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第二部
第4章〜推しが尊すぎてしんどいのに表現力がなさすぎてしんどい〜⑤
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※
「はい? どちら様?」
入り口に向き合う位置に腰掛けていた鳳花が、制服の緑色のタイを確認し、見慣れない一年生に声をかける。
「あ、あの……お話し中に申す訳ねぇでス。いま、ヨツバちゃん……いえ、白草先輩の話しが聞こえたモンで……」
生徒会室のドアのそばに立つ女子生徒の姿を生徒会長と副会長が見つめていると、彼女は、自身の名前を名乗らずに話し始めたことを取り繕うように続けて語る。
「あっ……すいません。わたすは、一年の宮野雪乃と言いまス」
「宮野さん……? 私たち生徒会に何か、御用?」
おづおづと話す下級生を落ち着かせるように、柔らかい口調で、美奈子がたずねた。
「はい! あっ、いいえ! その用事があるのは、生徒会さんでなく、広報部の方で……」
部員減少に悩む複数の文化系クラブを統廃合することにより、自身が設立した部活動の名前が出たことで、広報部の代表者である花金鳳花が再びたずねる。
「御用があるのは、私たちの方だったのね? それで、どんなご要件かしら?」
生徒会の同僚と同じく、下級生を萎縮させないよう、穏やかな口調での問いかけにも、一年生の女生徒は、緊張を隠せないようで、言葉につまりながらも、必死に自身が生徒会室を訪問した理由を告げる。
「は、はい! クラブ紹介とオープン・スクールでヨツバちゃんの舞台を観て、広報部の活動に興味を持ったんで……勇気を出すて、放送室に行ってみたら、『今日は、部長さんは生徒会室に居る』って教えてもらったんで……」
焦りながらも、なんとか言葉をつむぐようすを微笑ましく眺めながら、
「あ~、なるほどね~。だ、そうよ。部《・》長《・》さ《・》ん《・》!」
と、美奈子は広報部の責任者に話しかける。
その問いかけを受け流しながら、鳳花は、穏やかな笑顔で下級生に語りかけた。
「ありがとう、宮野さん。ここには部《・》外《・》者《・》も居るけれど、あなたが気にならなければ、生徒会室で、お話しを聞かせてもらっても良い? 会議はもう終わっているから、遠慮しないで?」
寿生徒会長の方針で、
『ひらかれた生徒会、ひらかれた生徒会室』
をモットーにしている今期の生徒会らしく、一年生を受け入れた鳳花に続き、美奈子も自己紹介を兼ねた、人懐っこい笑顔で語る。
「私は、生徒会長の寿美奈子。お邪魔じゃなければ、同席しても良いかな?」
二人の上級生の問いかけに、宮野と名乗った一年生は、首を何度も上下に振って、
「光栄なことでス」
と、部外者の相席に同意した。
長机とパイプ椅子が並ぶ生徒会室に宮野雪乃を招き入れ、自分たちの近くに着席した下級
生のようすが落ち着いたのを確認して、広報部の責任者が口をひらく。
「それで――――――宮野さんは、私たち広報部のどんな活動に興味を持ってくれているの?」
穏やかな口ぶりで、発せられる問いかけに、雪乃は再び、少し緊張した面持ちで語りだした。
「はい! わたす、東北の方から親の仕事の関係で、この春に、引っ越スして来たばかりなんでスが……小学校の頃から、テレビやネットの世界で活躍している、一つ年上のヨツバちゃんの大ファンで……まさか、そのヨツバちゃんが、同じ学校に転校してくるなんて……」
いきなり自分語りを始め、広報部に関する質問の答えになっていない新入生の回答にも、笑みを絶やさず、
「そうなの……宮野さん、なれない場所への引っ越しと高校入学が重なって大変なのね」
と、鳳花は柔らかな口調で相づちを打ちつつも、本題に入ることを忘れない。
「それで、クラブ紹介や、先週のオープン・スクールで白草さんのライブを観て、私たち広報部の活動に興味を持ってくれたということね?」
「は、はい! すいません、そうでした! ヨツバちゃんが歌うのを初めて生で観たり、久々に映像でも観ることができて感動したので……なにか、ヨツバちゃんのお役に立てないかな、と考えたんでスが……」
広報部部長の巧みな話術に乗せられるように、自らの想いを語る雪乃だが、気になることがあるのか、最後に言葉を濁す。
彼女の表情を察した美奈子が、広報部の当事者である鳳花よりも、先に問いかける。
「ん? どしたん、雪乃ちゃん? なにか気がかりなことでもあるの?」
「はい――――――さっき、生徒会のお二人のお話スが聞こえたんでスけど……ヨツバちゃんは、広報部に入部できないんでスか? もしかして、これから広報部は、ヨツバちゃんとの関わりは少なくなるんでしょうか?」
不安な面持ちでたずねる雪乃から、意外な質問を受けたことに少し驚きつつ、鳳花は下級生を落ち着かせるように、やんわりとした口調で答える。
「はい? どちら様?」
入り口に向き合う位置に腰掛けていた鳳花が、制服の緑色のタイを確認し、見慣れない一年生に声をかける。
「あ、あの……お話し中に申す訳ねぇでス。いま、ヨツバちゃん……いえ、白草先輩の話しが聞こえたモンで……」
生徒会室のドアのそばに立つ女子生徒の姿を生徒会長と副会長が見つめていると、彼女は、自身の名前を名乗らずに話し始めたことを取り繕うように続けて語る。
「あっ……すいません。わたすは、一年の宮野雪乃と言いまス」
「宮野さん……? 私たち生徒会に何か、御用?」
おづおづと話す下級生を落ち着かせるように、柔らかい口調で、美奈子がたずねた。
「はい! あっ、いいえ! その用事があるのは、生徒会さんでなく、広報部の方で……」
部員減少に悩む複数の文化系クラブを統廃合することにより、自身が設立した部活動の名前が出たことで、広報部の代表者である花金鳳花が再びたずねる。
「御用があるのは、私たちの方だったのね? それで、どんなご要件かしら?」
生徒会の同僚と同じく、下級生を萎縮させないよう、穏やかな口調での問いかけにも、一年生の女生徒は、緊張を隠せないようで、言葉につまりながらも、必死に自身が生徒会室を訪問した理由を告げる。
「は、はい! クラブ紹介とオープン・スクールでヨツバちゃんの舞台を観て、広報部の活動に興味を持ったんで……勇気を出すて、放送室に行ってみたら、『今日は、部長さんは生徒会室に居る』って教えてもらったんで……」
焦りながらも、なんとか言葉をつむぐようすを微笑ましく眺めながら、
「あ~、なるほどね~。だ、そうよ。部《・》長《・》さ《・》ん《・》!」
と、美奈子は広報部の責任者に話しかける。
その問いかけを受け流しながら、鳳花は、穏やかな笑顔で下級生に語りかけた。
「ありがとう、宮野さん。ここには部《・》外《・》者《・》も居るけれど、あなたが気にならなければ、生徒会室で、お話しを聞かせてもらっても良い? 会議はもう終わっているから、遠慮しないで?」
寿生徒会長の方針で、
『ひらかれた生徒会、ひらかれた生徒会室』
をモットーにしている今期の生徒会らしく、一年生を受け入れた鳳花に続き、美奈子も自己紹介を兼ねた、人懐っこい笑顔で語る。
「私は、生徒会長の寿美奈子。お邪魔じゃなければ、同席しても良いかな?」
二人の上級生の問いかけに、宮野と名乗った一年生は、首を何度も上下に振って、
「光栄なことでス」
と、部外者の相席に同意した。
長机とパイプ椅子が並ぶ生徒会室に宮野雪乃を招き入れ、自分たちの近くに着席した下級
生のようすが落ち着いたのを確認して、広報部の責任者が口をひらく。
「それで――――――宮野さんは、私たち広報部のどんな活動に興味を持ってくれているの?」
穏やかな口ぶりで、発せられる問いかけに、雪乃は再び、少し緊張した面持ちで語りだした。
「はい! わたす、東北の方から親の仕事の関係で、この春に、引っ越スして来たばかりなんでスが……小学校の頃から、テレビやネットの世界で活躍している、一つ年上のヨツバちゃんの大ファンで……まさか、そのヨツバちゃんが、同じ学校に転校してくるなんて……」
いきなり自分語りを始め、広報部に関する質問の答えになっていない新入生の回答にも、笑みを絶やさず、
「そうなの……宮野さん、なれない場所への引っ越しと高校入学が重なって大変なのね」
と、鳳花は柔らかな口調で相づちを打ちつつも、本題に入ることを忘れない。
「それで、クラブ紹介や、先週のオープン・スクールで白草さんのライブを観て、私たち広報部の活動に興味を持ってくれたということね?」
「は、はい! すいません、そうでした! ヨツバちゃんが歌うのを初めて生で観たり、久々に映像でも観ることができて感動したので……なにか、ヨツバちゃんのお役に立てないかな、と考えたんでスが……」
広報部部長の巧みな話術に乗せられるように、自らの想いを語る雪乃だが、気になることがあるのか、最後に言葉を濁す。
彼女の表情を察した美奈子が、広報部の当事者である鳳花よりも、先に問いかける。
「ん? どしたん、雪乃ちゃん? なにか気がかりなことでもあるの?」
「はい――――――さっき、生徒会のお二人のお話スが聞こえたんでスけど……ヨツバちゃんは、広報部に入部できないんでスか? もしかして、これから広報部は、ヨツバちゃんとの関わりは少なくなるんでしょうか?」
不安な面持ちでたずねる雪乃から、意外な質問を受けたことに少し驚きつつ、鳳花は下級生を落ち着かせるように、やんわりとした口調で答える。
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