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第2章〜白草四葉センセイの超恋愛学概論〜①
苦い想いの残る回想を語る間に、聞き手の二人は、ベーカリー・ショップで購入していたパンを食べ終えていた。ドラマチックなオレの独白を聞き終えた二人は、気まずそうな表情で、こちらを見つめている。
語られた内容が同情を誘い、掛ける言葉が無いのか、
「…………………………」
白草は、沈黙をもって応えた。
壮馬も、また、一言も発しないまま、スマホで動画サイトにアクセスし、検索を行っている。
やがて、哀愁ただようメロディーが流れてきた。
無言で、こちらを見つめ続ける二人に対し、いたたまれなくなったオレは声を上げる。
「いや、何か言えよ!」
すると、壮馬が、
「この曲、恋愛SLGの元祖と言われている作品のバッド・エンドで流れる曲らしいよ」
と、解説を加えた。
「いや、おまえの選曲したBGMの解説を求めてるんじゃねぇ!!」
少々イラ立ちながらツッコミを入れると、ここまで沈黙を守っていた同世代のカリスマにして、自称・恋愛アドバイザーの転入生は、
「キモ………………ちは、わからなくはないけど――――――なんて言うか……考え得る限り、最ッ悪の告白パターンね……」
オレの報告を、一言の元に切って捨てた。
転入してきたばかりの女子に、自身の切ない経験を一刀両断にされたオレは、「えっ……」と、しばし絶句したあと、憮然とした表情で聞き返す。
「ちょっと待て! いま、『キモっ』……て、言おうとしただろ!? それに、《最悪》って、そこまで言わなくてもイイじゃねぇか……」
最後は小声で反論するオレに、白草は、「ハァ……」と、ため息をつく。
その態度に、さらにカチンときたオレは、
「じゃあ、具体的に、ドコが悪かったんだよ!?」
と言い返すが、彼女は、小首をかしげて、ニッコリと微笑み、
「うん……! 全部!!」
またも一言で応じた。
「なっ…………!!」
無慈悲な返答に、再び言葉を失うオレをよそに、白草は、
「まあ、具体的に指摘していく、その前に……黄瀬クンは、黒田クンが紅野サンに告白することを事前に知っていた?」
と、そばで聞き役に徹している壮馬に話しを振る。
第三者として、オレたちの会話を観察しようと傍観を決め込んでいたのだろう、急に会話に巻き込まれるカタチになった友人は、「えっ!?」と、一瞬、戸惑ったあと、
「いや、竜司からは一言も相談がなかったし、全然知らなかった……」
と、やや決まりの悪そうな表情で、答えを返した。
「なるほど……じゃあ、彼が紅野アザミサンに懸想していたことは?」
「ケソウ……? あぁ、竜司が紅野さんに片想いしてたってこと? いや、それも、恥ずかしながら、気付かなかったな……なんとなく、『竜司は紅野さんと話している時、他の女子と話すよりも、仲が良くて楽しそうだな~』とは思ってたけどね……」
「やっぱり……」
「……? まあ、女子の中では一番親しそうにしてたから、『告った相手が紅野さんだ』って聞いた時に、驚きはなかったけど……その、『やっぱり』っていうのは、どういうこと?」
会話の中で気になったことがあったのか、オレより先に、壮馬が先に白草にたずねる。
壮馬の問いに、彼女は一瞬、「う~ん」と、考えたあと、
「じゃあ、せっかくだし、そのことから、説明していこっか?」
と、提案した。
白草の一言に、第三者のハズの壮馬は、
「チョット待って! せっかくだから、メモを取らせてくれない?」
そう言って、デスクの上に置かれたノートパソコンのクロームブックを持ち出し、サインインを行って、ドキュメント・アプリを起動し始めた。
十秒ほどで一連の作業を終えた壮馬は、起動したアプリに
『白草四葉の恋愛指南(仮)』
と、タイトルを付け、
「お待たせ! 白草さん、続きをお願いします」
再びペコリと頭を下げて、解説の継続をうながす。すると、白草も軽くうなずいて応じた。
「まず、第一に、黒田クンは、『自分の気持ちを、紅野サン自身にも、周囲にも気付かれないように注意深くしていたつもり』と言っていたけど、それ……完全に逆効果だから……」
「ハァ!? どういうことだ……!?」
オレは、自分の振る舞いを否定されたと感じ、すぐに反応してたずねる。
その言葉を憐れな男子の発言と受け取ったのか、彼女は「ヤレヤレ……」と言った表情を作りながら応えた。
「急に好意を告げて、驚かせる《奇襲攻撃》を仕掛けてどうするの? とりま……自分が相手に『好意を抱いている』ということを匂わせるコトだけはしておかないと……恋愛は、戦争じゃないんだよ!?」
「そうか……竜司の話しじゃ、紅野さんもビックリしてたみたいだもんね……」
壮馬が、同意するようにうなずくと、第三者の相槌に、白草はさらに説明を加える。
「そうそう! 『ぬいぐるみペニス・ショック』って聞いたことない? 『恋愛感情なしに仲の良かった男性が突然告白してきたので、まるでぬいぐるみから唐突にペニスが生えてきたような気持ち』ってことだけど……」
「あっ、それ、何年か前に、《トゥイッター》で、バズってたワードだよね?」
またもや壮馬が先に反応し、有名女優の血を引く白草四葉の整った容姿から、男性器を意味するワードが出たことに面食らったオレの脳内器官は、混乱をきたす。
「な、なんだソレは……!?」
「いや、ボクも最初にそのワードを目にした時は、『ずい分とヒドいことを言うな!』と思ったけど……竜司の回想と白草さんの解説を聞いて、なんとなく、ニュアンスが理解できつつある。告白された側からすると、『いや、そんなつもりじゃなかったんだけど……』的な感じ?」
と、壮馬が感心したように同意する。
その言葉で、なんとなくニュアンスを理解することはできたが、オレは、あきれながら感想を述べた。
「いや、それにしても、なんつ~品の無い言葉だよ……オトコのオレでも、ドン引きだわ」
そんなオレたち二人の所感を聞きながら、恋愛アドバイザーは、講釈を続けた。
「まあ、ちょっと、上品さに欠けるワードを選んだのは申し訳ないけれど……ニ◯◯例以上の実例を元にした、ある大学の心理学の研究によれば、《成功した告白の七◯パーセント近くは、告白された側が告白した側の好意に気付いていた》って、データもあるの。もちろん、告白される側が相手の恋愛感情について、敏感だったり、逆に鈍感だったりする場合があるから、一概には言えないけど……この例からも、相手に好意を抱いていることが伝わっている方が有利だと、わたしは考えてる」
「ふ~ん、面白そうな研究をしてるヒト達がいるんだね」
最初に感想を述べたのは、壮馬。
その言葉に反応した白草は、
「この研究例は、ネットにも論文がアップロードされていたから、あとで、黄瀬クンにアドレスを送るね」
と、応答する。
一方、実際の研究例を元にした白草の解説に納得しつつあるオレは「なるほど……」と、小さくつぶやいたあと、彼女にたずねた。
「でも、告白する前に、相手に好意を伝える、ってどうすればイイんだ?」
語られた内容が同情を誘い、掛ける言葉が無いのか、
「…………………………」
白草は、沈黙をもって応えた。
壮馬も、また、一言も発しないまま、スマホで動画サイトにアクセスし、検索を行っている。
やがて、哀愁ただようメロディーが流れてきた。
無言で、こちらを見つめ続ける二人に対し、いたたまれなくなったオレは声を上げる。
「いや、何か言えよ!」
すると、壮馬が、
「この曲、恋愛SLGの元祖と言われている作品のバッド・エンドで流れる曲らしいよ」
と、解説を加えた。
「いや、おまえの選曲したBGMの解説を求めてるんじゃねぇ!!」
少々イラ立ちながらツッコミを入れると、ここまで沈黙を守っていた同世代のカリスマにして、自称・恋愛アドバイザーの転入生は、
「キモ………………ちは、わからなくはないけど――――――なんて言うか……考え得る限り、最ッ悪の告白パターンね……」
オレの報告を、一言の元に切って捨てた。
転入してきたばかりの女子に、自身の切ない経験を一刀両断にされたオレは、「えっ……」と、しばし絶句したあと、憮然とした表情で聞き返す。
「ちょっと待て! いま、『キモっ』……て、言おうとしただろ!? それに、《最悪》って、そこまで言わなくてもイイじゃねぇか……」
最後は小声で反論するオレに、白草は、「ハァ……」と、ため息をつく。
その態度に、さらにカチンときたオレは、
「じゃあ、具体的に、ドコが悪かったんだよ!?」
と言い返すが、彼女は、小首をかしげて、ニッコリと微笑み、
「うん……! 全部!!」
またも一言で応じた。
「なっ…………!!」
無慈悲な返答に、再び言葉を失うオレをよそに、白草は、
「まあ、具体的に指摘していく、その前に……黄瀬クンは、黒田クンが紅野サンに告白することを事前に知っていた?」
と、そばで聞き役に徹している壮馬に話しを振る。
第三者として、オレたちの会話を観察しようと傍観を決め込んでいたのだろう、急に会話に巻き込まれるカタチになった友人は、「えっ!?」と、一瞬、戸惑ったあと、
「いや、竜司からは一言も相談がなかったし、全然知らなかった……」
と、やや決まりの悪そうな表情で、答えを返した。
「なるほど……じゃあ、彼が紅野アザミサンに懸想していたことは?」
「ケソウ……? あぁ、竜司が紅野さんに片想いしてたってこと? いや、それも、恥ずかしながら、気付かなかったな……なんとなく、『竜司は紅野さんと話している時、他の女子と話すよりも、仲が良くて楽しそうだな~』とは思ってたけどね……」
「やっぱり……」
「……? まあ、女子の中では一番親しそうにしてたから、『告った相手が紅野さんだ』って聞いた時に、驚きはなかったけど……その、『やっぱり』っていうのは、どういうこと?」
会話の中で気になったことがあったのか、オレより先に、壮馬が先に白草にたずねる。
壮馬の問いに、彼女は一瞬、「う~ん」と、考えたあと、
「じゃあ、せっかくだし、そのことから、説明していこっか?」
と、提案した。
白草の一言に、第三者のハズの壮馬は、
「チョット待って! せっかくだから、メモを取らせてくれない?」
そう言って、デスクの上に置かれたノートパソコンのクロームブックを持ち出し、サインインを行って、ドキュメント・アプリを起動し始めた。
十秒ほどで一連の作業を終えた壮馬は、起動したアプリに
『白草四葉の恋愛指南(仮)』
と、タイトルを付け、
「お待たせ! 白草さん、続きをお願いします」
再びペコリと頭を下げて、解説の継続をうながす。すると、白草も軽くうなずいて応じた。
「まず、第一に、黒田クンは、『自分の気持ちを、紅野サン自身にも、周囲にも気付かれないように注意深くしていたつもり』と言っていたけど、それ……完全に逆効果だから……」
「ハァ!? どういうことだ……!?」
オレは、自分の振る舞いを否定されたと感じ、すぐに反応してたずねる。
その言葉を憐れな男子の発言と受け取ったのか、彼女は「ヤレヤレ……」と言った表情を作りながら応えた。
「急に好意を告げて、驚かせる《奇襲攻撃》を仕掛けてどうするの? とりま……自分が相手に『好意を抱いている』ということを匂わせるコトだけはしておかないと……恋愛は、戦争じゃないんだよ!?」
「そうか……竜司の話しじゃ、紅野さんもビックリしてたみたいだもんね……」
壮馬が、同意するようにうなずくと、第三者の相槌に、白草はさらに説明を加える。
「そうそう! 『ぬいぐるみペニス・ショック』って聞いたことない? 『恋愛感情なしに仲の良かった男性が突然告白してきたので、まるでぬいぐるみから唐突にペニスが生えてきたような気持ち』ってことだけど……」
「あっ、それ、何年か前に、《トゥイッター》で、バズってたワードだよね?」
またもや壮馬が先に反応し、有名女優の血を引く白草四葉の整った容姿から、男性器を意味するワードが出たことに面食らったオレの脳内器官は、混乱をきたす。
「な、なんだソレは……!?」
「いや、ボクも最初にそのワードを目にした時は、『ずい分とヒドいことを言うな!』と思ったけど……竜司の回想と白草さんの解説を聞いて、なんとなく、ニュアンスが理解できつつある。告白された側からすると、『いや、そんなつもりじゃなかったんだけど……』的な感じ?」
と、壮馬が感心したように同意する。
その言葉で、なんとなくニュアンスを理解することはできたが、オレは、あきれながら感想を述べた。
「いや、それにしても、なんつ~品の無い言葉だよ……オトコのオレでも、ドン引きだわ」
そんなオレたち二人の所感を聞きながら、恋愛アドバイザーは、講釈を続けた。
「まあ、ちょっと、上品さに欠けるワードを選んだのは申し訳ないけれど……ニ◯◯例以上の実例を元にした、ある大学の心理学の研究によれば、《成功した告白の七◯パーセント近くは、告白された側が告白した側の好意に気付いていた》って、データもあるの。もちろん、告白される側が相手の恋愛感情について、敏感だったり、逆に鈍感だったりする場合があるから、一概には言えないけど……この例からも、相手に好意を抱いていることが伝わっている方が有利だと、わたしは考えてる」
「ふ~ん、面白そうな研究をしてるヒト達がいるんだね」
最初に感想を述べたのは、壮馬。
その言葉に反応した白草は、
「この研究例は、ネットにも論文がアップロードされていたから、あとで、黄瀬クンにアドレスを送るね」
と、応答する。
一方、実際の研究例を元にした白草の解説に納得しつつあるオレは「なるほど……」と、小さくつぶやいたあと、彼女にたずねた。
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