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遊馬友仁

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第13章~今夜はトークハード~⑨

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♧「素晴らしいメッセージをありがとう!アリス店長お疲れ様でした。一週間ぶりの登場です。ブンでございます」
♢「坂野クン、ありがとう!こんなに大きな花束まで」
♤「え~、たったいま、放送部の皆さんから贈られた花束を持って、ブンちゃんが放送用ブースに入って来てくれました。現場からは以上です!」
♧「現地リポーターの真似とかは、いらんねん!いや、それにしても、今日の放送は二人の語りが熱すぎて、入るタイミングがなかったわ(笑)いま、日本中で、映像作品に対して、こんなに熱く語ってるのって、あとは、インターネットの『エヴァンゲリオン』フォーラムくらいちゃう?最終回の直前で、あんな新キャラとか出して来て、どないすんのホンマ?」
♤「また、『エヴァ』ネタか!?まあ、確かに、ネット上の『エヴァ』フィーバーは、大変なことになってそうやけど───。アリス店長にも、録画してたビデオを持って行ったけど、どうでした?『エヴァンゲリオン』を観た感想は?」
♢「面白すぎて、貸してもらった第壱話から第弐拾参話まで、この前の週末に、一気に観ちゃった!日曜日に先週までの放送分を観終わってから、昨日の水曜日の放送が待ち遠しくて、仕方なかったもん!」
♤♧「「めっちゃ、ハマッてるやん(笑)!!」」
♢「ストーリーは、謎が謎を呼ぶ展開だし、登場人物たちは、どんどん精神的に追い詰められるし……。二人が熱心に話していた理由も、よ~く、わかった(笑)」
♤「まあ、ストーリーの中の登場人物だけじゃなくて、観てる視聴者の精神も削られて行ってる気がするけど……。毎週、あんなに精神的にキツい想いをするTVアニメとか初めてやわ」
♧「もう、人類補完計画の謎とか、どうでも良いから、とりあえず、二次創作の作品で、綾波レイに対する我々の満たされない想いを《補完》するしかないという(笑)」
♤「いや、そこは、アスカやろう?また、二ヶ月前の話しに戻るけど、同居してるアスカとシンジ君が喧嘩したりしながらも、イチャイチャするのを眺めてる中盤あたりの展開を延々と観ることが出来たら満足やん?」
♧「いやいや、そこは、無口な綾波の心を開きつつ、シンジ君が癒されていくのが、王道の展開やろう?」
♢「……………………二人とも、何を言っているの(微笑)?」
♤♧「「はい?」」
♢「ちゃんと、昨日放送された第弐拾肆話は観たのかな(微苦笑)?」
♤「観たよ!《最後のシ者》渚カヲル君が登場して───」
♧「いかにも、女性ファンをターゲットにしたかの様なキャラクターやったけどな~。あと、残り二話しかないのに、今さら、あんなキャラクター出して、ちゃんとストーリーの風呂敷を畳めるんかな?」
♤「(ヤバい!ブンちゃんが地雷を踏んだ!!)」
♢「はい(黒笑)!?二人は、カヲル君が、ただの女性受けを狙ったキャラクターだと思ってるの(暗黒微笑)?」
♤「いや、それは……。とりあえず、握りしめてる花束が崩れそうやから、テーブルに置こう(汗)?」
♢「昨日の放送を観れば、シンジ君に相応しい相手が誰かは、一目瞭然でしょう?第弐拾肆話は、これまで『自分は他人に必要とされていない』と思い込んでいるシンジ君が、初めて『自分を必要としてくれる』他人に出会ったことを自覚する、これまでのストーリーの中でも、一番重要なエピソードだよ?」
♤♧「「は、はい。そうですね」」
♢「カヲル君は、一次的接触=スキンシップが苦手なシンジ君とふれあいながら、『君は何を話したいんだい?僕に聞いてほしいことがあるんだろう?』とシンジ君の心に寄り添いつつ、心を開いていって、彼への想いまで口にする『好意に値するよ───。好きってことさ』。これは、シンジ君に向けられた初めての肯定的な言葉と言っても良いと思うの。レイちゃんやアスカやミサトさんが、シンジ君に対して、こんな言葉を口にしたことがある?」
♤♧「「…………ない、ですね」」
♢「また、カヲル君は、こんなことも言ってる『ATフィールドは誰もが持っている心の壁だ』。エヴァのストーリーの中でも、重要な《ATフィールド》の正体に言及しているのは、このシーンが初めてじゃない?その、シンジ君の心の壁=ATフィールドをやすやすと突破していくカヲル君の想い。トドメは、『僕は君に会うために生まれてきたのかも知れない』の一言。ずっと、自分自身の存在意義に疑問を持っていたシンジ君に、自分は愛される価値のある人間なんだ!と実感させることのできる、彼を全肯定ともいえるセリフなの。これだけを見ても、シンジ君が想い合うべきなのが誰かは明白じゃない?二人のアスカやレイちゃんに対する想いは否定しないよ?それぞれ魅力的だとは思うし、何より男の子の理想を体現した様なキャラクターだもんね。でも、カヲル君とシンジ君の間に割って入って来られる存在だとは、到底、思えないな」
♧「……でも、カヲル君もシンジ君も男同士やし───」
♢「ハッ!?そこから話せないといけないの(微苦笑)?」
♤「いやいや!ほら、カヲル君の正体は使途やし、そこに性別の問題は持ち込まなくても、良いかな、と(汗)」
♢「わかってくれればイイの!二人とも、少女マンガや恋愛映画を見るのが好きなんだし、ちゃんと第弐拾肆話を見直せば、私の言ってることが、わかると思うよ(微笑)」
♤♧「「……はい、そうですね(なんで、先週『エヴァ』を見始めた人間に、ほぼリアルタイムで第壱話から見続けてるオレらが説教されなアカンねん!?)」」
♤「(……というか、アニメのキャラについて、こんなに論理的かつ熱心に語れるなら、自分の将来のことくらい、ちゃんと両親に話しておいてくれ)」
♢「何か、他に言いたいことはありますか?」
♤♧「「いえ、何もありません…………」」
♢「そう。二人に理解してもらえた様で良かった(笑)」

BGM:ヴァンゲリス『Love Theme』

♤「こんな話しをしてる間に、もう、エンディングの時間です(汗)今日は、この曲が流れてからも、ちょっと長く時間を取ってくれるらしいけど───。アリス店長から、他に話しておきたいことはない?」
♢「そうね~。他にも、カヲル君の正体がわかった時に、『僕を裏切ったな!』と言った時のシンジ君の気持ちとか、シンジ君に自分の運命を委ねながら、死の間際で、『ありがとう。君に会えて嬉しかったよ』と言ったカヲル君の心情とか、話したいことは、いっぱいあるよ?」
♤♧「「いや、もうカヲ×シンの話しはイイから!!」」
♢「そう?まだまだ、話し足りないことがあるのに……」
♤「とにかく、渚カヲル君が、たった一話でシンジ君と女性ファンの心を鷲掴みにして、去って行ったということだけは、良く理解できたわ(苦笑)」
♧「三人で放送する最後が、こんな内容でイイの?」
♤「いや、そもそも、ブンちゃんが『エヴァ』ネタを振ったのが原因やん(笑)まあ、湿っぽくなるよりは、自分たちのしたい話しを存分にする方が、このメンバーらしくてイイんちゃう?」
♢「皆さんへのご挨拶は、さっきもさせてもらったし───。あ、向こうに行っても、この番組のことは、応援してるから、二人とも、がんばってね!」
♤♧「「ありがとう!!」」
♧「そうそう!四月からの新規メンバーも引き続き募集しているので、興味のある方は、ぜひご連絡下さい」
♤「来月までに、メンバーが決まらなかったら、二人で放送することになるのかね?」
♢「私は、それでも良いと思うけどな……」
♤「いや、さすがにそれは、ちょっと(苦笑)ともあれ、アリス店長、十ヶ月間お疲れ様でした。夢を叶えられる様、ボクらも応援してるから」
♧「がんばってね、吉野さん!」
♢「二人とも、ありがとう!」
♤「という訳で、今年度のお付き合いありがとうございました。このメンバーで、お送りするのは、これが最後です。お相手は、アリマヒデアキと」
♢「ヨシノアリスと」
♧「ブンでした!」
♤「それでは、また新学期に!!春休み中に、新メンバーが決まると、イイなぁ……(笑)」
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