初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

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第二部

第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜②

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「それは、映画かドラマのセリフなの?」

「黒田くんと黄瀬くんが好きなアニメからの引用よ。組織論として、互いに通じるところがある、というか……どちらも、言ってることは同じよね?」

 美奈子の疑問に答えた鳳花は、クスクスとおかしそうに笑った。

「なるほど……一年の時に、広《・》報《・》部《・》なんて、実態が良くわからない部活を立ち上げて、『このコは、いったいナニをするつもりなの?』なんて、思ってたけど、三年になってから、ようやく、鳳花の考えが見えてきた」

 これまで抱いていた疑問が、徐々に晴れてきた、という風に語る美奈子に対して、鳳花は、心の底から満足している、といったようすで語る。

「それも、黒田くんや黄瀬くん、佐倉さんのような、私が望む人材が集まってくれたおかげね」

 満ち足りた表情で、穏やかに話す副会長に、生徒会長は確認の意味を込めて、問いかけた。

「鳳花は、山中やまちゅう……山の手中学の出身だったよね? 中学生の頃から育て上げてきたメンバーが、ようやく揃ったってこと?」

「中学の時に感じていたのよ……自分たちの学校の魅力を校内に伝えるのは、放送部として発信するだけではダメだってことに。クラブの魅力を伝えたいなら、そのクラブと懇意にして、部員やメンバーの人柄にも触れないといけないし……他人の性格や動向を良く観察できる黒田くんは、その渉外交渉にうってつけの人物ね。それに、視覚に訴える映像の編集なら黄瀬くん、イベントや放送の司会進行なら佐倉さん……このメンバーが揃えば、学校の内外に、私たち芦宮高校の魅力を十分に発信できる、そう考えているの」

 自信たっぷりに語る広報部の責任者の姿に、吹奏楽部の副部長は、感嘆を通り越して、あきれ返るといった表情で言葉を返す。

「私よりも、あんたの方が、よっぽど、自信家だわ……自分たちの活動にも、下級生に対しても、よくそこまで自信満々に言い切れるわね……」

「『いつ、いかなる時でも、私を信じて疑わない部下への信頼。それこそ私が今まで築き上げてきた財産の全てです』これも、さっきと同じアニメ作品からの引用よ。もっとも、私は、黒田くんたちを部下だと思ったことはないけど……でも、このセリフは、もっと然るべき場面で使うべきだったわね」
 またも、一人でおかしそうに微笑む鳳花に対して、美奈子は、

「はいはい、後輩部員に対してのおノロケは、もう結構」

と、断りを入れたあと、つぶやくように口にした。

「でも、組織や人材に対する考え方は、キッチリとしておかないとね。特に、私たち生徒会を運営する人間は……」
 
 独り言のように漏れた、その言葉に反応し、生徒会副会長は、生徒会長にたずねる。

「あなたも、自分の部活動には信頼をおいているみたいじゃない? 気がかりのタネは、来年の生徒会メンバーってところ?」

 確認するようにたずねる鳳花の問いかけに、美奈子は素直に自身の想いを口にした。

「相変わらずカンが鋭いわね……私としては、次期生徒会長に、ウチのカワイイ後輩を推したいワケよ……責任感、人望、事務処理能力……どれをとっても、私たちの後継者に相応しい人材なんだけど……吹奏楽部でも、部長を任されそうなのよね……」

「あら、それは大変! 生徒会長兼吹奏楽部部長なんて、どこかの現生徒会長より重責じゃない?」

「そうなんだよね~。私のときは、『生徒会長との兼務は大変でしょう?』って、サオリンが吹奏楽スイ部の部長を引き受けてくれたんだけどね……」

 現職の生徒会長の言葉に、生徒会副会長は、

(後輩へのおノロケは、私以上じゃない?)

内心で、そう苦笑しつつ、

「誰か、サポートをしてくれる人材が必要ね?」
と、応じる。
 すると、「我が意を得たり!」と、表情を明るく一変させた美奈子は、

「そうなの! ウチのカワイイ後輩のサポート役にピッタリの人物が、広報部にいるんだけどな~?」

と、相談を持ちかけるように、鳳花に語りかける。

「それは、黒田くんのことを言ってるの?」

 やれやれ、といった表情で、たずね返す広報部の部長に、吹奏楽部の副部長は、満面の笑みでうなずいた。

「さすがは、鳳花ね! カンの鋭い相手と話すと会話が、はかどって助かるわ!」

「私としては、ウチの下級生たちの自主性を尊重したいから……あのコたちが生徒会役員として活動をすることに、賛成も反対もしないわ。でも、黒田くんに白羽の矢を立てるのは、どうして? 理由くらい聞かせてくれるんでしょ?」

「えぇ、もちろん! さっき、広報部の部長さま御本人からも、お墨付きをいただいたからね~。『他人の性格や動向を良く観察できる黒田くんは、渉外交渉にうってつけの人物』だって! 常に緊張感を伴う生徒会内外の人間関係の調整役に、彼はピッタリなんじゃないか、って考えているところなのよ」

 自信満々に言い切る美奈子に、鳳花はたずねる。

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