39 / 454
第5章〜白草四葉センセイの超恋愛学演習・応用〜⑧
しおりを挟む
「おや~、おやおやおや~。我が部の次期エースは、演奏以外のことでも注目されてるのかな~? まったく、スミに置けませんニャ~」
声の主は、部長である早見先輩以上に、部員の統率に能力を発揮していそうな寿副部長だ。
新しいオモチャを見つけたネコのような笑顔で、彼女は後輩の紅野の肩に手を回す。
「あ、あの……」
そして、明らかに、彼女が困惑しているようすを楽しみながら、華奢な左腕を後輩に絡ませ、寿副部長は、反対の手で人差し指で
「ウリウリ……」
と、ほおをつついた。
そんな二人を眺めながら、苦笑しつつ声を掛けるのは、早見部長。
「美奈子、もうそのへんで……」
注意を受けた寿先輩は、
「は~い、さおりんが、そう言うならね~」
と言って、アッサリと紅野を解放した。
「ゴメンね、ちゃんと撮影のお礼を言おうと思ったんだけど……」
副部長を筆頭に、いつも活発すぎる部員たちの言動に手を焼いているのだろうか、相変わらず苦笑いの表情を崩さないまま部長の早見先輩は、そう言ったあと、
「今日は、私たちと顧問のワガママに付き合ってくれて、ありがとう」
と、言葉を付け加えた。
櫻井先生を指す単語を語る時だけ、かなり声のトーンを落としていたことは、ご愛嬌だ。
「いえいえ、素晴らしい演奏を間近で聞かせてもらえて、オレたちも感謝です。ありがとうございました」
こちらが、そう応じると、
「黒田くんだっけ? あとは、私たちの演奏が《映え》るように、シッカリと編集を頼むよ! 特に、序盤のサックスのソロ・パートはね!!」
ニシシ……と笑いながら寿副部長は、そう言ったあと、ハタと気が付いた、というように、こんなことをたずねてきた。
「あれ? そう言えば、キミ、どっかで見た顔だと思ったら、《ミンスタ》のストーリーに、失恋動画を上げてなかった? 一週間くらい前に、二年の女子たちが盛り上がってたのを、ちょこっと見せてもらったんだけど……」
「あ~! 編集の時間が迫ってきてるので、オレたちは、ここで失礼します!!」
声を上げ、自分が担当していたカメラを手早く片付けると、急いで退散することにする。
もう一度、音楽教室全体に届くように、
「ありがとうございました! これで、失礼します!!」
と声を張り、一礼すると、室内に残った部員から
「ありがとうございました~」
と言う声が聞こえ、離れた場所にいた櫻井先生も一礼をしてくれた。
出口にあたる扉のところで、壮馬と合流し、退室の際に二人揃って、再度、礼をすると、そそくさという表現がピッタリ当てはまるように、音楽室をあとにする。
去り際に、チラリと部員たちの方に目を向けると、ニヤニヤとした笑みを浮かべる寿先輩、柔和な微笑みをたたえて見送ってくれる早見先輩、そして、少し戸惑いながらもコチラの視線に気づきニコリと笑顔を見せてくれた紅野が視界に入った。
自分も小さく手を振り返してから、音楽室の外に出ると、「フ~~」と、息をついた壮馬が、
「無事に終わって良かったね……それにしても、『吹奏楽部の三女神』と称えられている三人から笑顔で見送ってもらえるなんて、ボク達も、ずい分とエラくなったものだね」
と、口にした。
「紅野と早見先輩は、その名に相応しいかも知れないが、あの副部長も、女神サマなのか?」
ふと湧いた疑問を投げかけると、
「さぁ? 少なくとも部員からの信頼は篤いみたいじゃん? それに、ああいうタイプの先輩を好む男子もいるんじゃない? 知らんけど……」
相変わらず無責任な発言で応じる壮馬。
そんな相棒はさらに、
「まぁ、あの三人の中には、ボク達じゃなくて、竜司を歓迎してたヒトもいるみたいだけど……」
と、言葉を続けた。
自分たちが色恋沙汰とは無縁の学生生活を続けてきた、というのも大きな理由ではあるだろうが、長い付き合いながら、壮馬がこのテの話しに言及するのは珍しい。
コイツなりの精一杯の皮肉であることは理解できたが、
「いや、そんなこともないだろう……」
などと、否定の言葉で応じても、口元を緩めずにいられた自信はない。
そんな、こちらのようすにあきれたような表情で、
「まったく……こういう時は、ニヤけてしまうモノかも知れないけど、自分たちの活動は、手を抜かないようにね」
と、友人はため息まじりに語る。
(スマンスマン……)
心のなかで、相棒にそう謝りながら、ふと、まったく別の想いが脳裏をよぎった。
(さっき、思わず口にしてしまった、何度も練習をさせられた、アノ言葉の相手が、白草四葉だったら……)
(『えっ!? ナニナニ? 聞こえな~い! もう一回! もう一回、言ってみ!?』なんて、しつこく絡んできたんだろうな……)
などと想像し、思わず苦笑いがこぼれる。
「なんだよ、またニヤけて……気持ち悪いなぁ……」
そう言って顔をしかめる壮馬には、自身の表情の変化の理由を語れる訳もなく、
「いや、悪ぃ……」
と、一言だけ謝って、オレは編集を行う放送部の部室へと向かうことにした。
声の主は、部長である早見先輩以上に、部員の統率に能力を発揮していそうな寿副部長だ。
新しいオモチャを見つけたネコのような笑顔で、彼女は後輩の紅野の肩に手を回す。
「あ、あの……」
そして、明らかに、彼女が困惑しているようすを楽しみながら、華奢な左腕を後輩に絡ませ、寿副部長は、反対の手で人差し指で
「ウリウリ……」
と、ほおをつついた。
そんな二人を眺めながら、苦笑しつつ声を掛けるのは、早見部長。
「美奈子、もうそのへんで……」
注意を受けた寿先輩は、
「は~い、さおりんが、そう言うならね~」
と言って、アッサリと紅野を解放した。
「ゴメンね、ちゃんと撮影のお礼を言おうと思ったんだけど……」
副部長を筆頭に、いつも活発すぎる部員たちの言動に手を焼いているのだろうか、相変わらず苦笑いの表情を崩さないまま部長の早見先輩は、そう言ったあと、
「今日は、私たちと顧問のワガママに付き合ってくれて、ありがとう」
と、言葉を付け加えた。
櫻井先生を指す単語を語る時だけ、かなり声のトーンを落としていたことは、ご愛嬌だ。
「いえいえ、素晴らしい演奏を間近で聞かせてもらえて、オレたちも感謝です。ありがとうございました」
こちらが、そう応じると、
「黒田くんだっけ? あとは、私たちの演奏が《映え》るように、シッカリと編集を頼むよ! 特に、序盤のサックスのソロ・パートはね!!」
ニシシ……と笑いながら寿副部長は、そう言ったあと、ハタと気が付いた、というように、こんなことをたずねてきた。
「あれ? そう言えば、キミ、どっかで見た顔だと思ったら、《ミンスタ》のストーリーに、失恋動画を上げてなかった? 一週間くらい前に、二年の女子たちが盛り上がってたのを、ちょこっと見せてもらったんだけど……」
「あ~! 編集の時間が迫ってきてるので、オレたちは、ここで失礼します!!」
声を上げ、自分が担当していたカメラを手早く片付けると、急いで退散することにする。
もう一度、音楽教室全体に届くように、
「ありがとうございました! これで、失礼します!!」
と声を張り、一礼すると、室内に残った部員から
「ありがとうございました~」
と言う声が聞こえ、離れた場所にいた櫻井先生も一礼をしてくれた。
出口にあたる扉のところで、壮馬と合流し、退室の際に二人揃って、再度、礼をすると、そそくさという表現がピッタリ当てはまるように、音楽室をあとにする。
去り際に、チラリと部員たちの方に目を向けると、ニヤニヤとした笑みを浮かべる寿先輩、柔和な微笑みをたたえて見送ってくれる早見先輩、そして、少し戸惑いながらもコチラの視線に気づきニコリと笑顔を見せてくれた紅野が視界に入った。
自分も小さく手を振り返してから、音楽室の外に出ると、「フ~~」と、息をついた壮馬が、
「無事に終わって良かったね……それにしても、『吹奏楽部の三女神』と称えられている三人から笑顔で見送ってもらえるなんて、ボク達も、ずい分とエラくなったものだね」
と、口にした。
「紅野と早見先輩は、その名に相応しいかも知れないが、あの副部長も、女神サマなのか?」
ふと湧いた疑問を投げかけると、
「さぁ? 少なくとも部員からの信頼は篤いみたいじゃん? それに、ああいうタイプの先輩を好む男子もいるんじゃない? 知らんけど……」
相変わらず無責任な発言で応じる壮馬。
そんな相棒はさらに、
「まぁ、あの三人の中には、ボク達じゃなくて、竜司を歓迎してたヒトもいるみたいだけど……」
と、言葉を続けた。
自分たちが色恋沙汰とは無縁の学生生活を続けてきた、というのも大きな理由ではあるだろうが、長い付き合いながら、壮馬がこのテの話しに言及するのは珍しい。
コイツなりの精一杯の皮肉であることは理解できたが、
「いや、そんなこともないだろう……」
などと、否定の言葉で応じても、口元を緩めずにいられた自信はない。
そんな、こちらのようすにあきれたような表情で、
「まったく……こういう時は、ニヤけてしまうモノかも知れないけど、自分たちの活動は、手を抜かないようにね」
と、友人はため息まじりに語る。
(スマンスマン……)
心のなかで、相棒にそう謝りながら、ふと、まったく別の想いが脳裏をよぎった。
(さっき、思わず口にしてしまった、何度も練習をさせられた、アノ言葉の相手が、白草四葉だったら……)
(『えっ!? ナニナニ? 聞こえな~い! もう一回! もう一回、言ってみ!?』なんて、しつこく絡んできたんだろうな……)
などと想像し、思わず苦笑いがこぼれる。
「なんだよ、またニヤけて……気持ち悪いなぁ……」
そう言って顔をしかめる壮馬には、自身の表情の変化の理由を語れる訳もなく、
「いや、悪ぃ……」
と、一言だけ謝って、オレは編集を行う放送部の部室へと向かうことにした。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる