初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

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第二部

幕間〜黄色と黒は勇気のしるし〜後編

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 スピンクス1号・2号と名乗る少年たちが、動画を通じて犯行予告をしながら大人たちを手玉に取る、というストーリーに刺激を受けたボクらは、二人で動画配信者になるときは、この作品を参考にしようと考えていた。

「スピンクスと同じくらいカッコいい名前にしたいよな~。壮馬、何か良いアイデアはないか?」

「う~ん……でも、ボクは、神話とか伝説とか、そんなに詳しいわけじゃないからな~。ボクたち二人の名前から、参考にするとか?」

「壮馬との名前か~。あっ、オレたち二人とも名字に色の漢字が入ってるよな!」

 竜司の言葉にボクもつぶやく。

「黄色と黒だね! たしか、この二つの色の組み合わせは、警告色とか警戒色とか言うんだ。踏切の遮断器は注意をうながすためだし、生物なら、トラやスズメバチは、外敵を威嚇するために、この色をまとっているなんて言われてるよ」

 小さい頃から生物図鑑を見るのが好きだったボクは、遠慮なく知識を披露させてもらった。
 ふんふん、とうなずきながら聞いていた竜司は、

「トラとスズメバチか~。トラは、あの野球チームを思い出させるからな~」

と、苦笑しながら、

「スズメバチは、英語でなんて言うんだっけ?」

と、たずねてくる。

「スズメバチは、ホーネットだね。複数形なら、ホーネッツだ」

「ホーネッツか……たしか、アメリカに、そんな名前のバスケチームがあったよな~。いいんじゃないか!?」

 スポーツ全般に興味のないボクと違って、自分で身体を動かすのも観戦するのも大好きな竜司は、そう返事をしてきた。

「なら、決まりだ! ボクらは、ホーネッツ1号・ホーネッツ2号を名乗ろう。『残響のテロル』なら、ツエルブの方が好きだから、ボクは、ホーネッツ2号が良いな。あっ、でも、初代『仮面ライダー』にならえば、『技の1号、力の2号か』……リ竜司は、どっちが良い?」

「初代『ライダー』って、また昭和ネタかよ……」

「いいじゃないか! 昭和のリバイバル・ブームだって起きてるんだし! 庵野監督が『ゴジラ』を撮影したんだから、『仮面ライダー』だって、『ウルトラマン』だって、何年かしたら、リメイクされるかも知れないよ?」

「わかった! わかったから……まあ、ホーネッツとして活動するときは、壮馬が撮影担当になることが多いと思うから、オレが1号になる方が良いんじゃないか? 1号ナシで2号だけ映像に映ってる場面が多いってのも、ちょっと変な話しだろ?」

 ボクの持論に対して、面倒くさそうに対応しながらも、竜司は的確かつ説得力のある案を提示してくれた。

「うん! それもそうだね、じゃあ、やっぱり、ボクが、ホーネッツ2号ってことで……あらためて、ヨロシク! ホーネッツ1号!」

「ああ、ヨロシクな、ホーネッツ2号!」

 竜司とボクは、あらためてお互いを呼び合いながら、グータッチを交わす。
 そして、議題の一つが終わったことを確認した彼は、こんな質問をしてきた。

「ところで、ユニット名は決まったとして、動画登録のチャンネル名はどうするよ? そのままホーネッツ・チャンネルとかにするか?」

 竜司の問いに、ボクは、「フッフッフッ」と、笑みを浮かべながら答えることにする。

「それについては、ちょっと考えていたことがあるんだよね~」

「ん? なんだ、『その質問を待ってました』みたいな顔して……ナニか、良いアイデアがあるのか?」

「そうだよ! 竜司の『竜』と壮馬の『馬』の字を取って、チャンネル名は、『竜馬ちゃんねる』ってのは、どうだい?」

 ボクが、自信満々に返答すると、相棒は、

「竜馬ちゃんねる、か……」

と、つぶやいたあと、

「うん! 坂本龍馬っぽくて、良いんじゃないか!?」

満面の笑みで、親指を立て、アイデアに賛同の意志を示してくれた。
 親友が、無条件で自分のアイデアに賛成してくれたことに喜びを覚えつつ、ボクは照れ隠しに、

「まあ、坂本龍馬は、実際の功績が少なかったとかで、もうすぐ歴史の教科書に出てこなくなるらしいけど……」

と、付け加えてから、《YourTube》のチャンネル登録の準備に入ることにする。
 こうして、小学五年生の春に、ボクらが動画を投稿する『竜馬チャンネル』は誕生した。

 ちなみに――――――。

 一番最初に撮影した動画は、おなじみの「メン◯ス・コーラ」だったんだけど、用意していた2リットルのペットボトルに、シュガーコーティングされたソフトキャンディを落とすと、盛大に泡が吹き出し、撮影場所だった竜司の家のリビングは、コーラまみれになってしまった。
 そして、たまたま仕事を早く終えて帰宅したつかささん(竜司のお母さんは、ボクに対して、そう呼ぶように約束させていた)に、二人して、こっぴどく叱られたことは、ボクらの中で黒歴史になっている。
 それでも、そのあと、司さんの焼いてくれたアップルパイの美味しさとともに、この日の出来事は、ボクにとって忘れられない思い出だ。
 なんとか、コップ二杯ぶんだけ残ったコーラと一緒に、アップルパイを頬張るボクたちを眺めながら、司さんが、

「ハァ……せっかくのアップルパイをコーラと一緒に食べるなんて……これだから、男の子ってヤツは……また、シロちゃんが来てくれたら、マリアージュ・フレールの紅茶を出してくるのに……」

と、ポツリとつぶやいたことが、最近まで頭の片隅に残っていたのも、きっと、そんなことが理由なんだろう――――――。
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