187 / 274
第二部
第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑥
しおりを挟む
「私としては、白草さんには、今までと同じように色々なイベントでステージに立って活躍してもらいたいと思っているし、自分たち広報部は、そのためのサポートを全力で行いたい、と考えているの。だから、彼女との関わりがなくなることはないと思うわ――――――あくまで、白草さんが、ステージに立つことを望んで、私たちのサポートを受け入れてくれれば、だけどね」
花金鳳花にしては珍しく、最後は、少しおどけたような口調で自らの考えを述べると、彼女の述べる自説にうなずきながら、何度も首をタテに振り、熱心に話しを聞いていた雪乃は、興奮気味に確認する。
「じゃあ、広報部に入れば、ヨツバちゃんと関われる機会も増えるんだスか?」
「まぁ、そう言うことになるわね」
右の頬に手を当てながら、穏やかな笑顔で、下級生の質問に答える鳳花だが、彼女の隣から、標準語で言うところの「でしゃばり」、彼女たちの住む地方で言うところの「いっちょかみ」な性格である美奈子が、口をはさんできた。
「雪乃ちゃん! ヨツバちゃんに興味があるのはわかったけど、広報部は、色んなスキルを持つスペシャリストが揃っているクラブよ。おまけに人使いの荒い部長もいるし、大丈夫?」
生徒会長を務める友人の言葉に、「余計なことを言わないでちょうだい」という冷たい視線を向けながら、広報部の部長は、努めて冷静な口調で新入生に問いかける。
「たしかに、美奈子の言うように、私たち広報部の活動は、決してラクなものじゃないし、宣伝や広報活動に役立つ特技を持っていることが望ましいんだけど――――――宮野さんは、なにか得意なことや、やってみたいことはある?」
その、部活動の入部確認というより、まるで、アルバイトの採用面談のような質問に対してプレッシャーを感じたのか、明らかに緊張した面持ちで、雪乃は、おずおずと語りだした。
「あの……自慢できるようなことではないんでスが……ヨツバちゃんの更新するSNSをずっと見てきたので、《トゥイッター》や《ミンスタ》の更新なら、少すはお役に立てるかもしれねぇでス」
ちょうど、直前に自分たちが話題にしていたことを入部希望者と思われる一年生が口にしたため、鳳花と美奈子は、お互いに顔を見合わせる。
先ほど友人から冷ややかな視線を受けたばかりの美奈子は、おどけた表情を見せながら、
(雪乃ちゃんに、なにか、聞いてみることはないの?)
と、鳳花に目配せする。
友人の視線を受けた広報部の部長は、穏やかな口調ながら、再び、雪乃に対して面接官のように質問を繰り出す。
「そう……やっぱり、白草さんはのSNSでの発信力は、スゴイのね。ところで、宮野さんは、白草さんの《トゥイッター》や《ミンスタ》のどういうところが優れていると感じているのかな?」
今度は、正規社員の入社試験を思わせるような問いかけに対し、それまで、やや緊張気味で、おどおどとした話し方をしていた一年生は、まるで、スイッチが切り替わったかのよう
に、饒舌に、そして、情熱的に語りだした。
「はい、ヨツバちゃんのSNSの魅力は、二つあると、わたすは考えてまス。まず、《トゥイッター》の方では、『アニメやマンガに出てくる料理を作ってみた』の投稿が面白いと思ってます。彼女の好きなアニメやマンガがわかって親近感がわくだけなく、美味しそうな食事が見られるの楽しいんでス!」
一気に語り始めた下級生の言葉に、三年生の二人は目を丸くしながら聞き入っている。
「次に《ミンスタ》の方は、アーティストやミュージシャンの『ファッション・チェック』でスね。ヨツバちゃんは、小学生の頃からテレビで歌っていた経験を活かして、歌手それぞれのステージ映え、映像映えする衣装と、その効果をわかりやすく解説してくれる上に、購入できるショップも教えてくれているんでス」
雪乃が、一息ついたところで、「わお!」と、肩をすくめた美奈子は、興味津々で友人にたずねる。
「なかなか熱く語ってくれるね~。鳳花、こんな風に、ヨ《・》ツ《・》バ《・》ち《・》ゃ《・》ん《・》の投稿を分析してた?」
ニヤニヤとした表情の友人の質問に、鳳花は軽くため息をつきながら、
「いいえ……やっぱり、この分野は自分の専門外だと痛感するわ」
そう返答して、
「宮野さん、良ければ、もう少し白草さんの投稿について聞かせてくれない?」
と、下級生に解説の続きを促した。
花金鳳花にしては珍しく、最後は、少しおどけたような口調で自らの考えを述べると、彼女の述べる自説にうなずきながら、何度も首をタテに振り、熱心に話しを聞いていた雪乃は、興奮気味に確認する。
「じゃあ、広報部に入れば、ヨツバちゃんと関われる機会も増えるんだスか?」
「まぁ、そう言うことになるわね」
右の頬に手を当てながら、穏やかな笑顔で、下級生の質問に答える鳳花だが、彼女の隣から、標準語で言うところの「でしゃばり」、彼女たちの住む地方で言うところの「いっちょかみ」な性格である美奈子が、口をはさんできた。
「雪乃ちゃん! ヨツバちゃんに興味があるのはわかったけど、広報部は、色んなスキルを持つスペシャリストが揃っているクラブよ。おまけに人使いの荒い部長もいるし、大丈夫?」
生徒会長を務める友人の言葉に、「余計なことを言わないでちょうだい」という冷たい視線を向けながら、広報部の部長は、努めて冷静な口調で新入生に問いかける。
「たしかに、美奈子の言うように、私たち広報部の活動は、決してラクなものじゃないし、宣伝や広報活動に役立つ特技を持っていることが望ましいんだけど――――――宮野さんは、なにか得意なことや、やってみたいことはある?」
その、部活動の入部確認というより、まるで、アルバイトの採用面談のような質問に対してプレッシャーを感じたのか、明らかに緊張した面持ちで、雪乃は、おずおずと語りだした。
「あの……自慢できるようなことではないんでスが……ヨツバちゃんの更新するSNSをずっと見てきたので、《トゥイッター》や《ミンスタ》の更新なら、少すはお役に立てるかもしれねぇでス」
ちょうど、直前に自分たちが話題にしていたことを入部希望者と思われる一年生が口にしたため、鳳花と美奈子は、お互いに顔を見合わせる。
先ほど友人から冷ややかな視線を受けたばかりの美奈子は、おどけた表情を見せながら、
(雪乃ちゃんに、なにか、聞いてみることはないの?)
と、鳳花に目配せする。
友人の視線を受けた広報部の部長は、穏やかな口調ながら、再び、雪乃に対して面接官のように質問を繰り出す。
「そう……やっぱり、白草さんはのSNSでの発信力は、スゴイのね。ところで、宮野さんは、白草さんの《トゥイッター》や《ミンスタ》のどういうところが優れていると感じているのかな?」
今度は、正規社員の入社試験を思わせるような問いかけに対し、それまで、やや緊張気味で、おどおどとした話し方をしていた一年生は、まるで、スイッチが切り替わったかのよう
に、饒舌に、そして、情熱的に語りだした。
「はい、ヨツバちゃんのSNSの魅力は、二つあると、わたすは考えてまス。まず、《トゥイッター》の方では、『アニメやマンガに出てくる料理を作ってみた』の投稿が面白いと思ってます。彼女の好きなアニメやマンガがわかって親近感がわくだけなく、美味しそうな食事が見られるの楽しいんでス!」
一気に語り始めた下級生の言葉に、三年生の二人は目を丸くしながら聞き入っている。
「次に《ミンスタ》の方は、アーティストやミュージシャンの『ファッション・チェック』でスね。ヨツバちゃんは、小学生の頃からテレビで歌っていた経験を活かして、歌手それぞれのステージ映え、映像映えする衣装と、その効果をわかりやすく解説してくれる上に、購入できるショップも教えてくれているんでス」
雪乃が、一息ついたところで、「わお!」と、肩をすくめた美奈子は、興味津々で友人にたずねる。
「なかなか熱く語ってくれるね~。鳳花、こんな風に、ヨ《・》ツ《・》バ《・》ち《・》ゃ《・》ん《・》の投稿を分析してた?」
ニヤニヤとした表情の友人の質問に、鳳花は軽くため息をつきながら、
「いいえ……やっぱり、この分野は自分の専門外だと痛感するわ」
そう返答して、
「宮野さん、良ければ、もう少し白草さんの投稿について聞かせてくれない?」
と、下級生に解説の続きを促した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる