初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

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第四部

第3章〜最も長く続く愛は、報われない愛である〜⑤

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 緑川武志みどりかわたけしの登校復帰計画を軌道に乗せることができ、広報部でもあたらしい活動にむけて、密かな計画が動き出したことで、オレは、久々に清々しい気持ちで朝を迎えることができた。

 登校時、これまた久しぶりに通学路で合流した壮馬にも、こうたずねられた。

「竜児、今日は、表情が明るいじゃん? なにか良いことでもあったの?」

「あぁ、クラスの仕事はカタが付きそうだし、昨日、部室に寄ったら、モモカが面白そうな企画を出してきたんだ。放課後にでも、新企画について壮馬に話そうと思ってたところなんだが、今日は時間あるか?」

「う~ん、今日は校内の映像素材を撮影して回りたいから、また今度にしてくれない?」

 桃華と一緒に、VTuberのアイデアについて、すぐに、壮馬に話しておきたかったのだが、自分で抱えている業務があるなら、仕方がない。

「そうか、わかった……」

 そう返答したオレは、広報部の活動に本腰を入れるため、今回のアイデアの発案者である後輩や事実上の決裁権を握っている部長との企画会議を進める計画を練りはじめた。

 教室について、自分の席に着き、始業時間まで、所属するクラブの今後の活動方針を頭の中でまとめておこう……と、考えていると、後ろの席から、

「黒田くん、ちょっと、良いかな?」

と、声をかけてくる女子生徒の姿があった。

「ん? どうしたんだ紅野こうの?」

 クラス委員のパートナーにたずね返すと、彼女は、少しはにかみながら、こんな提案をしてきた。

「うん……黒田くんは、私がやなきゃいけないことも色々とがんばってくれたみたいだから……お礼も兼ねて、お昼休みに少し話せない?」

 オレの前の席に陣取る壮馬は、なにやら、ニヤニヤとした笑みを見せている。そんな悪友に、軽く肩パンチをお見舞いしたあと、軽い笑顔で返答する。

「わかった! 昼休みは空けておくことにするよ」
 
 いつもなら、オレは学食に行き、紅野は教室内で親友の天竹葵あまたけあおいと、お弁当を食べているが、今日のランチは、どうやら、そのルーティーンから外れそうである。
 紅野への返答を終えると、前の席に座る親友は、肩をすくめながら言葉を発する。

「うらやましいな~、竜児。昼休みは、精一杯、楽しんで来てよ」

 そう言ったあと、壮馬は、オレにしか聞こえないボリュームの小声でささやく。

「あの教卓の前の席から、こっちを監視している女子が怖くなければ、だけど……」

 友人が、こっそりと指差す先には、まるで、般若の面を被ったような表情でコチラを凝視するクラスメートの姿があった。

 ◆

 朝の授業が始まる前、すさまじい形相でオレたちの方に視線を向けていたようにも思えたシロの意図がわからないまま昼休みを迎えたオレは、約束どおり、紅野アザミと教室をあとにした。

 シロの視線の向かっていた先が、オレと壮馬の勘違いでなければ、教室を出るときにウザ絡みをしてくるんじゃないかと身構えていたのだが、こちらの心配をよそに、幼なじみは、転校して来て以来、仲良く話しているクラスメートの野中摩耶のなかまや石川奈々子いしかわななこと一緒に談笑しながら、ランチを始めるようだ。

 そんなシロのようすに、少し胸をなでおろしながら、昼食に誘ってくれた紅野とともに、食堂で昼食を済ませる。
 その後、「落ち着いた場所で話したい」という紅野の提案で、生徒たちでごった返す騒がしい学食をあとにしたオレたちは、中庭におかれたベンチに腰掛けた。

 5月中旬の陽射しは、心地よく校舎やベンチを照らしている。

「今日は、時間を取ってくれてありがとう。あのあと、なかなか落ち着いてお話しできる時間がなかったから……」

 そう切り出した紅野に、オレは笑顔で応じる。、というのは、彼女と一緒に緑川家に訪問したときのことを言っているのだろう。

「紅野は、部活も大変そうだもんな。まあ、なんとか、ユリちゃん先生の依頼を達成することができたみたいで良かったよ」

 オレの一言に、紅野は、穏やかな笑顔でうなずきながら、

「緑川くんが、学校に来れるようになったのも、黒田くんのおかげだと思うし、私は、今回なにもできなかったから……」

と言ったあと、

「お礼……にはならないかも知れないけど……良かったら、食べてくれないかな?」
 
そう告げて、お弁当を包んでいたいランチクロスから、焼き菓子を取り出した。
 少し照れくさそうな表情で手渡されたセロファンに個包装されたそれは、オレの好物のモノでもあった。

「あっ、フィナンシェかな? オレ、これが大好きなんだよ! 食べて良いのか?」

 オレが喜びの声を上げると、彼女も表情をほころばせる。

「うん! ぜひ食べてみて」

 という紅野の一言に、遠慮なく、好物の焼き菓子をいただくことにする。
 セロファンを剥がし、黄金こがね色の生地にかじりつくと、ほんのりとアーモンドの香りがただよい、バターの芳醇な風味と甘味が口の中に広がった。

「うん、おいしい!」

 口の中の生地がなくなったあと、感想を述べると、少し緊張した面持ちでこちらの表情を眺めていた彼女が、ホッとしたような表情で、つぶやくように言葉を吐いた。

「良かった~。黒田くんのお口に合わなかったら、どうしようかと思ってたから……」

 そう言って、笑顔を見せる彼女に、

「いや、甘さもちょうど、オレの好みだ。わざわざ、作ってくれたのか? ありがとう」

と、お礼の言葉を述べると、紅野はかすかに首を横に振り、またも、照れくさそうにな面持ちで語る。

「ううん……私の方こそゴメンね。お昼に付き合ってもらって……教室で、みんなが居るときに手渡すのは、ちょっと、恥ずかしかったから……」

 その健気な表情に、思わず見とれそうになっていると――――――。

「お取り込み中のところ、申し訳ないんだが……ちょっと、相談に乗ってほしいことがあるんだ」

 と、声をかけてくる生徒の姿があった。
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