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第2章〜宣伝的人間の研究〜⑦
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10月17日(金)
二宮高校の生徒会選挙での関候補の躍進、僕ら一宮高校の生徒会選挙の石塚候補の立候補表明という、大きなニュースが飛び込んできた翌日、放送室に集まった僕ら放送・新聞部の一堂は、お互いに取材、体験したことを報告しあい、情報共有を行っていた。
まずは、ケイコ先輩とミコちゃんに、トシオが録画していた石塚の立候補表明のようすを見てもらう。
「石塚候補の出馬表明の会見は、いま見てもらったとおりです」
「う~ん、私たちのことバチバチ嫌ってる感じですね~」
ミコちゃんの率直な感想に、僕は苦笑いせざるを得ない。
「このあと、彼には、政見放送の収録も必要ない、って言われちゃったから……まあ、嫌われるのも放送・新聞部の仕事のうちかも知れないけどね。そう言えば、ケイコ先輩、二宮高校の取材は、どんな感じでした?」
僕の問いかけに、先輩が答えようと口をひらく。
「色んなことがわかって、面白かったよ。たとえば――――――」
そう言って、ケイコ先輩が取材先の高校の選挙戦について語ろうとしたときだった。
「お~い、邪魔するよ!」
という声とともに、放送室のドアが勢いよく開き、一人の男子生徒が入室してきた。
あまりに突然のことで、唖然とする僕らの中でも、いち早く状況を把握した上級生が、訪問者に言葉をぶつける。
「なにしに来たの、降谷!? 私たち放送・新聞部は、大事な話し合いの最中なんだけど?」
とつぜん、あらわれた男子生徒は、降谷通――――――。
本来なら、ケイコ先輩たちと同じ3年に所属するはずだが、去年、下級生相手(これが僕らの学年だ)に金銭トラブルを起こして長期停学となり、そのため、留年して僕らと同じ2年に所属しているという、いわく付きの生徒なのだ。
そのときの一件で、彼を追い詰めた風紀委員会を目の敵にしているとのウワサがある。
「なんだ、富山? オレと違って優等生のアンタは、今ごろ推薦入試の準備で部活どころじゃないと思ってたんだが……3年はみんな引退する時期に、まだ、こんな弱小クラブに居座ってるのか?」
「余計なお世話。いま言ったとおり、忙しいから用事が無いなら帰って!」
「用が無いなら、好き好んで、こんな場所に来ねぇよ! オレがなにをしに来たか、把握してないようじゃ、放送・新聞部の情報網も大した事ねぇな。アンタら、いよいよ、オワコンじゃねぇのか?」
わざわざ放送室に乗り込んできて、失礼な発言をしまくる一宮高校の問題児・降谷通は、最後に言葉を放ったあと、わざとらしく見せびらかすように、一枚の紙切れをヒラヒラとかざす。
その紙片が、トンッと放送室のテーブルに置かれたのを確認すると、そこには、
・生徒会選挙立候補者 降谷通
と名前が記載され、選挙管理委員会の受領印が押印されていた。
「アンタが、生徒会選挙に立候補? 冗談でしょ?」
ケイコ先輩が、すかさず反応すると、本来であれば、僕やトシオより一学年上級生となっているはずの彼は、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら返答する。
「冗談でこんなこと言うかよ? 放送・新聞部は、泡沫の立候補者を差別するのか? オレも、政見放送とやらを収録しに来たんだ。早く撮影の準備をしてくれよ」
「えぇ、今からですか?」
僕が、声を上げると、降谷は続けて、余裕の表情で、こちらの行動を見透かしたようなことを言う。
「まあ、文化系クラブの放送・新聞部のアンタらは、本命候補の女子の第一声を取材したいところなんだろうけどな……悪いが、こっちも時間が無いんだ。すぐに収録させてくれ」
僕らの返事を待つことなく、一人で勝手に話しを進めていく降谷の言動に対して、表情を変えることなく、トシオが僕に語りかけてきた。
「ノゾミ、政見放送の撮影は、オレたちでしておくから、おまえは、光石さんの取材に行って来い」
親友の言葉はありがたいけれど、「放送・新聞部は、泡沫の立候補者を差別するのか?」という相手の言葉が気になったので、僕は、放送室に残ることにした。
「いや、僕も収録を見届けるよ。彼が、どうして生徒会選挙に立候補するのか気になるからね」
小声でトシオに返答してから、僕は他の部員と一緒に政見放送の収録の用意を始め、手際よく準備を整えたトシオが、放送ブースの降谷通に声をかける。
「収録準備オッケーで~す。いつでも、始められますよ~」
カメラ係の声に反応した降谷は、スピーチ用の原稿なども持たず、ニヤリと口角を崩して返答する。
「こっちも、問題ねぇよ。収録開始の合図は、そっちでどうぞ」
年上とは言え、横柄な物言いの同級生の言葉に無言でうなずいたトシオが、撮影開始の合図を送る。
「本番5秒前、4・3・2……」
トシオのキューの合図と同時に、降谷が語りだす。
その発言の内容は、僕らが予想すらしていないモノだった。
「風紀委員会をぶっつぶ~す! この度、一宮高校の生徒会選挙に立候補した降谷通です。ボクが、今回の生徒会選挙に立候補したのは、自分自身の当選のためではありません! 先日、クラブ連盟によって、男子バスケットボール部の部長をクビにされてしまった、石塚雲照くんの名誉を守るためです!」
彼の第一声に、僕ら放送・新聞部のメンバー全員が目を丸くする。
それでも、候補者の主張は余すことなく収録して、YourTubeの公式チャンネルにアップロードするのが、僕たち放送・新聞部に課せられた役割になっている。
「彼は、バスケットボール部とクラブ連盟ひいては、生徒会のキトクケンエキを打ち破るために立ち上がろうとしています。しかしながら、そんな彼をこころよく思わない体制側によって、無理やり、男子バスケ部の部長の座を追われることになってしまったのです! 彼を追い落とそうとする体制の打破を! クラブ棟の建て替え問題など、自分たちだけに都合の良い政策を進めようとするキトクケンエキに鉄槌を! 以上、降谷通でした」
60秒にも満たない政見放送の内容は、全校生徒を相手に、強烈なインパクトを残すのには、十分な内容だった。
二宮高校の生徒会選挙での関候補の躍進、僕ら一宮高校の生徒会選挙の石塚候補の立候補表明という、大きなニュースが飛び込んできた翌日、放送室に集まった僕ら放送・新聞部の一堂は、お互いに取材、体験したことを報告しあい、情報共有を行っていた。
まずは、ケイコ先輩とミコちゃんに、トシオが録画していた石塚の立候補表明のようすを見てもらう。
「石塚候補の出馬表明の会見は、いま見てもらったとおりです」
「う~ん、私たちのことバチバチ嫌ってる感じですね~」
ミコちゃんの率直な感想に、僕は苦笑いせざるを得ない。
「このあと、彼には、政見放送の収録も必要ない、って言われちゃったから……まあ、嫌われるのも放送・新聞部の仕事のうちかも知れないけどね。そう言えば、ケイコ先輩、二宮高校の取材は、どんな感じでした?」
僕の問いかけに、先輩が答えようと口をひらく。
「色んなことがわかって、面白かったよ。たとえば――――――」
そう言って、ケイコ先輩が取材先の高校の選挙戦について語ろうとしたときだった。
「お~い、邪魔するよ!」
という声とともに、放送室のドアが勢いよく開き、一人の男子生徒が入室してきた。
あまりに突然のことで、唖然とする僕らの中でも、いち早く状況を把握した上級生が、訪問者に言葉をぶつける。
「なにしに来たの、降谷!? 私たち放送・新聞部は、大事な話し合いの最中なんだけど?」
とつぜん、あらわれた男子生徒は、降谷通――――――。
本来なら、ケイコ先輩たちと同じ3年に所属するはずだが、去年、下級生相手(これが僕らの学年だ)に金銭トラブルを起こして長期停学となり、そのため、留年して僕らと同じ2年に所属しているという、いわく付きの生徒なのだ。
そのときの一件で、彼を追い詰めた風紀委員会を目の敵にしているとのウワサがある。
「なんだ、富山? オレと違って優等生のアンタは、今ごろ推薦入試の準備で部活どころじゃないと思ってたんだが……3年はみんな引退する時期に、まだ、こんな弱小クラブに居座ってるのか?」
「余計なお世話。いま言ったとおり、忙しいから用事が無いなら帰って!」
「用が無いなら、好き好んで、こんな場所に来ねぇよ! オレがなにをしに来たか、把握してないようじゃ、放送・新聞部の情報網も大した事ねぇな。アンタら、いよいよ、オワコンじゃねぇのか?」
わざわざ放送室に乗り込んできて、失礼な発言をしまくる一宮高校の問題児・降谷通は、最後に言葉を放ったあと、わざとらしく見せびらかすように、一枚の紙切れをヒラヒラとかざす。
その紙片が、トンッと放送室のテーブルに置かれたのを確認すると、そこには、
・生徒会選挙立候補者 降谷通
と名前が記載され、選挙管理委員会の受領印が押印されていた。
「アンタが、生徒会選挙に立候補? 冗談でしょ?」
ケイコ先輩が、すかさず反応すると、本来であれば、僕やトシオより一学年上級生となっているはずの彼は、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら返答する。
「冗談でこんなこと言うかよ? 放送・新聞部は、泡沫の立候補者を差別するのか? オレも、政見放送とやらを収録しに来たんだ。早く撮影の準備をしてくれよ」
「えぇ、今からですか?」
僕が、声を上げると、降谷は続けて、余裕の表情で、こちらの行動を見透かしたようなことを言う。
「まあ、文化系クラブの放送・新聞部のアンタらは、本命候補の女子の第一声を取材したいところなんだろうけどな……悪いが、こっちも時間が無いんだ。すぐに収録させてくれ」
僕らの返事を待つことなく、一人で勝手に話しを進めていく降谷の言動に対して、表情を変えることなく、トシオが僕に語りかけてきた。
「ノゾミ、政見放送の撮影は、オレたちでしておくから、おまえは、光石さんの取材に行って来い」
親友の言葉はありがたいけれど、「放送・新聞部は、泡沫の立候補者を差別するのか?」という相手の言葉が気になったので、僕は、放送室に残ることにした。
「いや、僕も収録を見届けるよ。彼が、どうして生徒会選挙に立候補するのか気になるからね」
小声でトシオに返答してから、僕は他の部員と一緒に政見放送の収録の用意を始め、手際よく準備を整えたトシオが、放送ブースの降谷通に声をかける。
「収録準備オッケーで~す。いつでも、始められますよ~」
カメラ係の声に反応した降谷は、スピーチ用の原稿なども持たず、ニヤリと口角を崩して返答する。
「こっちも、問題ねぇよ。収録開始の合図は、そっちでどうぞ」
年上とは言え、横柄な物言いの同級生の言葉に無言でうなずいたトシオが、撮影開始の合図を送る。
「本番5秒前、4・3・2……」
トシオのキューの合図と同時に、降谷が語りだす。
その発言の内容は、僕らが予想すらしていないモノだった。
「風紀委員会をぶっつぶ~す! この度、一宮高校の生徒会選挙に立候補した降谷通です。ボクが、今回の生徒会選挙に立候補したのは、自分自身の当選のためではありません! 先日、クラブ連盟によって、男子バスケットボール部の部長をクビにされてしまった、石塚雲照くんの名誉を守るためです!」
彼の第一声に、僕ら放送・新聞部のメンバー全員が目を丸くする。
それでも、候補者の主張は余すことなく収録して、YourTubeの公式チャンネルにアップロードするのが、僕たち放送・新聞部に課せられた役割になっている。
「彼は、バスケットボール部とクラブ連盟ひいては、生徒会のキトクケンエキを打ち破るために立ち上がろうとしています。しかしながら、そんな彼をこころよく思わない体制側によって、無理やり、男子バスケ部の部長の座を追われることになってしまったのです! 彼を追い落とそうとする体制の打破を! クラブ棟の建て替え問題など、自分たちだけに都合の良い政策を進めようとするキトクケンエキに鉄槌を! 以上、降谷通でした」
60秒にも満たない政見放送の内容は、全校生徒を相手に、強烈なインパクトを残すのには、十分な内容だった。
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