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第三部
第1章〜クラス内カーストでアウトサイダーのボクたちが動画投稿で人気配信者を目指す件〜⑦
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鳳花部長による『PRコンテスト(仮)』の説明会が終わった後、ボクと天竹さんは、文芸部が活動の拠点としている図書室に集合した。
紅野さんには、吹奏楽部の練習に集中してもらうことにしたうえで、天竹さんと話し合う目的は、言うまでもなく『PRコンテスト(仮)』における動画制作のための対策を考えることだ。
ゴジラやラドンに匹敵する強大な相手を敵(?)に回しているため、圧倒的な不利なボクたちは、一刻も早く自分たち独自の企画を練り上げ、多くのクラブに企画案のプレゼンをしはじめないといけない。
そのことはわかっているんだけど――――――。
「どんなテーマで動画を作れば良いでしょうか? 黄瀬くんは、なにか良いアイデアはありますか?」
という、天竹さんの問いかけに、ボクは、満足な回答を用意できないでいた。
「ゴメンね――――――いますぐ、『コレだ!』って自身を持って答えられるようなことはないんだ……」
ボクは、そう返答し、当事者の広報部の部員でありながら、頼りにならない自分の不甲斐なさを申し訳なく感じていたんだけど、ボクたちの後輩のせいで、罰ゲームというオマケまで付いてしまった企画に巻き込まれた彼女は、気にしないようすで、
「そうですか……それじゃ、一緒に考えさせてもらって良いですか?」
と、ありがたい言葉を返してくれたうえに、軽く微笑をたたえている。
「ボクじゃなくて、竜司や佐倉さんなら、面白いアイデアを持っていたかも知れないけど……」
彼女や紅野さんに迷惑が掛かっていることを心苦しく思いながら答えると、天竹さんは、さらに表情を柔らかくして、ボクを気づかう言葉をかけてくれる。
「そんな! 気にしないでください……むしろ、私は黄瀬くんと同じチームになれて、ホッとしていますから……」
その言葉で、少し緊張がほぐれる気がした。彼女は、さらに声を潜めながら語る。
「正直なところ、黄瀬くん以外の人と同じチームになっていたら、メンバーの変更を申し出ていたと思います。白草さんとは上手くやっていける自信がありませんし、一年生の宮野さんとは、ほとんどお話ししたこともありませんから……」
天竹さんの言葉に、ボクが苦笑して同意しながら、
「たしかに、そのとおりだね……そうなってたら、さすがに、ウチの部長が、なんらかの配慮をしてくれてたと思うよ……でも、竜司や佐倉さんなら、取り立てて問題はないんじゃない?」
と、たずねると、天竹さんは、
「もちろん、黒田くんとは同じクラスですし、佐倉さんとも個人的にお話しをする機会は増えたのですが……わたしの個人的な目的の遂行のためには、やっぱり、この組み合わせがベストだったと思います」
と、意味深な言葉を残しながら、安堵の表情を見せる。
そうか……。
天竹さんが、どんな想いを持っていたかはわからないけれど、彼女の言うとおり、今回のチーム分けは偶然しては、バランスの取れた組み合わせになったと思う。
自分たちのチーム以外でも、(もしかすると罰ゲームの発案は出なかったかも知れないけど)白草さんと佐倉さんが組むことになっていたら、どんな争いが起きていたか、わからないし、白草さんが竜司と同じチームになった場合、残るのは佐倉さんと宮野さんの一年生チームとなり、上級生と下級生のバランス構成が悪くなる。
天竹さんの言葉にうなずいて、ボクは賛同の意を示した。
「それで言えば、ボクも天竹さん達と同じメンバーで良かったかも……竜司と同じチームだと男子同士のやり方で、女子向けの作品を作れなくなりそうだし、ボクも新入部員候補の宮野さんとは、コミュニケーションの取り方から考えないといけない……それに、白草さんや佐倉さんと同じチームになったとしたら……」
ここで、一度、言葉を区切ったあと、
「とてもじゃないけど、自分の手には負えないよ……」
大げさなジェスチャーで、ゲンナリした表情を作る。
すると、天竹さんも、クスクスと声を上げて、ボクの気持ちに同意してくれた。
「たしかに……白草さんや佐倉さんを相手に出来るのは、黒田くんくらいかも知れないね」
そんな彼女の言葉を聞いていたのか、天竹さんと活動をともにする文芸部の部員さんたちが、ボクらの会話に加わってきた。
「なんだか、楽しそうだね葵!」
「なになに? また、黄瀬くんが、文芸部の動画を作ってくれるの?」
「部長、なにか新しいことが、はじまるんですか?」
「面白そうなことなら、私たちもやってみたいです!」
ボクたちと同じ二年生の石沢さんに、今村さん。それに、新入部員である一年生の高瀬さんと井戸川さんが、次々に声をかけてくる。
「もう……いまは、黄瀬くんミーティング中だから、みんなは、活動に集中して!」
図書室での会話のため、ボリュームを落としながらも、二年生にして部長を務める天竹さんは、部員のみんなに注意する。
ただ、白草さんや佐倉さんを相手にしなければならないボクたちにとって、いまは、少しでも協力者がほしいところだ。
そこで、ボクは、思い切って天竹さんに提案してみる。
「天竹さん、もし、部の活動に差し支えなければ、文芸部のみんなにも協力してもらえないかな?」
その一言に、部長さんと他のメンバーは、それぞれ異なる理由で目を見開いた。
彼女たちに現状を説明した上で、白草さんや竜司たち、他のチームの動向を探っていこうと、ボクは考えた。
紅野さんには、吹奏楽部の練習に集中してもらうことにしたうえで、天竹さんと話し合う目的は、言うまでもなく『PRコンテスト(仮)』における動画制作のための対策を考えることだ。
ゴジラやラドンに匹敵する強大な相手を敵(?)に回しているため、圧倒的な不利なボクたちは、一刻も早く自分たち独自の企画を練り上げ、多くのクラブに企画案のプレゼンをしはじめないといけない。
そのことはわかっているんだけど――――――。
「どんなテーマで動画を作れば良いでしょうか? 黄瀬くんは、なにか良いアイデアはありますか?」
という、天竹さんの問いかけに、ボクは、満足な回答を用意できないでいた。
「ゴメンね――――――いますぐ、『コレだ!』って自身を持って答えられるようなことはないんだ……」
ボクは、そう返答し、当事者の広報部の部員でありながら、頼りにならない自分の不甲斐なさを申し訳なく感じていたんだけど、ボクたちの後輩のせいで、罰ゲームというオマケまで付いてしまった企画に巻き込まれた彼女は、気にしないようすで、
「そうですか……それじゃ、一緒に考えさせてもらって良いですか?」
と、ありがたい言葉を返してくれたうえに、軽く微笑をたたえている。
「ボクじゃなくて、竜司や佐倉さんなら、面白いアイデアを持っていたかも知れないけど……」
彼女や紅野さんに迷惑が掛かっていることを心苦しく思いながら答えると、天竹さんは、さらに表情を柔らかくして、ボクを気づかう言葉をかけてくれる。
「そんな! 気にしないでください……むしろ、私は黄瀬くんと同じチームになれて、ホッとしていますから……」
その言葉で、少し緊張がほぐれる気がした。彼女は、さらに声を潜めながら語る。
「正直なところ、黄瀬くん以外の人と同じチームになっていたら、メンバーの変更を申し出ていたと思います。白草さんとは上手くやっていける自信がありませんし、一年生の宮野さんとは、ほとんどお話ししたこともありませんから……」
天竹さんの言葉に、ボクが苦笑して同意しながら、
「たしかに、そのとおりだね……そうなってたら、さすがに、ウチの部長が、なんらかの配慮をしてくれてたと思うよ……でも、竜司や佐倉さんなら、取り立てて問題はないんじゃない?」
と、たずねると、天竹さんは、
「もちろん、黒田くんとは同じクラスですし、佐倉さんとも個人的にお話しをする機会は増えたのですが……わたしの個人的な目的の遂行のためには、やっぱり、この組み合わせがベストだったと思います」
と、意味深な言葉を残しながら、安堵の表情を見せる。
そうか……。
天竹さんが、どんな想いを持っていたかはわからないけれど、彼女の言うとおり、今回のチーム分けは偶然しては、バランスの取れた組み合わせになったと思う。
自分たちのチーム以外でも、(もしかすると罰ゲームの発案は出なかったかも知れないけど)白草さんと佐倉さんが組むことになっていたら、どんな争いが起きていたか、わからないし、白草さんが竜司と同じチームになった場合、残るのは佐倉さんと宮野さんの一年生チームとなり、上級生と下級生のバランス構成が悪くなる。
天竹さんの言葉にうなずいて、ボクは賛同の意を示した。
「それで言えば、ボクも天竹さん達と同じメンバーで良かったかも……竜司と同じチームだと男子同士のやり方で、女子向けの作品を作れなくなりそうだし、ボクも新入部員候補の宮野さんとは、コミュニケーションの取り方から考えないといけない……それに、白草さんや佐倉さんと同じチームになったとしたら……」
ここで、一度、言葉を区切ったあと、
「とてもじゃないけど、自分の手には負えないよ……」
大げさなジェスチャーで、ゲンナリした表情を作る。
すると、天竹さんも、クスクスと声を上げて、ボクの気持ちに同意してくれた。
「たしかに……白草さんや佐倉さんを相手に出来るのは、黒田くんくらいかも知れないね」
そんな彼女の言葉を聞いていたのか、天竹さんと活動をともにする文芸部の部員さんたちが、ボクらの会話に加わってきた。
「なんだか、楽しそうだね葵!」
「なになに? また、黄瀬くんが、文芸部の動画を作ってくれるの?」
「部長、なにか新しいことが、はじまるんですか?」
「面白そうなことなら、私たちもやってみたいです!」
ボクたちと同じ二年生の石沢さんに、今村さん。それに、新入部員である一年生の高瀬さんと井戸川さんが、次々に声をかけてくる。
「もう……いまは、黄瀬くんミーティング中だから、みんなは、活動に集中して!」
図書室での会話のため、ボリュームを落としながらも、二年生にして部長を務める天竹さんは、部員のみんなに注意する。
ただ、白草さんや佐倉さんを相手にしなければならないボクたちにとって、いまは、少しでも協力者がほしいところだ。
そこで、ボクは、思い切って天竹さんに提案してみる。
「天竹さん、もし、部の活動に差し支えなければ、文芸部のみんなにも協力してもらえないかな?」
その一言に、部長さんと他のメンバーは、それぞれ異なる理由で目を見開いた。
彼女たちに現状を説明した上で、白草さんや竜司たち、他のチームの動向を探っていこうと、ボクは考えた。
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