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第11章~いつかのメリークリスマス~⑧
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吉野家の父・博明と書斎での会話を終えた秀明は、キッチンでディナーの準備をしていた亜莉寿と真莉に別れの挨拶を告げたあと、再びビデオ・アーカイブスの店舗へと向かった。
吉野家には、ビデオ・アーカイブスの店舗から徒歩で移動したため、秀明は自宅から乗ってきた自転車を、店先に置かせてもらっていた。
吉野家のマンションから、自転車を置かせてもらっているビデオ店に向かう道すがら、秀明の胸には、様々な想いが浮かぶ。
時刻は、午後六時半を過ぎ、空はすっかり暗くなっている。
仁川駅へと続く川沿いの緩やかな下り坂は、視界が開けていて、近隣の住宅街とともに、遠く市街地の街の灯りまで見渡せた。
(そう言えば、今日はクリスマス・イブだったんだな……)
夕方からの一件で、自宅での夜の食事のことなど、すっかり頭から離れてしまっていたが、亜莉寿の父との会話で、そのことを再認識させられた。
秀明が自宅に帰り着く頃には、両親が宅配ピザとフライドチキンを前にしながら、自分の帰りを待っているだろう。
あらためて、街の灯を眺めると、不意にオルゴールの音色で始まるイントロが印象的なクリスマス・ソングの歌詞が頭に浮かんだ。
♪ゆっくりと十二月のあかりが灯り始め
♪慌ただしく踊る街を誰もが好きになる
(我ながら、ベタベタな発想やなぁ……)
日頃は、ヒットチャートや邦楽のメジャーなアーティストにはあまり関心を示さない自分にしては、意外なことだと自嘲する。
そんなことを考えながら、レンタルショップに戻り、自転車を置かせてもらった礼をカウンターで店番をしていた店長に述べて、秀明は、家路を急いだ。
自分の様な、大して取り柄のない人間でも、吉野家の人たち、中でも亜莉寿に喜んでもらえることが出来たのなら、それでヨシとしようじゃないか───。
油断すると、押し寄せる《もう一つの感情》を圧し殺して、秀明は、そう考えることにする。
亜莉寿の父・博明には、感謝の言葉を伝えられたが、自分は、正しいことをできたのだろうか───?
私鉄の線路沿いを離れ、河川敷のサイクリングロードに出ると、街灯も少なく、ほの暗い道に、自分のこぐ自転車の灯すヘッドライトだけが照らされ、わびしさが増す。
彼の頭に、また先ほどのクリスマス・ソングの歌詞が浮かぶ。
この歌の2コーラス目のサビの歌詞は、何だったか───?
♪君がいなくなることを初めてこわいと思った
♪人を愛するということに
♪気がついたいつかのメリークリスマス
その歌詞を思い出し、涙が頬を伝っていることに気付いた。
吉野家には、ビデオ・アーカイブスの店舗から徒歩で移動したため、秀明は自宅から乗ってきた自転車を、店先に置かせてもらっていた。
吉野家のマンションから、自転車を置かせてもらっているビデオ店に向かう道すがら、秀明の胸には、様々な想いが浮かぶ。
時刻は、午後六時半を過ぎ、空はすっかり暗くなっている。
仁川駅へと続く川沿いの緩やかな下り坂は、視界が開けていて、近隣の住宅街とともに、遠く市街地の街の灯りまで見渡せた。
(そう言えば、今日はクリスマス・イブだったんだな……)
夕方からの一件で、自宅での夜の食事のことなど、すっかり頭から離れてしまっていたが、亜莉寿の父との会話で、そのことを再認識させられた。
秀明が自宅に帰り着く頃には、両親が宅配ピザとフライドチキンを前にしながら、自分の帰りを待っているだろう。
あらためて、街の灯を眺めると、不意にオルゴールの音色で始まるイントロが印象的なクリスマス・ソングの歌詞が頭に浮かんだ。
♪ゆっくりと十二月のあかりが灯り始め
♪慌ただしく踊る街を誰もが好きになる
(我ながら、ベタベタな発想やなぁ……)
日頃は、ヒットチャートや邦楽のメジャーなアーティストにはあまり関心を示さない自分にしては、意外なことだと自嘲する。
そんなことを考えながら、レンタルショップに戻り、自転車を置かせてもらった礼をカウンターで店番をしていた店長に述べて、秀明は、家路を急いだ。
自分の様な、大して取り柄のない人間でも、吉野家の人たち、中でも亜莉寿に喜んでもらえることが出来たのなら、それでヨシとしようじゃないか───。
油断すると、押し寄せる《もう一つの感情》を圧し殺して、秀明は、そう考えることにする。
亜莉寿の父・博明には、感謝の言葉を伝えられたが、自分は、正しいことをできたのだろうか───?
私鉄の線路沿いを離れ、河川敷のサイクリングロードに出ると、街灯も少なく、ほの暗い道に、自分のこぐ自転車の灯すヘッドライトだけが照らされ、わびしさが増す。
彼の頭に、また先ほどのクリスマス・ソングの歌詞が浮かぶ。
この歌の2コーラス目のサビの歌詞は、何だったか───?
♪君がいなくなることを初めてこわいと思った
♪人を愛するということに
♪気がついたいつかのメリークリスマス
その歌詞を思い出し、涙が頬を伝っていることに気付いた。
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