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第二部
幕間〜黄色と黒は勇気のしるし〜前編
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5月8日(月)
~黄瀬壮馬の回想・ふたたび~
小学五年生に進級したボクと竜司は、四年生のときと同様に、同じクラスになっていた。
春休み中になにかあったのか、新学期が始まってからも、しばらく、心ここにあらず、というか、ボクと一緒にいるときも、どこか上の空で話しをすることもあった竜司だけど、ゴールデン・ウィークが終わる頃には、なんとか、(彼にしては)元気のない状態から復活しつつあるようだった。
土日を含めて、奇跡的に五連休となったゴールデン・ウィークが明けた月曜日の放課後、習い事のないボクは、いつものように竜司の家に遊びに来ていた。
黒田家に到着して、玄関のドアを開けると、待ち構えていた友人が、
「ジャジャ~ン! 壮馬、オレも、いよいよスマホ・デビューだ!」
と言って、時代劇の役者が印籠(だったっけ?)をかざすように、ボクに見せつけてきた。
ジャジャ~ン、なんて効果音を口に出す人間を見るのは、久々な気がする。
大型連休が終わってしまったというのに、学校にいるときから、やけにソワソワして、テンションが高いな、と思っていたけど、そういうことだったのか。
(それならそうと、学校にいるときに話してくれれば良かったのに……)
そんなことを考えながら、半年前に発売されたiPhone7をドヤ顔で手にする友人に、ここはスマホ使いの先輩らしく、後輩に優しく返答しておくことにする。
「竜司も、ようやくボクに追いついたんだ……まぁ、スマホについてわからないコトがあったら、なんでも聞いてよ」
「おまえだって、自分のスマホは、使い始めて、まだ一ヶ月ちょっとだろう? 偉そうに、先輩ぶってるんじゃね~よ!」
お約束のように反応する竜司のツッコミを「ハイハイ」と、軽く受け流しながら、いつものようにボクらは、黒田家の二階にある竜司の部屋へと向かう。
「それで、今日はナニをするの?」
竜司の自室のソファーに腰をおろしたボクがたずねると、友人は、「フッフッフッ」と、奇っ怪な笑みを浮かべながら、怪しげな口調で語りだした。
「スマホも手に入ったことだし、我々も、ついに《YourTuber》デビューをするときが来たと思うんだよ、壮馬クン!」
「なんだよ、クン付けで呼んだりして気持ち悪いな」
「こういうのは、雰囲気が大事なんだよ! それより、去年から『二人ともスマホを持ったら、《YourTube》に共同アカウントを作ろう』って言ってたことが実現したんだ。早く、準備しようぜ」
たしかに、四年生の秋頃から、竜司とそんな約束をしていたけど……。
ボクの予想以上に前のめりな、その姿勢には、どこか違和感を覚える。
「竜司が、そんなにヤル気だとは思わなかったよ? 誰か見てもらいたい人がいるとか、なにか理由でもあるの?」
「ハァッ!? 『誰かに見てもらいたい!』とか、そんなんじゃね~し……」
ボクとしては、適当な言葉を返しただけなのだが、強く否定するところが怪しい――――――。
ただ、これ以上、追求しても本人が意固地になるだけだろうし、ボクと親しくなった時期のように、家族の問題を抱えている可能性もあるので、竜司のプライベートを詮索することはやめておいた。
「それならそれで、別に構わないけど……準備は慎重にしたほうが良いんじゃない? アカウントやチャンネル名は、じっくりと考えるべきだと思うよ」
そう返答すると、親友は「それもそうか……」と、つぶやく。
「まあ、竜司の家に着くなり、急にスマホの話しをされて驚いただけで、ボクも、アカウントを作る準備に入るのは賛成だよ! ずっと、二人で話してきたことだしね」
「おう! そう、こなっくちゃな、壮馬! それで、ナニから決めていこうか?」
「そうだな~。まずは、ボクらの動画を配信するときのユニット名とチャンネル名を決めるのがイイんじゃない? ユニット名に関しては、ちょっと考えてることがあるんだ!」
「おっ! それは、オレもだ! この前、壮馬と観たアニメを観てから思ってたんだけどさ……」
「そのアニメのタイトルって……」
「「『残響のテロル』!!」」
二人で声を揃えて言うと、お互いに顔を見合わせて、「ハハハ……」と、笑いあった。
ボクと竜司が一緒にあげたタイトルは、数年前に放送されていたTVアニメだった。
春休み明けに、二人で観たその作品は、「国内の核燃料再処理施設で、プルトニウムを盗み出した二人の少年が、国家に対してテロ行為を行うという、ボクらの心を激しく揺さぶる内容だった。
「これは、二十一世紀の『太陽を盗んだ男』だね!」
と言ったボクの言葉に、
「いや、その例えは、四十代以上のオッサンたちにしかわからんだろう……」
と、竜司がツッコミを入れてきたのを覚えている。
~黄瀬壮馬の回想・ふたたび~
小学五年生に進級したボクと竜司は、四年生のときと同様に、同じクラスになっていた。
春休み中になにかあったのか、新学期が始まってからも、しばらく、心ここにあらず、というか、ボクと一緒にいるときも、どこか上の空で話しをすることもあった竜司だけど、ゴールデン・ウィークが終わる頃には、なんとか、(彼にしては)元気のない状態から復活しつつあるようだった。
土日を含めて、奇跡的に五連休となったゴールデン・ウィークが明けた月曜日の放課後、習い事のないボクは、いつものように竜司の家に遊びに来ていた。
黒田家に到着して、玄関のドアを開けると、待ち構えていた友人が、
「ジャジャ~ン! 壮馬、オレも、いよいよスマホ・デビューだ!」
と言って、時代劇の役者が印籠(だったっけ?)をかざすように、ボクに見せつけてきた。
ジャジャ~ン、なんて効果音を口に出す人間を見るのは、久々な気がする。
大型連休が終わってしまったというのに、学校にいるときから、やけにソワソワして、テンションが高いな、と思っていたけど、そういうことだったのか。
(それならそうと、学校にいるときに話してくれれば良かったのに……)
そんなことを考えながら、半年前に発売されたiPhone7をドヤ顔で手にする友人に、ここはスマホ使いの先輩らしく、後輩に優しく返答しておくことにする。
「竜司も、ようやくボクに追いついたんだ……まぁ、スマホについてわからないコトがあったら、なんでも聞いてよ」
「おまえだって、自分のスマホは、使い始めて、まだ一ヶ月ちょっとだろう? 偉そうに、先輩ぶってるんじゃね~よ!」
お約束のように反応する竜司のツッコミを「ハイハイ」と、軽く受け流しながら、いつものようにボクらは、黒田家の二階にある竜司の部屋へと向かう。
「それで、今日はナニをするの?」
竜司の自室のソファーに腰をおろしたボクがたずねると、友人は、「フッフッフッ」と、奇っ怪な笑みを浮かべながら、怪しげな口調で語りだした。
「スマホも手に入ったことだし、我々も、ついに《YourTuber》デビューをするときが来たと思うんだよ、壮馬クン!」
「なんだよ、クン付けで呼んだりして気持ち悪いな」
「こういうのは、雰囲気が大事なんだよ! それより、去年から『二人ともスマホを持ったら、《YourTube》に共同アカウントを作ろう』って言ってたことが実現したんだ。早く、準備しようぜ」
たしかに、四年生の秋頃から、竜司とそんな約束をしていたけど……。
ボクの予想以上に前のめりな、その姿勢には、どこか違和感を覚える。
「竜司が、そんなにヤル気だとは思わなかったよ? 誰か見てもらいたい人がいるとか、なにか理由でもあるの?」
「ハァッ!? 『誰かに見てもらいたい!』とか、そんなんじゃね~し……」
ボクとしては、適当な言葉を返しただけなのだが、強く否定するところが怪しい――――――。
ただ、これ以上、追求しても本人が意固地になるだけだろうし、ボクと親しくなった時期のように、家族の問題を抱えている可能性もあるので、竜司のプライベートを詮索することはやめておいた。
「それならそれで、別に構わないけど……準備は慎重にしたほうが良いんじゃない? アカウントやチャンネル名は、じっくりと考えるべきだと思うよ」
そう返答すると、親友は「それもそうか……」と、つぶやく。
「まあ、竜司の家に着くなり、急にスマホの話しをされて驚いただけで、ボクも、アカウントを作る準備に入るのは賛成だよ! ずっと、二人で話してきたことだしね」
「おう! そう、こなっくちゃな、壮馬! それで、ナニから決めていこうか?」
「そうだな~。まずは、ボクらの動画を配信するときのユニット名とチャンネル名を決めるのがイイんじゃない? ユニット名に関しては、ちょっと考えてることがあるんだ!」
「おっ! それは、オレもだ! この前、壮馬と観たアニメを観てから思ってたんだけどさ……」
「そのアニメのタイトルって……」
「「『残響のテロル』!!」」
二人で声を揃えて言うと、お互いに顔を見合わせて、「ハハハ……」と、笑いあった。
ボクと竜司が一緒にあげたタイトルは、数年前に放送されていたTVアニメだった。
春休み明けに、二人で観たその作品は、「国内の核燃料再処理施設で、プルトニウムを盗み出した二人の少年が、国家に対してテロ行為を行うという、ボクらの心を激しく揺さぶる内容だった。
「これは、二十一世紀の『太陽を盗んだ男』だね!」
と言ったボクの言葉に、
「いや、その例えは、四十代以上のオッサンたちにしかわからんだろう……」
と、竜司がツッコミを入れてきたのを覚えている。
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