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第3幕・Empowerment(エンパワーメント)の章~⑨~
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7月25日(火)
以前にも書いたと思うけど……僕が、横田慎太郎という選手の名前を最初に意識したのは、2016年シーズン開幕前のオープン戦の頃だった。
和田監督が退任し、金本監督新体制となったチームを、僕は期待と不安が入り交じる半信半疑の想いで見ていた。
子供の頃、最初に僕のヒーローになった金本知憲が監督に就任し、『超変革』というスローガンを掲げて高齢化するチームの変革を目指したことには期待が持てた一方で、彼がコーチや監督しての指導歴がないまま、一軍監督に就任したことには不安を感じていた。
それでも、『超変革』のスローガンのとおり、オープン戦で4割近い打率を残して存在をアピールしていた高卒三年目の外野手を開幕戦でスターティングメンバーに起用した金本監督の積極的な若手起用に、新生を目指すチームへの希望が膨らんでいたのは確かだ。
1番打者として、そのシーズンのセ・リーグ新人王にも輝いた髙山俊とともに、若手野手の期待の星であったその選手が、一軍の登録を抹消されたあとも、僕をはじめ、多くのタイガースファンから、その動向を気に掛けられていたのは、そんな背景があるからだと思う。
そんな横田さんの人となりを僕たち一般のファンが知ることになったのは、彼の著作『奇跡のバックホーム』と、同著を元にしたテレビ番組、そして、阪神タイガースOB会の現会長である川藤幸三さんと始めたYou Tubeチャンネルの『川藤部屋』の動画を通じてではないだろうか?
彼の現役引退までと闘病中のエピソードが綴られた『奇跡のバックホーム』では、まったく触れられていないため、どのような経緯でユーチューバーに転身しようとしたのかはわからない(しかも、相方は、あの川藤さんである)が……。
プロデューサーとして、番組制作に関わるその姿からは、彼の誠実で生真面目な性格が伝わってきて、現役時代に先輩の選手や指導者たちから可愛がられていた理由が良くわかる。
そんな誰からも愛され、慕われた人が、この世を去った、という事実を僕は、どう受け止めて良いのかわからなかった。
――――――というのも、就職活動に挫折し、卒業まで残り数ヶ月という時期になっても卒業後の進路が決まっていなかった僕が、学生生活最後の気力を振り絞って、活動を再開させ、なんとか、いまのICTサポーターの職業に就くことが出来たのは、彼の書いた『奇跡のバックホーム』を読み、
「自分も、いま出来ることをがんばらないと……」
と、気持ちを奮い立たせることができたからだ。
ヒサシやユタカ、ユタカの交際相手であるリノちゃん、そして、仲の良かった江草貴子のように、就職勝ち組である学生時代の友人たちとは比べるべくもないけれど……。
それでも、感染症のまん延を口実に、みんなが必死になっている時期でも就職活動に本腰を入れることができなかった自分が、曲りなりにも(と言うと、自分自身の職業を卑下するようで良くないが……)、社会人として活動できているのは、あの時、横田さんの『奇跡のバックホーム』と出会ったからだった。
心が引きこもりかけていた僕に、立ち上がろうとするキッカケをくれたのは、周りの友人や家族など、自分を支え、応援してくれる人たちがいることを気づかせてくれた、この本のおかげだった。
自分の身体に起こる不調に対する不安や、人生を賭けて打ち込んできた野球ができなくなる葛藤と向き合いながら病気と戦った姿、そして、ボールが二重に見えるというハンデを負いながら、引退試合で守備につき、ヒットで本塁を目指したランナーを捕殺してみせた「奇跡のバックホーム」のエピソードから勇気をもらったのは、当然のことながら、僕だけではないと思う。
その当事者である横田さん本人が亡くなったという。
いまの自分があるのは、あなたのおかげだ――――――。
横田さんには、いつか、そのことを伝えたいと思っていたのだけど、僕のそんな想いは、叶わなくなってしまった。
彼の訃報に接して以来、僕は、その出来事に、どう向き合えばいいのか答えを出せないでいた。
一軍の試合を離れてからは、著作や動画を通じてしか、彼を知らない僕でもこれだけのショックを受けているのだから、ご家族や生前の彼と親しかった関係者が感じる衝撃は、大きいだろう。
そんな、横田慎太郎・元選手の追悼試合が行われることになった。
夏休みに入っても仕事のある学校での業務を終え、急いで帰宅した僕は、CS放送で試合前に行われた追悼セレモニーを食い入るように見つめる。
横田さんが、現役時代の最後に登場曲として選んでいた、ゆずの『栄光の架橋』が流れると涙腺に熱いものがこみ上げてくるのに気づいた。
試合は、現役時代の横田さんの姿を知る大山悠輔が、逆転ホームランと追加点のタイムリーを放ち、プロとして、同期入団の岩貞祐太・加治屋蓮・岩崎優の継投で逃げ切り勝ちを収め、カープと同率で首位の座を守った。
そして、試合のスコアは、奇しくも横田さんが、奇跡のバックホームを投じた二軍の試合と同じ4対2で阪神の勝利だった。
【本日の試合結果】
阪神 対 巨人 12回戦 阪神 4ー2 巨人
横田慎太郎さんの追悼試合となった一戦は、阪神の逆転勝利。
佐藤輝明のタイムリーで先制したあと、ジャイアンツに逆転を許したものの、6回裏に大山悠輔の2ランホームランで再逆転。
7回以降は、プロ選手として、横田氏と同期入団の岩貞祐太・加治屋蓮・岩崎優の継投で逃げ切り勝ち。
この日、本拠地マツダスタジアムでスワローズに快勝したカープと同率首位の座を守った。
◎7月25日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:46勝34敗 3引き分け 貯金12
順位:同率首位
以前にも書いたと思うけど……僕が、横田慎太郎という選手の名前を最初に意識したのは、2016年シーズン開幕前のオープン戦の頃だった。
和田監督が退任し、金本監督新体制となったチームを、僕は期待と不安が入り交じる半信半疑の想いで見ていた。
子供の頃、最初に僕のヒーローになった金本知憲が監督に就任し、『超変革』というスローガンを掲げて高齢化するチームの変革を目指したことには期待が持てた一方で、彼がコーチや監督しての指導歴がないまま、一軍監督に就任したことには不安を感じていた。
それでも、『超変革』のスローガンのとおり、オープン戦で4割近い打率を残して存在をアピールしていた高卒三年目の外野手を開幕戦でスターティングメンバーに起用した金本監督の積極的な若手起用に、新生を目指すチームへの希望が膨らんでいたのは確かだ。
1番打者として、そのシーズンのセ・リーグ新人王にも輝いた髙山俊とともに、若手野手の期待の星であったその選手が、一軍の登録を抹消されたあとも、僕をはじめ、多くのタイガースファンから、その動向を気に掛けられていたのは、そんな背景があるからだと思う。
そんな横田さんの人となりを僕たち一般のファンが知ることになったのは、彼の著作『奇跡のバックホーム』と、同著を元にしたテレビ番組、そして、阪神タイガースOB会の現会長である川藤幸三さんと始めたYou Tubeチャンネルの『川藤部屋』の動画を通じてではないだろうか?
彼の現役引退までと闘病中のエピソードが綴られた『奇跡のバックホーム』では、まったく触れられていないため、どのような経緯でユーチューバーに転身しようとしたのかはわからない(しかも、相方は、あの川藤さんである)が……。
プロデューサーとして、番組制作に関わるその姿からは、彼の誠実で生真面目な性格が伝わってきて、現役時代に先輩の選手や指導者たちから可愛がられていた理由が良くわかる。
そんな誰からも愛され、慕われた人が、この世を去った、という事実を僕は、どう受け止めて良いのかわからなかった。
――――――というのも、就職活動に挫折し、卒業まで残り数ヶ月という時期になっても卒業後の進路が決まっていなかった僕が、学生生活最後の気力を振り絞って、活動を再開させ、なんとか、いまのICTサポーターの職業に就くことが出来たのは、彼の書いた『奇跡のバックホーム』を読み、
「自分も、いま出来ることをがんばらないと……」
と、気持ちを奮い立たせることができたからだ。
ヒサシやユタカ、ユタカの交際相手であるリノちゃん、そして、仲の良かった江草貴子のように、就職勝ち組である学生時代の友人たちとは比べるべくもないけれど……。
それでも、感染症のまん延を口実に、みんなが必死になっている時期でも就職活動に本腰を入れることができなかった自分が、曲りなりにも(と言うと、自分自身の職業を卑下するようで良くないが……)、社会人として活動できているのは、あの時、横田さんの『奇跡のバックホーム』と出会ったからだった。
心が引きこもりかけていた僕に、立ち上がろうとするキッカケをくれたのは、周りの友人や家族など、自分を支え、応援してくれる人たちがいることを気づかせてくれた、この本のおかげだった。
自分の身体に起こる不調に対する不安や、人生を賭けて打ち込んできた野球ができなくなる葛藤と向き合いながら病気と戦った姿、そして、ボールが二重に見えるというハンデを負いながら、引退試合で守備につき、ヒットで本塁を目指したランナーを捕殺してみせた「奇跡のバックホーム」のエピソードから勇気をもらったのは、当然のことながら、僕だけではないと思う。
その当事者である横田さん本人が亡くなったという。
いまの自分があるのは、あなたのおかげだ――――――。
横田さんには、いつか、そのことを伝えたいと思っていたのだけど、僕のそんな想いは、叶わなくなってしまった。
彼の訃報に接して以来、僕は、その出来事に、どう向き合えばいいのか答えを出せないでいた。
一軍の試合を離れてからは、著作や動画を通じてしか、彼を知らない僕でもこれだけのショックを受けているのだから、ご家族や生前の彼と親しかった関係者が感じる衝撃は、大きいだろう。
そんな、横田慎太郎・元選手の追悼試合が行われることになった。
夏休みに入っても仕事のある学校での業務を終え、急いで帰宅した僕は、CS放送で試合前に行われた追悼セレモニーを食い入るように見つめる。
横田さんが、現役時代の最後に登場曲として選んでいた、ゆずの『栄光の架橋』が流れると涙腺に熱いものがこみ上げてくるのに気づいた。
試合は、現役時代の横田さんの姿を知る大山悠輔が、逆転ホームランと追加点のタイムリーを放ち、プロとして、同期入団の岩貞祐太・加治屋蓮・岩崎優の継投で逃げ切り勝ちを収め、カープと同率で首位の座を守った。
そして、試合のスコアは、奇しくも横田さんが、奇跡のバックホームを投じた二軍の試合と同じ4対2で阪神の勝利だった。
【本日の試合結果】
阪神 対 巨人 12回戦 阪神 4ー2 巨人
横田慎太郎さんの追悼試合となった一戦は、阪神の逆転勝利。
佐藤輝明のタイムリーで先制したあと、ジャイアンツに逆転を許したものの、6回裏に大山悠輔の2ランホームランで再逆転。
7回以降は、プロ選手として、横田氏と同期入団の岩貞祐太・加治屋蓮・岩崎優の継投で逃げ切り勝ち。
この日、本拠地マツダスタジアムでスワローズに快勝したカープと同率首位の座を守った。
◎7月25日終了時点の阪神タイガースの成績
勝敗:46勝34敗 3引き分け 貯金12
順位:同率首位
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