初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

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回想②〜白草四葉の場合その1〜漆

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「まぁ、まだ春だし、仕方ないか……」

 苦笑いしながら語るクロに、「そうだね……」と、わたしも苦笑で同意する。

「山登りしたあとだから、身体も熱くなってるし、今ならプールに入ってもいいんだけどな!」

 笑いながら言うクロに、「え~! さすがに、まだプールに入るのは早いよ~」と答えたあと、

「でも、ちょっとノドが乾いたし、冷たいモノを食べたい気分かな?」

と、笑顔で付け加えた。
 すると、クロは、ポン! と手を叩き、とても良いアイデアを思いついたとばかりに、こんな提案をしてきた。

「そうだな! それなら、アイスでも食べるか?この先にある祝川沿いなら、ベンチに座って食べられるぞ!」

「スゴい! クロ、『いいね!』ボタンを押してあげる!」

わたしが、即答で応じると、

「なんだそれ? シロ、《トゥイッター》始めたのか?」

と、クロは笑いながら返してきた。
 そうだ、この時まで、わたしはクロに対して《トゥイッター》に、金曜日の聖地巡礼の成果を投稿したことを伝えていなかったのだ。
 いい機会なので、彼に自分の《トゥイッター》のことを伝えてみることにした。

「うん! 昨日から始めたんだ……金曜日に行った場所の写真を投稿したんだよ!」

 そう答えると、クロは、感心したように目を大きくひらいて、

「スゲ~な、シロ! あとで、オレにも見せてくれるか?」

と、たずねてくる。
 予想していた以上に反応の良いクロの返事に、気分を良くしたわたしは、

「いいよ!」

大きな声で答えて、

「今日の撮影は、クロも協力してくれる?」

と、笑顔で問い返してみた。
 すると、彼は、

「いいぜ!」

と、即答したあと、ハッとした表情になって、頭をかきながら、

「あ~、オレがどこまで役に立つか、わからね~けどな……」

少しバツの悪そうな表情で、そう答えた。
 熱くなった身体を冷やすためにアイスクリームを食べることと、SNSにアップロードするための写真撮影を行うことを決めたわたしたちは、近隣のアイスクリーム・ショップを調べてみることにする。
 スマホで「祝川 アイスクリーム」のキーワードで検索すると、市民プールから祝川沿いに出るまでに、イイ感じのジェラート・ショップが出店していることがわかった。
 画像検索(まだ、この頃のわたしにはSNSで店舗検索するという発想がなかった)で、表示された色とりどりのジェラートやソフトクリームを眺めながら、

「スゴい! 美味しそう!」

と、声を上げるわたしに、クロも、「うんうん」と首をタテに振る。
 お店選びでもすぐに合意したわたしたちは、すぐにジェラート・ショップに向かうことにした。



 ジェラート・ショップで、ジェラートを買ったわたしたちは、貴重な購入品を落とさないよう、慎重に川沿いの遊歩道に移動する。
 この日は、わたしも、お財布を用意していたので、クロのお世話になることはなかった。
 クロは、カップ入りのマンゴージェラートを、わたしは、コーンに乗ったバニラとラズベリーのジェラートをそれぞれ購入した。
『さくら通り』と名付けられた祝川沿いの遊歩道は、その名の通り桜の回廊になっていて、三分咲き~五分咲きになった樹々が、春らしさを感じさせる。

「もう少しで、満開になりそうだね! 満開の桜の樹の下で、このジェラートの写真を撮ったら、注目されるかも……」

 わたしが、そう言うと、クロは、

「たしかに、そうかもだけど……」

と言ったあと、

「写真を撮るなら、早くしないと、アイスが溶けちまうぞ?」

と、心配そうに忠告してくれた。
 クロの言葉に、「あっ、そうだね……」と同意して、コーンを片手に持ちながら、スマホを取り出して撮影を行う。
 今なら、える角度や色合いを気にするところだけど、スマホを使い始めて一週間程度のこの頃のわたしには、まだ、それらのノウハウが蓄積されていなかった。

「その写真も《トゥイッター》に投稿するのか?」

 クロがたずねてくる。

「うん、そのつもりだけど……」

 なにか、問題でもあるの? という感じで言葉を返すと、

「そっか……いや、食べ物とか小物、あと、ファッション関係の内容は、《ミンスタグラム》に投稿した方が良い、って母ちゃんが言ってたからな……」

と、クロは答える。

「そうなの?」

わたしが、一言でたずね返すと、

「あぁ、たしか、そんなコトを言ってた気がするんだ……ウチの母ちゃん『これからの小売業は、SNSとの連携が必要だ~』って、色々と研究してるんだぜ」

 クロは、自分の母親のことを少し誇らしげに話す。

「そうなんだ! クロのお母さんて、スゴいんだね……!」

 わたしが、感心したように言うと、

「いや、そんなんじゃねぇよ……」

と、彼は少し照れながら答える。
 わたし自身の母親も、一般の人たちが羨むような職業についていると言えるが――――――。
 素直に、お母さんの仕事を誇れるクロを、わたしは少し羨ましく思った。
 そして、ジェラートをちびちびと食べ進めながら、クロからの提案について考えてみる。
 彼の言うように、《聖地巡礼》の投稿とスイーツの投稿は、別のサービスでアップロードし、使い分ける方が良いかも知れない。《ミンスタグラム》は、社会人から小学生まで、若い年代の女性を中心に利用され始めていることは、自分も知っていた。

(う~ん、《ミンスタ》かぁ~。アカウント名は、どうしよかな~?)

などと、考えていると、話題を変えたかったのか、クロは唐突に

「ところでさ……シロは、コーンのアイスが好きなのか?」

と、質問をしてきた。

「う~ん、食べやすさと後味で選ぶなら、カップで食べるほうが好きかな……?」

 そう答えると、彼は「えっ!?そうなのか?」と、驚いたようすで、

「じゃあ、なんでコーンにしたんだよ? ここまで持ち運ぶのだって、大変だっただろう!?」

と、質問を重ねる。
 それは、たしかに、クロの言う通りなのだけど――――――。
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