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回想②〜白草四葉の場合その1〜陸
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3月28日(月)
前日は、遅くまで《トゥイッター》のアカウント作成や投稿を行っていたので、目が覚めると、午前十時近くになっていた。
遅く目覚めたことを伯母に申し訳なく思いつつ、中途半端な時間に起きてしまったため、朝食と昼食を兼ねた食事をとったあとは、スマホを触りながら正午過ぎまで伯父夫婦宅で過ごしてから、午後一時の集合に間に合うように家を出た。
約束した集合時間より少し早く児童公園に着くと、すでにクロは、遊歩道のベンチに座って待っていた。
声を掛けようと自転車を押しながら近づくと、彼もこちらに気付いて、
「シロ!」
と、声をあげて大きく手を振った。
「クロ、早かったんだね……待たせちゃって、ゴメンね」
彼のそばに歩いて行きながら、そう言うと、
「家で待ちきれなくて、ちょっと早めに出てしまってさ……」
クロは、へへへ……という感じで笑いながら答えた。
(自分と同じように、クロも今日の待ち合わせを楽しみにしてたのかな?)
そんな想像をすると、なんだか嬉しい気持ちがこみ上げてきて、
「そうなんだ……」
と、彼の言葉に応じながら、自然と笑みがこぼれた。
そんな風に、クロと無事に待ち合わせができたことを喜んでいると、
「今日は、どうする? シロ、どこか行きたい場所はあるか?」
と、彼がたずねてきた。
クロの問いかけに「う~ん、そうだな~」と、考えていると、
「良かったら、北高の方に行ってみねぇ? 山道で、ちょっと大変かもだけど……」
彼は、そんな提案をしてきた。
「北高? 行ってみたい!!」
わたしは、即答したものの、すぐに「山道で、ちょっと大変かも」というクロの言葉が気になった。
アニメを観た人なら、みんな知っているとは思うけれど、主人公のキョンが通う高校は、『登山』と称されるくらいのキツい登り坂なのだ。
そのことを思い出して、サッと表情が曇り、
「でも、大丈夫かな……」
不安になるわたしに、クロは、少し気落ちしたような表情で、
「そっか……シロが心配ならやめるけど……」
と、答えた。
その寂しげな表情を見て、彼をガッカリさせたくない、という気持ちになり、
「ううん! やっぱり行ってみたい!」
と、返答する。
わたしの一言に、クロは、また嬉しそうに笑って答えた。
「そっか! 疲れたら、自転車を押しながら、ゆっくり行こうぜ!」
結論から言うと、自転車を伴っての北高への道のりは、小学四年生の修了式を終えたばかりの児童にとって『登山』という言葉でも生ぬるい苦行だった。
同じく四年生の遠足で高尾山に登ったときの方が、まだマシだったのではないかと感じたほどだ。
この巡礼を行った時期が、春先ではなく真夏だったら、間違いなく途中棄権をしていたことだろう。
実際に、この場所を紹介している個人サイトなどでは、北高への『巡礼』は、バスを利用することを推奨しているところが多い。
それでも――――――。
目的地に向かう先で、クロが十分に気を使ってくれたことと、なにより、北高に到着してから登ってきた坂道(通称ハルヒ坂)を振り返った時に視界に飛び込んできた街並みの美しさに、それまでの疲れが一気に吹き飛んだ。
車道を走る車に気をつけながら、自転車を停めて、景色に見入っているわたしに、
「な? 結構スゴいだろう!?」
クロが、誇らしげにたずねてきた。
そんな彼の無邪気な表情につられて、自分も笑顔になり、「うん!!」と、大きく返事をしたあと、
「クロは、前にもココまで来たことがあったの?」
と、彼にたずねてみた。
「あぁ、去年の秋にソウマと一緒に来たんだ。あの時は、道を間違えたりして大変だったんだ……」
そう言って、クロは苦笑いをする。
普段から、一緒に行動する友人が居るクロと、クロの話しに度々出てくるソウマという友だちのことを、わたしは、少し羨ましく感じた。
「ふ~ん。そうなんだ……」
少し気のない返事になってしまったが、クロは、特に気にしたようすもなく、こんなことを言ってきた。
「金曜にシロと会う約束をしたあとさ、この景色をシロと一緒に見れたらイイな、って思ってたんだ――――――」
その一言に、思わず彼の方に目を向けると、クロは、なぜか照れたように、そっぽを向いていた。
彼のその仕草につられて、わたしも思わず視線をそらしてしまう。
(いまのは、どういう意味なんだろう?)
そんなことを考えながら、再び街の景色の方に視線を向けると、クロは、何かを取り繕うように、たずねてきた。
「つ、次は、どこに行こうか?」
今度の質問には、やや慎重に、
「う~ん、できればココから遠くない場所がイイかな~」
と、つぶやいて、
「あと、もう山登りをしなくて済むところ!」
と、強調して答えることにした。
北高への巡礼を終えたわたしたちは、自動車の交通量が多い県道を避け、登ってきた道とは違うルートを使って、次の目的地に向かうことにした。
最初は急角度だった下り坂も、しばらくしてバス通りに出ると、ゆるやかな傾斜になり、北高に向かった道のりと違って、その坂道を自転車でゆっくりと下り降りて行くのは、とても気持ちが良かった。
この日、二つ目の目的地である市民プールは、そのバス通り沿いにあったが、春先の季節ということで、当然、営業はしておらず、残念ながらプールサイドでの撮影は出来なかった。
前日は、遅くまで《トゥイッター》のアカウント作成や投稿を行っていたので、目が覚めると、午前十時近くになっていた。
遅く目覚めたことを伯母に申し訳なく思いつつ、中途半端な時間に起きてしまったため、朝食と昼食を兼ねた食事をとったあとは、スマホを触りながら正午過ぎまで伯父夫婦宅で過ごしてから、午後一時の集合に間に合うように家を出た。
約束した集合時間より少し早く児童公園に着くと、すでにクロは、遊歩道のベンチに座って待っていた。
声を掛けようと自転車を押しながら近づくと、彼もこちらに気付いて、
「シロ!」
と、声をあげて大きく手を振った。
「クロ、早かったんだね……待たせちゃって、ゴメンね」
彼のそばに歩いて行きながら、そう言うと、
「家で待ちきれなくて、ちょっと早めに出てしまってさ……」
クロは、へへへ……という感じで笑いながら答えた。
(自分と同じように、クロも今日の待ち合わせを楽しみにしてたのかな?)
そんな想像をすると、なんだか嬉しい気持ちがこみ上げてきて、
「そうなんだ……」
と、彼の言葉に応じながら、自然と笑みがこぼれた。
そんな風に、クロと無事に待ち合わせができたことを喜んでいると、
「今日は、どうする? シロ、どこか行きたい場所はあるか?」
と、彼がたずねてきた。
クロの問いかけに「う~ん、そうだな~」と、考えていると、
「良かったら、北高の方に行ってみねぇ? 山道で、ちょっと大変かもだけど……」
彼は、そんな提案をしてきた。
「北高? 行ってみたい!!」
わたしは、即答したものの、すぐに「山道で、ちょっと大変かも」というクロの言葉が気になった。
アニメを観た人なら、みんな知っているとは思うけれど、主人公のキョンが通う高校は、『登山』と称されるくらいのキツい登り坂なのだ。
そのことを思い出して、サッと表情が曇り、
「でも、大丈夫かな……」
不安になるわたしに、クロは、少し気落ちしたような表情で、
「そっか……シロが心配ならやめるけど……」
と、答えた。
その寂しげな表情を見て、彼をガッカリさせたくない、という気持ちになり、
「ううん! やっぱり行ってみたい!」
と、返答する。
わたしの一言に、クロは、また嬉しそうに笑って答えた。
「そっか! 疲れたら、自転車を押しながら、ゆっくり行こうぜ!」
結論から言うと、自転車を伴っての北高への道のりは、小学四年生の修了式を終えたばかりの児童にとって『登山』という言葉でも生ぬるい苦行だった。
同じく四年生の遠足で高尾山に登ったときの方が、まだマシだったのではないかと感じたほどだ。
この巡礼を行った時期が、春先ではなく真夏だったら、間違いなく途中棄権をしていたことだろう。
実際に、この場所を紹介している個人サイトなどでは、北高への『巡礼』は、バスを利用することを推奨しているところが多い。
それでも――――――。
目的地に向かう先で、クロが十分に気を使ってくれたことと、なにより、北高に到着してから登ってきた坂道(通称ハルヒ坂)を振り返った時に視界に飛び込んできた街並みの美しさに、それまでの疲れが一気に吹き飛んだ。
車道を走る車に気をつけながら、自転車を停めて、景色に見入っているわたしに、
「な? 結構スゴいだろう!?」
クロが、誇らしげにたずねてきた。
そんな彼の無邪気な表情につられて、自分も笑顔になり、「うん!!」と、大きく返事をしたあと、
「クロは、前にもココまで来たことがあったの?」
と、彼にたずねてみた。
「あぁ、去年の秋にソウマと一緒に来たんだ。あの時は、道を間違えたりして大変だったんだ……」
そう言って、クロは苦笑いをする。
普段から、一緒に行動する友人が居るクロと、クロの話しに度々出てくるソウマという友だちのことを、わたしは、少し羨ましく感じた。
「ふ~ん。そうなんだ……」
少し気のない返事になってしまったが、クロは、特に気にしたようすもなく、こんなことを言ってきた。
「金曜にシロと会う約束をしたあとさ、この景色をシロと一緒に見れたらイイな、って思ってたんだ――――――」
その一言に、思わず彼の方に目を向けると、クロは、なぜか照れたように、そっぽを向いていた。
彼のその仕草につられて、わたしも思わず視線をそらしてしまう。
(いまのは、どういう意味なんだろう?)
そんなことを考えながら、再び街の景色の方に視線を向けると、クロは、何かを取り繕うように、たずねてきた。
「つ、次は、どこに行こうか?」
今度の質問には、やや慎重に、
「う~ん、できればココから遠くない場所がイイかな~」
と、つぶやいて、
「あと、もう山登りをしなくて済むところ!」
と、強調して答えることにした。
北高への巡礼を終えたわたしたちは、自動車の交通量が多い県道を避け、登ってきた道とは違うルートを使って、次の目的地に向かうことにした。
最初は急角度だった下り坂も、しばらくしてバス通りに出ると、ゆるやかな傾斜になり、北高に向かった道のりと違って、その坂道を自転車でゆっくりと下り降りて行くのは、とても気持ちが良かった。
この日、二つ目の目的地である市民プールは、そのバス通り沿いにあったが、春先の季節ということで、当然、営業はしておらず、残念ながらプールサイドでの撮影は出来なかった。
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