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第四部
第2章〜先ずその愛する所を奪わば、即ち聴かん〜⑨
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同級生の佐藤テルと上級生の大山キャプテンへの取材が終わると、オレは、緑川武志の腕を掴み、
「今日は、時間を取ってもらってあざっした! 次の取材先に行かせてもらいますね」
と、あいさつもそこそこに、次の訪問先である吹奏楽部に向かう。今度は、クラブの幹部が女子生徒中心なので、少し安心である。
「なんだよ、黒田……せっかく野球部のメンバーと話すことが出来たのに……広報部のクラブ訪問って、忙しないんだな……それより、僕の『ツカミ』と『イジリ』は、どうだった? 自分では、わりと上手くいったんじゃないかと思ってるんだけど、監察官としての意見を聞かせてくれないか?」
最初は、不満を述べるような口調だったが、中江先輩との会話を思い出したのか、ちょっとドヤ顔なのが腹立つ。
実は、シロの提案で、オレは緑川をクラブ訪問に同伴すると同時に、このクラスメートが、超恋愛学の教えを忠実に実行できているか、相手の女子の反応はどんなものだったかを見極める監査役を任されていた。
その監察官として、初回のクラブ訪問での言動に対して、見解を述べる。
「僕の『ツカミ』と『イジリ』は、どうだったか、だって? アホか! 効果ありすぎだ。少しは、自重しろ」
オレが、初回から結果を出した緑川に対して、キツい口調になるのには理由がある。
緑川に対して、興味津々といった態度を見せていた中江先輩は、実のところ、野球部キャプテンの大山先輩と交際をしている仲なのだ。
このことは、野球部内において公然の秘密となっているらしいので、オレの情報網や生徒会のデータベースにも非公式に記録されている。その情報が、新しく更新されていないことから、当然、二人の交際は順調なのだろう。
さっきの中江先輩と緑川の会話は、その関係に余計な波紋を起こしかねない。
そして、これもまた、シロが言っていたとおりの流れになっているのが恐ろしい。
「この『ツカミ』と『イジリ』は、彼氏持ちの女子にも有効だから、使い時には気をつけてね。あと、ターゲットになっている女子との会話には興味の無い振りをして、他のヒトとしばらく談笑するのは、男女を分け隔てなく話すタイプの女子とか、マネージャーを務めている女子には特に効果的だよ。女子は、男子がワイワイと話している姿を観察したり、輪にい入りたいって願望があるからね。『ブ◯ーロック』『ハ◯キュー』『東◯リベンジャーズ』……最近、女子に人気のマンガって、男の子たちが、ワチャワチャしながら活躍する作品が多いでしょ?」
シロは、『ツカミ』と『イジリ』についての講義しながら、こんな解説を行った。
今度は、オレたちの世代にも馴染みのあるマンガ作品のタイトルが並んで何よりではあるが、その注意喚起までもが、初回の事例からズバリと当てはまり、オレは、背中に冷たいモノが流れるのを感じる。
次に訪れる吹奏楽部の上級生たちは、オレにとって、クラスメート以上に顔なじみ感の強い相手なので、正直なところ、気の進まないところがあるのだが……。
監察官という役目も、オレに課せられた仕事なので、淡々と職務をこなすことにする。
「次は、吹奏楽部だったっけ? 部長さんたちは、どんな人なんだ?」
吹奏楽部が練習を行っている音楽室に向かう間、緑川がたずねてくる。
「なんだ、知らないのか? あそこには、誰もが知ってる有名人が居るぞ。今回、ターゲットにするのは、その有名人の方が相応しいだろうな。あの先輩相手に、例のルーティーンを成功させたら、自信がつくんじゃないか?」
クラスメートの質問にはストレートに答えず、目的地を目指す。音楽室に到着し、防音が施された少し重い扉を開けると、先ほどの野球部と同じく、吹奏楽部の幹部がオレたちを待ってくれていた。
「お待たせしました。今日も、お時間とっていただき、ありがとうございます」
顔なじみの二人とは言え、体育会系とは違うので、心持ち丁寧なあいさつを心がける。
「こんにちは、黒田くん。広報部のおかげで、今年もたくさん新入部員が入ってくれたよ」
笑顔で、近況報告をしてくれるのは、部長の早見紗織先輩。おっとりとした性格ながらも、50人近い人数の大所帯のクラブをまとめる肝が座った先輩だ。
「そうそう! 元気な一年生がたくさん来てくれたからね~。先月のクラブ紹介も盛り上がったし、黒田くん様々だよ!」
明るく返答するのは、言わずと知れた(?)吹奏楽部の副部長にして、生徒会長を務める寿美奈子先輩。相変わらず、快活という言葉がピッタリと当てはまるコミュニケーション強者だ。
「いや、吹奏楽部に関しては、壮馬が作成したプロモーション・ビデオの影響が大きいと思うので、オレじゃなく、アイツを誉めてやってください」
親友の功績をたたえつつ、にこやかな表情で応答すると、副部長は、
「黒田くんは、相変わらず謙虚だな~。ところで、お隣の男子は、広報部の新入部員なのかい? 見たところ、二年生みたいだけど……」
と、緑川の存在に気づき、クラスメートに話しかけようとする。
さあ、ここからは、ふたたび、緑川武志のターンだ。
「今日は、時間を取ってもらってあざっした! 次の取材先に行かせてもらいますね」
と、あいさつもそこそこに、次の訪問先である吹奏楽部に向かう。今度は、クラブの幹部が女子生徒中心なので、少し安心である。
「なんだよ、黒田……せっかく野球部のメンバーと話すことが出来たのに……広報部のクラブ訪問って、忙しないんだな……それより、僕の『ツカミ』と『イジリ』は、どうだった? 自分では、わりと上手くいったんじゃないかと思ってるんだけど、監察官としての意見を聞かせてくれないか?」
最初は、不満を述べるような口調だったが、中江先輩との会話を思い出したのか、ちょっとドヤ顔なのが腹立つ。
実は、シロの提案で、オレは緑川をクラブ訪問に同伴すると同時に、このクラスメートが、超恋愛学の教えを忠実に実行できているか、相手の女子の反応はどんなものだったかを見極める監査役を任されていた。
その監察官として、初回のクラブ訪問での言動に対して、見解を述べる。
「僕の『ツカミ』と『イジリ』は、どうだったか、だって? アホか! 効果ありすぎだ。少しは、自重しろ」
オレが、初回から結果を出した緑川に対して、キツい口調になるのには理由がある。
緑川に対して、興味津々といった態度を見せていた中江先輩は、実のところ、野球部キャプテンの大山先輩と交際をしている仲なのだ。
このことは、野球部内において公然の秘密となっているらしいので、オレの情報網や生徒会のデータベースにも非公式に記録されている。その情報が、新しく更新されていないことから、当然、二人の交際は順調なのだろう。
さっきの中江先輩と緑川の会話は、その関係に余計な波紋を起こしかねない。
そして、これもまた、シロが言っていたとおりの流れになっているのが恐ろしい。
「この『ツカミ』と『イジリ』は、彼氏持ちの女子にも有効だから、使い時には気をつけてね。あと、ターゲットになっている女子との会話には興味の無い振りをして、他のヒトとしばらく談笑するのは、男女を分け隔てなく話すタイプの女子とか、マネージャーを務めている女子には特に効果的だよ。女子は、男子がワイワイと話している姿を観察したり、輪にい入りたいって願望があるからね。『ブ◯ーロック』『ハ◯キュー』『東◯リベンジャーズ』……最近、女子に人気のマンガって、男の子たちが、ワチャワチャしながら活躍する作品が多いでしょ?」
シロは、『ツカミ』と『イジリ』についての講義しながら、こんな解説を行った。
今度は、オレたちの世代にも馴染みのあるマンガ作品のタイトルが並んで何よりではあるが、その注意喚起までもが、初回の事例からズバリと当てはまり、オレは、背中に冷たいモノが流れるのを感じる。
次に訪れる吹奏楽部の上級生たちは、オレにとって、クラスメート以上に顔なじみ感の強い相手なので、正直なところ、気の進まないところがあるのだが……。
監察官という役目も、オレに課せられた仕事なので、淡々と職務をこなすことにする。
「次は、吹奏楽部だったっけ? 部長さんたちは、どんな人なんだ?」
吹奏楽部が練習を行っている音楽室に向かう間、緑川がたずねてくる。
「なんだ、知らないのか? あそこには、誰もが知ってる有名人が居るぞ。今回、ターゲットにするのは、その有名人の方が相応しいだろうな。あの先輩相手に、例のルーティーンを成功させたら、自信がつくんじゃないか?」
クラスメートの質問にはストレートに答えず、目的地を目指す。音楽室に到着し、防音が施された少し重い扉を開けると、先ほどの野球部と同じく、吹奏楽部の幹部がオレたちを待ってくれていた。
「お待たせしました。今日も、お時間とっていただき、ありがとうございます」
顔なじみの二人とは言え、体育会系とは違うので、心持ち丁寧なあいさつを心がける。
「こんにちは、黒田くん。広報部のおかげで、今年もたくさん新入部員が入ってくれたよ」
笑顔で、近況報告をしてくれるのは、部長の早見紗織先輩。おっとりとした性格ながらも、50人近い人数の大所帯のクラブをまとめる肝が座った先輩だ。
「そうそう! 元気な一年生がたくさん来てくれたからね~。先月のクラブ紹介も盛り上がったし、黒田くん様々だよ!」
明るく返答するのは、言わずと知れた(?)吹奏楽部の副部長にして、生徒会長を務める寿美奈子先輩。相変わらず、快活という言葉がピッタリと当てはまるコミュニケーション強者だ。
「いや、吹奏楽部に関しては、壮馬が作成したプロモーション・ビデオの影響が大きいと思うので、オレじゃなく、アイツを誉めてやってください」
親友の功績をたたえつつ、にこやかな表情で応答すると、副部長は、
「黒田くんは、相変わらず謙虚だな~。ところで、お隣の男子は、広報部の新入部員なのかい? 見たところ、二年生みたいだけど……」
と、緑川の存在に気づき、クラスメートに話しかけようとする。
さあ、ここからは、ふたたび、緑川武志のターンだ。
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