空が青ければそれでいい

Jekyll

文字の大きさ
7 / 43

7

しおりを挟む
これってもしかして嫌がらせ?いや、でも嫌がらせすんのに、男のナニ握って扱ったり出来る…?
無理無理無理無理。そないな冒険したないし…って十分してるよな。
「…何?黙って…何か気に入らんか?」
今だに俺の上から退こうとせん風間が、片眉をクイッてあげて顔を近づけてくる。
気に入らんやと?当たり前や。
性欲に負けたんは認めるけど…!!さっきまで人殺しかけてたくせに、今は男のナニ扱いてるって何ですか?
「やっぱり…お前変態や」
そう吐き捨てた俺を見る風間の顔は変わらん。
変態で結構。他人にどない思われようが、関係あらへんって感じ。
「変態にイかされて喘いだん誰や」
ぐうの音も出んてこのことやわ。
半袖のシャツから伸びた、風間の細いくせに筋肉のしっかりついた腕。それに残る無数の引っ掻き傷。
リアル過ぎて反論出来ひん。数十分前の、快感に負けた俺を殺しに行きたい。
「…これでとーか交換、十分やろ」
身体の熱が冷めてきたら、やたらと太陽の熱さを感じる。俺の上でマウント取る風間を押し退けて、身体を起こした。
情事の後のけだるさが嫌い。変に虚しいのが嫌。
あ~あ、やっちゃったみたいな。
今回のんは、ほんまに”あ~あ、やっちゃった”って感じ。
「自分ばっかり良くなって終わりやないやろ」
「は?」
「抱かしてもらわな」
抱くってなに?ぎゅーっとやなくて…?
このとき俺は、史上最高の間抜け面を風間に曝した。
このまま猛獣と一緒におったら、マジで掘られる。
身の危険を感じて“無理や、他当たれ。お前なら女でも男でも喜んで足開く”って言うたらオマエやないと意味ないって、真顔で告白。
全くもって、ときめかんわ。微塵も!
そりゃ気持ちよかったよ、善がるほど。だからって、ケツで善がる訳ないやん。
ケツやでケツ。
掃除機で水撒きせぇ言われてるくらい、かなり無謀。役割間違ってんのが明らか。
風間残して屋上から出て、階段おりながら考える。

何で俺にそんな執着すんの。

昔からの知り合いやない。
あない目立つ奴知らん。遊んだこともない。知り合ってからも、まともな会話してない。
風間龍大。名前しか知らん。
あいつかて俺の名前しか知らんはず。
やのに、猛獣のくせに、縋りつく瞳。
俺に何望んでんねん。俺みたいなんに縋ってどないすんねん。

「あっ!威乃!」
訳判らんまま悶々と廊下歩いてたら、背中突き刺す声。
振り返ると、彰信がこっち向かって走ってきてた。
「何や、彰信。一人か?」
「オマエ授業、終わったで。ハルめちゃくちゃ怒ってたし。携帯シカトしてどこおったん」
「寝てたんやて」
言えるか。男に股開いて扱かれてたなんか。
「そー言えば威乃達、昼休みの乱闘見てたんやろ?」
「乱闘?ああ、見た見た。スプラッターな」
「やられた奴、みんな病院やて」
そりゃありゃ病院やろ。斎藤の手に負える範囲越した乱闘やわ。
「おい、秋山」
二人して仲良ぅ歩いてたら、それを邪魔する野太い声。振り返ってチッと舌打ち。
ヤバいのに会うた。三年のもう一人の頭。前山享。東条とてっぺん争いしとる奴や。
なんや、中学から柔道やってるとか…。なるほどな、ガタイもちょっとやそっとでもピクリともせん感じ。
彰信が誤解しよったみたいに、俺が東条ヤッたってコイツも誤解しとるんやないか?
東条おらん間に片っ端から片付けて、てっぺん取る気やろか。
最悪や…コイツとはヤるん避けてたのに。
ハルが一回ヤって、俺にやんなよって忠告してきた。かなりヤバいって事やと思う。
「威乃…」
彰信が、俺の制服の裾をギュッと握ってくる。ガキかオマエは。
「俺知ってるやろ」
何そのセリフ。知らん言うたらどうなるん。
「噂はかねがね」
「お前と名取が二年仕切って、好き勝手しよるらしいな」
ほらね、やっぱりね。人の噂信じたらあかんで。俺、仕切ってないし。
ハルは頭になってるけど、俺はハルと連れやってるだけで何もしてへんし。
いや、それは嘘なるな。したよ、暴れたよ、存分に。
その結果、腹が腐ったくだもんに変身や。
「何なん?喧嘩はイヤやで。今は不利なるやん。俺ボロボロやねん」
「…ほな、対等にせなあかんなぁ~。なら、俺がお前の横の奴とガチでやろか」
ニヤリと笑って、俺の隣の彰信をロックした。それに彰信は壊れたオモチャみたいに、ひたすら首を振った。
当たり前や。彰信は喧嘩はギャラリー専門やねんから、こんな三年の大将なんかとヤッたら死ぬわ。
「そないな勝負、結果見えてるやないですか。コイツ喧嘩なんか出来ませんし」
グイッと、彰信を自分の後ろに隠す。それを前山と一緒に来てた奴らが笑った。
「威乃…」
震えながら、彰信が俺のシャツの裾を引っ張る。
どんだけ情けないねんとは思うけど、彰信はヘタレやからしゃーないし、連れは死んでも守るんがモットーや。
が、今は正直しんどい。身体かて普通やないし、腹なんか殴られたら間違いなく死ぬ。
「日ぃ改めません?今日はやめときましょ」
「逃げんのか、腰抜け」
「あぁ?」
人が下手に出てたらこれかよ。
東条おらん間にてっぺん取ろうって奴が、どんだけエラいねん。
「威乃…あかんて!」
彰信が腕をグッと引っ張って、必死に止めてきよる。
沸点の低い俺がブチッと行くのを、必死こいて阻止。
「彰信…お前逃げろ」
「え?」
と彰信を見た瞬間、俺の身体は彰信から離された。
あっちゅー間。
「威乃!!」
「っ!離さんかい!!」
盾を失った彰信が、慌てふためいとる。
俺も戻ろうとしてんのに前山の仲間が、がっちり後ろから俺を捕らえて離さん。
「彰信!逃げろ!」
ヤられてまう!逃げろって言うのに、彰信の前に前山が立ちはだかって、彰信の行く手を遮った。
彰信は、今にも腰が抜けんばかりに怯えて、前山を見上げる。
「彰信!!」
守らなあかん!
家族なんかより、女なんかより、何も言わんで一緒にアホな事してくれる連れを…。

守らなあかんのに!!!

ゴツッて鈍い音して、彰信の身体が壁に叩きつけられた。
彰信がゲホゲホ咽せながら立ち上がろうとするんを、前山が蹴り上げる。
「やめろぉぉお!!!やめんか!!ふざけんな!!てめぇ!絶対にぶっ殺してやる!絶対に殺してやる!!」

やめてくれっ…!!

廊下には、初めから人払いしてたんか誰もおらん。
おったとしても、こんないざこざ、誰も巻き込まれたいなんて思わん。

このままじゃ、彰信が…!!!

フッと視界の端に見慣れた影。廊下の向こう、だいぶ遠くにおった奴。
俺はそれを捉えると、迷うことなく叫んだ。
「風間ァ!!彰信助けぇ!とーか交換じゃぁぁあ!!」
「はぁ?何助っ人呼んでんねん」
俺を捕らえてる奴が、呆れた声あげて腹に膝蹴り入れてきよった。
だから腹はやめぇ…。うずくまる俺の視界に、見慣れた男。
すでに、前山と向き合ってた。
犬みたいに早い奴。呼ばれたら、飛んでくる見たいな。
「何やお前」
「等価交換…交渉成立やな」
風間がそう言って、前山を見る。
その目はやっぱり牙剥いた猛獣で、前山がビクッとしたん俺は見逃さんかった。
「彰信の…敵とれ、せやないと…交渉不成立や」
そう言った俺の言葉を聞いてか聞かずか、風間の拳は前山を捕らえてた。
半端ない強さ。荒さもない、隙もない拳。
前山の拳なんか掠りもせん。前山の仲間が俺を捕まえんの止めて、加勢に入っても風間優勢。
こないな喧嘩見たことない。退屈そうに牙剥いた猛獣が、次々と向かって来る奴を殴り飛ばす。
何人おんの?前山の柔道してるなんて嘘ちゃうの?っていう位、技らしいもんすらかける隙がない。風間は一人やで。
誰も、一切歯が立たん。

コイツ……何者!?

あっという間に、前山達は呻きながら廊下の床と仲良うなっとった。
人気ない校舎で良かったわ。
「彰信!」
慌てて彰信に駆け寄ったらズクッて鈍い痛みが腹に走って、倒れる…!と思ったら、風間の胸ん中。
マジで人気ない校舎で良かった!!!
「また腹か」
また言うな!また!
「コイツ、気ぃ失のうてんで」
風間の言う通り、喧嘩の“け”の字も知らん彰信が、ガチでいきなり三年の大将。
無謀すぎる。ライオンと子犬が闘えるか?
今日は彰信が厄日やな。
風間は彰信を背中に負ぶると、そのまま、また保健室に連れて行った。俺ももちろん同伴。
救急隊みたいな奴や。
斎藤は俺ら見て、またか…と疲れたように呟いた。
ちゃうで、まだあの廊下にはゴロゴロしてんねんで。これからやで、斎藤。
結局、彰信はただビビって気ぃ失っただけで、大したことないらしい。
斎藤が彰信は帰りは送るからと俺らは保健室を放り出されて、ほな帰ろうか思ったら風間の腕に捕まった。
「忘れたんか」
「……え?いますぐ?」
逃げたろう思ったのに、”とうかこうかん”。
「逃げるやろ」
バレてるやん…やっぱりそないに甘ないってことか。
「何すんの?」
「言うんか?ここで」
「アホか…ええわ、オマエん家行こ」
男に二言はない。
何やかんや言うても、彰信を助けてくれた貸しがある。貸しは返さなあかん。
何でも借りたら、即返ししとかな。これ、常識。

またハルとかに捕まって、色々言われるんウザいから、風間と学校抜け出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

平凡ハイスペックのマイペース少年!〜王道学園風〜

ミクリ21
BL
竜城 梓という平凡な見た目のハイスペック高校生の話です。 王道学園物が元ネタで、とにかくコメディに走る物語を心掛けています! ※作者の遊び心を詰め込んだ作品になります。 ※現在連載中止中で、途中までしかないです。

姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました

拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。 昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。 タイトルを変えてみました。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

処理中です...