初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

文字の大きさ
138 / 454
第二部

第1章〜幼なじみは絶対に勝てないラブコメ〜⑦

しおりを挟む
 校舎の最上階に位置する二年A組の教室のドアを開けると、予想どおり、シロは自分の席で帰り支度をしていた。
 紅野の後ろの席にあたる前方から二列目の席で、通学カバンの中から何かを取り出しながら、シロは、教室内に入ったこちらをチラリと見たあと、再び目線をカバンに落とした。

「何しに来たの?」

 視線を合わせないまま、問いかけてくる彼女に、シンプルに答える。

「シロと話しをしに来たんだよ……」

「部長さんに言われて? お疲れさま……でも、広報部がわたしを必要としていないように、わたしからも、黒田クンたちと話すことはないんだけど?」

 オレが、彼女のことをシロと呼んでいるように、近ごろ、二人でいるときは、オレのことをクロと、小学生時代のあだ名で読んでくれていた彼女は、あえて「クン」付けで呼ぶことで、取り付くしまのない雰囲気を言外に醸し出している。
 正直なところ、内心では、

(まったく、なんつ~面倒くさいヤツだ……)

と感じつつも、こう答えた。

「申し訳ないが、シロは二つ思い違いをしている。一つは、ここには、オレ自身の意志でやって来たこと。もう一つは、広報部はシロの存在を必要としている、ってことだ」

 こちらの言葉が響いたのか、彼女は、ピクリと肩を震わせたあと、

「どういうこと?」

と、たずねてきた。

(ヨシッ! 狙いどおり、突破口ができた)

 そう感じながらも、表情には出さないよう、部長命令であるシロのフォローに入る。
 もちろん、彼女を追うように背中を押してくれたのは、鳳花部長の「しっかり責任をはたしてくるように」という言葉だったので、『自分自身の意志でここに来た』というのは、その部長の指示を達成するための方便という側面もあるが……。
 (主に桃華の煽り発言で)気分を害しているであろうシロをこのまま放っておけない、と感じたことは事実だ。
 そして、人手不足のわりに、入部の条件がやたらと厳しい、我らが広報部の活動方針と部長がシロの入部を断った真意を、あらためて彼女に伝えておかなければいけない、というのが、オレの本心だった。
 彼女が口にした疑問に、オレは、慎重に言葉を選びながら語りかける。

「せっかく、オレたちの活動に興味を持って見学に来てくれたのに……不愉快な想いをさせてしまって、申し訳ない。まず、それを謝らせてくれ。申し訳ない」

 頭を下げて、謝罪の意志を示すと、シロは、

「別に……クロに頭を下げてもらう必要はないんだけど……わたしは、広報部に歓迎されていないみたいだし……特に一部のヒトにはね」

相変わらず不機嫌そうな口調で、言葉を返してくる。

「桃華か……あいつも、根は悪いヤツじゃないんだが……ただ、無駄に他人をアオるところがあってな……中学の時は、それが原因で周囲とトラブることがあったから、それを注意して、性格もかなり丸くなったと思ってたんだけどな」

 おそらく、シロが不機嫌オーラを出す最大の原因になったであろう後輩のことを想像しながら語ると、

「ふ~ん……あのコをかばうんだ?」

彼女は、相変わらず不満げな表情で返答する。

「いや、そういうわけじゃない! 桃華には、なるべく、二年の教室には来ないように伝えておくし、今後、もし今日みたいに、シロをアオるようなことを言って来たら、すぐに相談してくれ。広報部としても、キチンと指導するようにするから」

 こちらが、そう返答すると、

「そう……まあ、あのコが、わたしたちの周りをウロウロしなきゃ、それでいいわ」

と、シロは、一応、納得したような表情を見せてくれた。
 そこで、オレは、もうひとつの本題に入る。

「それと、もうひとつ……広報部が、シロを歓迎していない、というのは、完全に誤解だ」

 そう、口にすると、彼女は、「どういうこと?」と、今度は口に出さず、表情で問いかけてきたので、続きを語らせてもらう。

「オープン・スクールのあと、あらためて、動画でシロたちのステージを見せてもらったんだが……相変わらず、スゴいパフォーマンスだったな。それに、ステージ上で共演していた鳳花部長のあんなに楽しそうな表情を見たのは初めてだった」

 我ながら、未練がましいことだとは思うが、在校生だけでなく、オープン・スクールに参加していた中学生やライブ中継を視聴していた人たちの前で行った告白をシロに断れたオレは、直後に行われたパレードの待機のため、ライブでみることのできなかった彼女と鳳花部長のステージを壮馬たちが録画していた動画で確認していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

ほのぼの学園百合小説 キタコミ!

水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。 帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、ほのぼの学園百合小説。 ♪ 野阪 千紗都(のさか ちさと):一人称の主人公。帰宅部部長。 ♪ 猪谷 涼夏(いのや すずか):帰宅部。雑貨屋でバイトをしている。 ♪ 西畑 絢音(にしはた あやね):帰宅部。塾に行っていて成績優秀。 ♪ 今澤 奈都(いまざわ なつ):バトン部。千紗都の中学からの親友。 ※本小説は小説家になろう等、他サイトにも掲載しております。 ★Kindle情報★ 1巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4 2巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP 3巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3 4巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P 5巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL 6巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ 7巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0F7FLTV8P Chit-Chat!1:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H Chit-Chat!2:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FP9YBQSL ★YouTube情報★ 第1話『アイス』朗読 https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE 番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読 https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI Chit-Chat!1 https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34 イラスト:tojo様(@tojonatori)

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

カオルとカオリ

廣瀬純七
青春
一つの体に男女の双子の魂が混在する高校生の中田薫と中田香織の意外と壮大な話です。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...