105 / 454
第10章〜どらドラ!〜①
しおりを挟む
5月6日(土)
「「「せ~の!!!!!!」」」
「「「わっせろ~い!!!!!!」」」
大型倉庫内で円陣を組んだ、体育会系クラブ男子部員有志の面々の声が響き渡る。
中庭に設置されたステージ上で白草四葉たちのライブ公演が終了し、校門から校舎へと続く回廊を移動する竜司たちパレード隊の出番がやって来た。
「さぁ、私たちも気合いを入れて行くよ!」
ドラムメジャーと呼ばれるマーチングバンドの指揮者を務める吹奏楽部の寿副部長が、部員に対して、喝を入れると、バンドメンバーたちは、静かにうなずく。
「じゃ、シャッター開けます!」
野球部に入部したばかりの一年生部員数名が、大型倉庫の重たいシャッターを持ち上げると、薄暗かった倉庫内に、五月の午後の明るい陽射しが差し込んできた。
シャッターを開いた一年生部員が移動式のフロートの内部に移動するのを確認し、ドラムメジャーを務める美奈子が、部員たちに向かってホイッスルを鳴らす。
すると、四十名編成のメンバーは楽器を構え、さらに彼女が前方を振り向くと、金管のファンファーレに対して木管群が呼応するかたちで、この季節に相応しい爽やかな風を思わせる曲が始まった。
マーチングの最初の曲は、かつて全日本吹奏楽コンクールの課題曲に選定され、今も高い人気を誇る『五月の風』だ。
弾むような木管のメロディーが印象的な曲の冒頭とともに、開かれたシャッターの奥から吹奏楽部のマーチングバンドが現れると、校門から中庭、さらには校舎群へと続く回廊の周囲では拍手と歓声が上がり、その音の波は、ステージ前の観客席にも徐々に波及していく。
そして、四十名の吹奏楽部の行進に続いて、黒田竜司たちの搭乗するフロートが出現すると、拍手と歓声は、さらに大きくなった。
「すげ~! ユニバのパレードみたい!」
「あれ、何で動いてるの? 電動モーター?」
観客がさまざまな声をあげる中、移動式フロートの台上では竜司とコーラス部の浦嶋部長ほか四名の部員たちが、沿道の見学者に手を振って歓声に応えている。
また、フロートの周辺では、男子体操部、女子の新体操部、さらに、ダンス部の精鋭メンバーが演奏曲に合わせた振り付けを行い、パレードに華を添える。
マーチングバンドの演奏は、フルートとクラリネットの応酬が繰り返される中盤に差し掛かり、この辺りから、周囲の観客から起こる拍手は、手拍子に変わっていった。
この曲の作曲者自身が、「日本人が苦手な」リズムであると表現している八分の六拍子で構成された楽曲であるにも関わらず、キッチリと手拍子が取れているのは、演奏のクオリティが高いことと、校内にいる中高生の適応力の高さを証明しているのかも知れない。
フロートの壇上から沿道を見渡した竜司は、観客のノリの良さにつられて笑顔になり、すぐそばで、観衆に愛想よく応じている浦嶋エリと顔を見合わせて、さらに表情をほころばせた。
パレードは順調に進み、オープニング曲も演奏の後半に入る。
ここからは、クラリネットとサックスが主体となり、マーチングに参加している紅野アザミたちの見せ場でもある。
木管楽器のゆったりとした主旋律が流れる中、フルートとピッコロが奏でる装飾的な旋律が小鳥の囀りがイメージさせたあと、三重奏がニ度繰り返され、金管群と木管が呼応して演奏は、佳境に入っていく。
いったん、スローなテンポになったあと、クライマックスでは、トランペットとクラリネットが奏でる主旋律、金管低音楽器隊が奏でる裏旋律に、中盤から引き続き木管高音群が奏でる装飾的なメロディーが融和し、見事な盛り上がりを見せて演奏が終わる。
ドラムメジャーの寿副部長が、演奏終了のポーズを取ると、手拍子は、再び大きな拍手と歓声に変わった。
ここで、行進は一時停止し、紅野アザミをはじめ、最初の曲の演奏を無事に終えたマーチングバンドの面々からは、緊張感から開放されたような安堵の表情が浮かぶ。
オープニングから盛況となったパレードに、竜司と浦嶋部長は、再び顔を見合わせたあと、グータッチで、お互いの感情を確認し合った。
ここからは、いよいよボーカル隊の出番だ。
ドラムメジャーのホイッスルのもと、二曲目の『Twist and Shout』の演奏が始まると、それまで整然とした演奏で規律正しく行進を行っていた吹奏楽部の部員たちが、楽器を左右に揺らしながら、楽しげなようすで楽曲を奏で始めた。
「「「せ~の!!!!!!」」」
「「「わっせろ~い!!!!!!」」」
大型倉庫内で円陣を組んだ、体育会系クラブ男子部員有志の面々の声が響き渡る。
中庭に設置されたステージ上で白草四葉たちのライブ公演が終了し、校門から校舎へと続く回廊を移動する竜司たちパレード隊の出番がやって来た。
「さぁ、私たちも気合いを入れて行くよ!」
ドラムメジャーと呼ばれるマーチングバンドの指揮者を務める吹奏楽部の寿副部長が、部員に対して、喝を入れると、バンドメンバーたちは、静かにうなずく。
「じゃ、シャッター開けます!」
野球部に入部したばかりの一年生部員数名が、大型倉庫の重たいシャッターを持ち上げると、薄暗かった倉庫内に、五月の午後の明るい陽射しが差し込んできた。
シャッターを開いた一年生部員が移動式のフロートの内部に移動するのを確認し、ドラムメジャーを務める美奈子が、部員たちに向かってホイッスルを鳴らす。
すると、四十名編成のメンバーは楽器を構え、さらに彼女が前方を振り向くと、金管のファンファーレに対して木管群が呼応するかたちで、この季節に相応しい爽やかな風を思わせる曲が始まった。
マーチングの最初の曲は、かつて全日本吹奏楽コンクールの課題曲に選定され、今も高い人気を誇る『五月の風』だ。
弾むような木管のメロディーが印象的な曲の冒頭とともに、開かれたシャッターの奥から吹奏楽部のマーチングバンドが現れると、校門から中庭、さらには校舎群へと続く回廊の周囲では拍手と歓声が上がり、その音の波は、ステージ前の観客席にも徐々に波及していく。
そして、四十名の吹奏楽部の行進に続いて、黒田竜司たちの搭乗するフロートが出現すると、拍手と歓声は、さらに大きくなった。
「すげ~! ユニバのパレードみたい!」
「あれ、何で動いてるの? 電動モーター?」
観客がさまざまな声をあげる中、移動式フロートの台上では竜司とコーラス部の浦嶋部長ほか四名の部員たちが、沿道の見学者に手を振って歓声に応えている。
また、フロートの周辺では、男子体操部、女子の新体操部、さらに、ダンス部の精鋭メンバーが演奏曲に合わせた振り付けを行い、パレードに華を添える。
マーチングバンドの演奏は、フルートとクラリネットの応酬が繰り返される中盤に差し掛かり、この辺りから、周囲の観客から起こる拍手は、手拍子に変わっていった。
この曲の作曲者自身が、「日本人が苦手な」リズムであると表現している八分の六拍子で構成された楽曲であるにも関わらず、キッチリと手拍子が取れているのは、演奏のクオリティが高いことと、校内にいる中高生の適応力の高さを証明しているのかも知れない。
フロートの壇上から沿道を見渡した竜司は、観客のノリの良さにつられて笑顔になり、すぐそばで、観衆に愛想よく応じている浦嶋エリと顔を見合わせて、さらに表情をほころばせた。
パレードは順調に進み、オープニング曲も演奏の後半に入る。
ここからは、クラリネットとサックスが主体となり、マーチングに参加している紅野アザミたちの見せ場でもある。
木管楽器のゆったりとした主旋律が流れる中、フルートとピッコロが奏でる装飾的な旋律が小鳥の囀りがイメージさせたあと、三重奏がニ度繰り返され、金管群と木管が呼応して演奏は、佳境に入っていく。
いったん、スローなテンポになったあと、クライマックスでは、トランペットとクラリネットが奏でる主旋律、金管低音楽器隊が奏でる裏旋律に、中盤から引き続き木管高音群が奏でる装飾的なメロディーが融和し、見事な盛り上がりを見せて演奏が終わる。
ドラムメジャーの寿副部長が、演奏終了のポーズを取ると、手拍子は、再び大きな拍手と歓声に変わった。
ここで、行進は一時停止し、紅野アザミをはじめ、最初の曲の演奏を無事に終えたマーチングバンドの面々からは、緊張感から開放されたような安堵の表情が浮かぶ。
オープニングから盛況となったパレードに、竜司と浦嶋部長は、再び顔を見合わせたあと、グータッチで、お互いの感情を確認し合った。
ここからは、いよいよボーカル隊の出番だ。
ドラムメジャーのホイッスルのもと、二曲目の『Twist and Shout』の演奏が始まると、それまで整然とした演奏で規律正しく行進を行っていた吹奏楽部の部員たちが、楽器を左右に揺らしながら、楽しげなようすで楽曲を奏で始めた。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話
頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。
綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。
だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。
中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。
とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。
高嶺の花。
そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。
だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。
しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。
それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。
他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。
存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。
両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。
拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。
そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。
それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。
イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。
付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる