初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

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第三部

第1章〜クラス内カーストでアウトサイダーのボクたちが動画投稿で人気配信者を目指す件〜⑥

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 ~黄瀬壮馬きせそうまの見解~

 ボクは、今回の企画を広報部内で行う、新入生の実力を見極めるための広報素材の制作練習だと思っていたんだけど――――――。

 いつの間にか、は、生徒会まで巻き込んだ大掛かりなイベントになろうとしている。

 しかも、入部したばかりの佐倉さんの発案により、生徒会に提出する動画の投票数が最下位のチームには、「鼻うがい」のやり方を解説する罰ゲームを課されることになってしまった。

 もちろん、ボク自身も、そういう事態になることは避けたいところだけど、なにより、紅野こうのさんや天竹あまたけさんのように控えめな性格の女子生徒の、姿を撮影させるわけにはいかない。

(まったく、こんなことは広報部の竜児、佐倉さん、白草さんの三人で勝手にやっててくれよ……)

 正確に言うと、白草さんは、広報部の部員ではないし、「かわいいヨツバちゃん」として、同世代に圧倒的な人気を誇るカリスマ女子を「お笑い担当」にくくってしまうのは、本人や本人のフォロワーから、異論が噴出するだろうけれど……。
 ボクにとって彼女は、幼なじみに執着してさまざまな厄介事を招く、控えめに言っても、ただの「面白いオンナ」(無論、褒め言葉ではない)、本音を言えば、竜児の周辺に居るボクたちにとっての「トラブルメーカー」に近い存在だと言える。

 さらに、その竜児をめぐって、佐倉さんまで不毛な争いに参入してくるという事態に至っては、二十世紀初頭のバルカン半島や、今世紀のシナイ半島における国際情勢にも匹敵する混迷ぶりだ。

 部長と寿ことぶき先輩『PRコンテスト(仮)』の説明会が終了したあと、そんなことを考えながら、頭を抱えていると、この問題における当事者筆頭が声を掛けてきた。

「壮馬……なんか、エラく大げさなことになってきたな……」

 佐倉さんのことだから、竜児の目の前で、白草さん(あるいは、そこに紅野さんも含まれているのかも知れない)に失態をさらさせようと、今回の罰ゲームを提案したのであろうことは容易に想像できる。

(まったく……誰のせいで、こんなことになったと思ってるんだよ!)
 
 ボクとしては、神妙な面持ちで話しかけてきた友人に、そう反論したい気持ちだったけど、自覚のない相手に言っても意味を成さないので、グッと言葉を呑み込んだ。

 その代わりに、

「そうだね……ボクや紅野さんに天竹さん、それに、まだ仮入部段階の宮野さんにとっては、とんだトバッチリだよ……」

と、被害者の名前を挙げるにとどめておく。
 すると、竜児は、慎重な口ぶりで、ボクにこんなことを頼んできた。

「だな……結果的に、広報部の部外者も巻き込むことになってしまったし……チームも別れることになってしまったし、オレにできることは多くないかも知れし、自分がこんなことを言えた義理じゃないのはわかっているが……紅野と天竹のことを十分にケアしてあげてくれないか?」

 竜児なりに、紅野さんや天竹さんが、白草さんたちの不毛な争いに取り込まれようとしていることを危惧しているのだろう。
 そこに、当事者としての自覚があるかはさておき、その殊勝な心がけには、敬意を払うことにしよう。
 そんな訳で、ボクは友人への返答とともに、こんな提案をしてみる。

「それは、竜児に言われなくても、わかってるよ……ところで、ボクらの動向が気になるなら、いっそ、チームをまたいで連絡を取り合う仕組みを作っておかない? 宮野さんのチームにしても、一緒に活動する白草さんは広報部の正式なメンバーではないし、部長や生徒会の方針を周知するためにも、情報交換をする連絡会を作っておいた方が良いと思うんだ。もちろん、お互いのチームの機密情報は、漏らさない方針でね」

 そう持ちかけてみると、親友は、感心したように、ボクの案に賛同してくれた。

「うん、たしかに……良いアイデアだな! さすが、壮馬だ!」 

「誉めてくれても、ナニも出ないけどね……それじゃ、竜児は、宮野さんと白草さんに、連絡会のことを提案してくれない? ボクは、鳳花ほうか部長に許可をもらっておくから」

「オッケー! じゃあ、二人に話してくるわ!」

 そう言って、竜児は、早くも作戦会議を行おうとしている白草さんたちの元に去って行った。

 さて――――――。

 広報部全体のと競合相手となるチームの(竜児には、ああ言ったけど、もちろん可能な限りの敵情を収集するためのものでもある)を目的とした連絡会の設置には、メドが立ったとしても、考えなければいけないことは、山積みだ。

 おそらく、相手の二チームは、企画力に優れた白草さん、佐倉さんが、それぞれ中心となって、アイデアを出してくるハズだ。

 ボクは、動画の編集については、多少の自信を持っているので、素材となる映像さえあれば、ライバルとなったふたりに負けないクオリティのコンテンツを提出してやろう、と気合いが入るところだけど――――――。
 
 残念ながら、ボク自身は、彼女たちに対抗できるような宣伝・広報の企画を持ち合わせていない。

 吹奏楽部の活動で多忙な紅野さんについては、多くの時間を割いてもらうことは難しそうなので、必然的に天竹さんと話し合う機会が増えそうだけど、はたして、自分たちにどこまでのことができるだろう?

 にとって、同世代のインフルエンサー女子と、中学校在籍時には《放送部のカナリア》の愛称で全校生徒を虜にした下級生というふたりは、あまりにも強大な相手だ。

 自分たちの置かれた立場が、ゴジラ、ラドン、モスラという三大怪獣のなかでも、もっとも立場の弱そうなモスラ的立ち位置であることに心の底から不安を覚えつつ、ボクは、今後の対応策を練るより他に術はなかった。
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