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第二部
第3章〜カワイくてゴメン〜⑥
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※
~黒田竜司の回想~
ゴールデンウィークが明けた月曜日の昼休みのこと――――――。
給食を食べ終わったオレと壮馬は、鳳花先輩に呼び出されて、放送室に来ていた。
「放送開始は金曜日の予定ですよね? 今日の昼休みに呼び出されたってことは、急用ですか?」
オレが、そうたずねると、放送部の部長は、冷静な口調で、
「えぇ、緊急事態よ」
と、不穏な言葉を口にした。さらに、続けて、「これを見てちょうだい」と、一枚の紙切れをオレと壮馬に向けて差し出す。
《放送部1年の佐倉桃華の声がムカつく》
鳳花部長が示した紙には、そう書かれていた。
「これは……?」
オレより先に壮馬が鳳花部長にたずねると、彼女は、相変わらず淡々とした口調で答える。
「今朝、放送室前のリクエストボックスに入ってたの」
山の手中学の放送部では、元号が平成から令和に変わっても、放送室前に設置されたリクエストボックスに、手書きの紙を投函するというカタチで、昼休みに掛ける音楽のリクエストを募っていた。
もっとも、このリクエストボックスは、非公式ながら、放送部に対する要望を受け付けることも黙認していたので、放送部の部員に対する『あつい想い』がつづられた恋文が投函されることも度々あり、そのターゲットとなることの多い鳳花部長は、毎度、それらに目を通しつつも、ため息をつきながら、定期的に紙束を処分していた。
余談はさておき――――――。
今朝、確認されたという紙を見ながら、壮馬が口をひらく。
「先入観を持つのは良くないかもですけど……女子の書いた文字に見えますね。一年生の仕業でしょうか?」
こうしたトラブルに興味を持ちがちな下級生の言葉に、
「そうね……」
と、うなずきつつ、鳳花先輩は、「もうひとつ、気になることがあるの」と、付け加えた。
「三時間目が終わったときだったかな? ウチのクラスの進藤さんが、妹さんを連れて、報告に来てくれたの……一時間目から、佐倉さんのようすが不自然で、二時間目の体育の授業では、彼女にボールをぶつけていた女子生徒が居る、って……」
「マジっすか……!? 誰だよ、そんなことするのは!」
思わず声をあげると、鳳花先輩は、「落ち着きなさい、黒田くん」と、オレを諭したが、すぐその後に、こちらを真っ直ぐ向いて、こう言った。
「放課後にお願いしたいことがあるんだけど、大丈夫?」
「はい、もちろんです!」
彼女の言葉に、オレはすぐに反応してうなずく。
そんなオレたちの会話を聞きながら、壮馬が口をはさんだ。
「あの……念のために、佐倉さんに事実確認をした方が良いんじゃ……」
「いや……それは、どうかな……?」
友人の言葉に、オレは反論する。
「佐倉は、このことをオレたちに知られたくない、と思っているハズだ……事態がエスカレートしないうちは、あいつ自身から、オレたちに相談して来るまで、この件には触れないほうが良いと思う」
オレが、自分の考えを述べると、鳳花部長も、賛成してくれた。
「佐倉さんなりに考えていることもあるだろうし、私は、可能な限り、それを尊重したいわ。ただし――――――もし、トラブルにつながるようなことがあったら……二人とも、その時は、彼女を守ってあげてね」
彼女は、そう言ったあと、「黒田くん……」と、オレを手招きして呼び、学内で任された立場から自身の考えを述べ、放課後の行動に関しての指針を授けてくれた。
~黒田竜司の回想~
ゴールデンウィークが明けた月曜日の昼休みのこと――――――。
給食を食べ終わったオレと壮馬は、鳳花先輩に呼び出されて、放送室に来ていた。
「放送開始は金曜日の予定ですよね? 今日の昼休みに呼び出されたってことは、急用ですか?」
オレが、そうたずねると、放送部の部長は、冷静な口調で、
「えぇ、緊急事態よ」
と、不穏な言葉を口にした。さらに、続けて、「これを見てちょうだい」と、一枚の紙切れをオレと壮馬に向けて差し出す。
《放送部1年の佐倉桃華の声がムカつく》
鳳花部長が示した紙には、そう書かれていた。
「これは……?」
オレより先に壮馬が鳳花部長にたずねると、彼女は、相変わらず淡々とした口調で答える。
「今朝、放送室前のリクエストボックスに入ってたの」
山の手中学の放送部では、元号が平成から令和に変わっても、放送室前に設置されたリクエストボックスに、手書きの紙を投函するというカタチで、昼休みに掛ける音楽のリクエストを募っていた。
もっとも、このリクエストボックスは、非公式ながら、放送部に対する要望を受け付けることも黙認していたので、放送部の部員に対する『あつい想い』がつづられた恋文が投函されることも度々あり、そのターゲットとなることの多い鳳花部長は、毎度、それらに目を通しつつも、ため息をつきながら、定期的に紙束を処分していた。
余談はさておき――――――。
今朝、確認されたという紙を見ながら、壮馬が口をひらく。
「先入観を持つのは良くないかもですけど……女子の書いた文字に見えますね。一年生の仕業でしょうか?」
こうしたトラブルに興味を持ちがちな下級生の言葉に、
「そうね……」
と、うなずきつつ、鳳花先輩は、「もうひとつ、気になることがあるの」と、付け加えた。
「三時間目が終わったときだったかな? ウチのクラスの進藤さんが、妹さんを連れて、報告に来てくれたの……一時間目から、佐倉さんのようすが不自然で、二時間目の体育の授業では、彼女にボールをぶつけていた女子生徒が居る、って……」
「マジっすか……!? 誰だよ、そんなことするのは!」
思わず声をあげると、鳳花先輩は、「落ち着きなさい、黒田くん」と、オレを諭したが、すぐその後に、こちらを真っ直ぐ向いて、こう言った。
「放課後にお願いしたいことがあるんだけど、大丈夫?」
「はい、もちろんです!」
彼女の言葉に、オレはすぐに反応してうなずく。
そんなオレたちの会話を聞きながら、壮馬が口をはさんだ。
「あの……念のために、佐倉さんに事実確認をした方が良いんじゃ……」
「いや……それは、どうかな……?」
友人の言葉に、オレは反論する。
「佐倉は、このことをオレたちに知られたくない、と思っているハズだ……事態がエスカレートしないうちは、あいつ自身から、オレたちに相談して来るまで、この件には触れないほうが良いと思う」
オレが、自分の考えを述べると、鳳花部長も、賛成してくれた。
「佐倉さんなりに考えていることもあるだろうし、私は、可能な限り、それを尊重したいわ。ただし――――――もし、トラブルにつながるようなことがあったら……二人とも、その時は、彼女を守ってあげてね」
彼女は、そう言ったあと、「黒田くん……」と、オレを手招きして呼び、学内で任された立場から自身の考えを述べ、放課後の行動に関しての指針を授けてくれた。
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