダリに育成することにしました〜

遊馬友仁

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第4章〜イケてる彼女とサエない彼氏〜⑩

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 ステージの壇上から舞台袖に降りていくと、ダンスを披露したあとも、その場にとどまっていた映文研のメンバーだけなく、リコやナミが駆け寄ってきた。

「亜矢~、すっごく良いスピーチだったよ~!」

 感激屋のリコが、私に抱きついてくる。
 一方、こういうときでも、クールな態度を崩さないナミは、ニヤニヤと笑いながら、話しかけてきた。

「まさか、スクリーンで自分の恥ずかしい写真を晒すとはね~。ウチも予想がだったわ~。まさか、一足早く、罰ゲームを実行してるとか?」

「ナニ言ってるの? この場には来ていないけど、まだ寿太郎が『学院アワード』でトップになる可能性はあるんだよ? ナミこそ、罰ゲームの覚悟はできてるの?」

 そう反論すると、友人は、

「アヤ、変わったよね……自分のことより、他人のことを気にするなんて……」

と、さらに可笑しそうに、クスクスと笑う。
 その発言に、さらに異議を申し立てようとして、口をひらきかけたんだけど、リコが、私たちの腕をつかみながら、声をかけてきた。

「ねぇ! また、なにか始まるみたい……」

 彼女が指を指した方に視線を向けると、舞台後方の大型スクリーンでは、さっきまで私が投影していた画像に代わって、パソコンのウィンドウ画面が表示され、動画再生の準備が整っていた。
 その光景を見て、柚寿ちゃんから届いたメッセージを思い出す。

 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 うちの兄が亜矢ちゃんのことを
 まとめた動画を編集しています

 ステージで上映するそうなので
 見てくれると嬉しいです

 ◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 彼女のLANEメッセージには、そう書かれてあったハズだ。

「そうだ! 舞台に立つ代わりに、寿太郎が作った動画が上映されるんだ!」

 声をあげると、映文研のメンバーたちも反応を示し、二年生の浜脇はまわきくんが、

「えっ!? 部長は、あのドキュメンタリー以外にも動画を編集してたんですか?」

と、私にたずねてくる。

「さっき、柚寿ちゃんから、LANEでメッセージをもらったんだけど……映文研のみんなは知らまかったの?」

 彼らの意外な反応に対して、こちらから逆に質問を返すと、苦笑いの表情を浮かべながら、安井やすいくんが答えた。

「たぶん、ここにいない、しか知らないんでしょうね……」

 彼が指差しながら示したのは、ステージ反対側の音響ブースで実行委員会と語り合っている映文研の部長と副部長だった。

「部長、投票に間に合ったんですね!」

「良かった~!」

 一年生の広田ひろたくんと平木ひらきくんが、感激したように声をあげる。
 寿太郎の姿を目にした瞬間、私にも、彼ら一年生と同じく、いや、もしかすると、それ以上に、ホッと胸をなでおろすと同時に、感慨深い感情がこみ上げてくる。
 それでも、そんな想いを周りに悟られないようにしながら、私は柚寿ちゃんから届いたメッセージに応えるように、みんなに伝える。

「せっかくだから、ここじゃなくて、スクリーンが見やすいステージ前に移動しよう?」

 私の提案に、周りの全員がうなずき、ステージ前方に移動し始めたところで、スピーカーからのアナウンスが聞こえてきた。

「それでは、『学院アワード』の投票締め切り前、最後のエントリーです。三年生・深津寿太郎ふかつじゅたろうくん制作の動画、タイトルは、『あるクラスメートの素顔』! それでは、どうぞ」

 私たちが、人混みのすみっこで、どうにかスクリーンを確認できる場所を確保するのと、ほぼ同時に映像の再生が始まる。

(寿太郎は、どんな想いで、この動画を編集したんだろう?)

 私は、彼を自分のつまらない思惑に巻き込み、利用しようとしてしまった。
 舞台上で話した通り、それは、くつがえしようのない事実だ。

 だから、これから目にする映像が、自分にとって、どれだけツラい内容であろうと、私は、それを受け止めなければいけない―――。

 ステージに立つ前以上の覚悟を持って、目を凝らすようにスクリーンを見つめると、画面の中央に見慣れた顔が現れた。
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