家出王女と追放騎士

佐ノ宮

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どうしてこうなった?

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       第一章
     王女との出会い
 今いる場所は、モンスターの出る森の中だってことは分かるが、なぜ第一王女がこんな所にいるんだ?
    時を遡ること十分前
俺は、王の命令に逆らい国を追放された。
だから、別の街に行こうと思い森の中を歩いていたら女性の悲鳴が聞こえたので駆けつけてモンスターを退治し、振り返るとそこには第一王女がいた。
「お怪我はありませんか?シェリア様」
「大丈夫よ。助けてくれてありがとう」
そう、この方がこのアーデル王国の第一王女、シェリア・リーベル様。
「城までお送りします。こちらへ」
「イヤ!もう城に戻りたくない!」
「なぜです?」
「あの城にいたら、もう二度と外に出れなくなる。そうなるくらいなら、死んだ方がまし!」
そういう事か。言ったらシェリア様は家出したんだな。あの城の中にいる事で、外に出た事がなく外の世界を見たくなったってところだな。
「あなた、名前は?」
「ウィル・スミスです。シェリア様」
「その、シェリア様ってやめてくれない?今からシェリアって呼んでウィル」
「よろしいので?シェリア様」
「いいわよ。それより私も連れて行ってくれない?ウィルと一緒に」
城に戻りたくないから、俺と一緒に旅?にでるって事かな?
「危険ですよ?死ぬかもしれないんですよ?」
「もう、覚悟してるわよ」
今のシェリアの目は嘘偽りのない覚悟の目をしてる。
「分かりました。なら私が全力でシェリアを守ってみせます!」
「守らなくてもいいわよ。魔法なら使えるから、街についたら防具とか買ってくれたら、自分の身ぐらい守れるから」
まさか、王女が魔法を使えるなんて知らなかった。
「なら、行きましょうか」
「もちろん!」
そうこの日から王女と俺の旅が始まった。
       第二章
    いきなり難易度が高い!
 あの夜から、王女と旅をすることになって早数日、街に着いて防具とか武器を買い揃えギルドに向かった。ギルドのメンバーになることが出来たので、さっそく依頼を受けることにしたのだが……
「生きる雷!聖なる流水!灰となれ炎上!」
王女の使う魔法って全部古代魔法ばかりじゃないか!あんた何者?
「……凄いなシェリア」
「こんなのまだまだよ」
じゃあそれ以上の魔法も使えるのか?なんか怖くなってきた。シェリアに逆らうのはやめておこう。
「そろそろ戻ろう!ウィル」
「そうだな。ギルドに寄って報酬貰わないと」
報酬でなんとか生きていけてるけど、さすがに辛くなってきたな。家を買うしかないかな。明日ギルドに行ったら、報酬が高いやつを選んでみよう。
そして次の日、ギルドで依頼を選び依頼者の元へ向かった。
「ウィル、どんな依頼を受けたの?」
「ある使われてない家があってな、そこにモンスターが住みついたらしく退治して欲しいんだと、退治したらその家が貰える」
「本当に?騙しとかじゃないでしょうね?」
「依頼を終わらせたら分かることだろう」
「それもそうね」
本当ラッキーだったな。こんな依頼があるなんて知らなかった。でもなんでギルドの奴らは受けなかったんだろう?よく分からないな。
「ちょっとウィル、あれ……」
「なんだよシェリア?嘘だろ……」
あのモンスターは、強力な毒を持つ蟒蛇ビルレントスネーク!だから、誰もこの依頼を受けなかったのか!シェリアの魔法でも押しきれるのか?
       第三章   
     少し厄介な事に
 こんな蟒蛇が住みつくなんて、ありえるのか?誰かが何かの為に住みつかせたという考えもある。
「ウィル!依頼者から話を聞いてきたわ!」
「なんて言ってた?」
「それが、昔この家にあの蟒蛇の飼い主が住んでたらしいんだけど、その飼い主が旅に出たっきり帰ってきてないんだって」
「要するに、その飼い主が帰ってくるのを待ってるってわけか」
そんな事が分かっても、どう対処すればいい?
あの蟒蛇の牙には、触れたら最後死に至るって聞いたからな。やっぱ、攻撃するなら鱗しかないか?だが鱗は硬いって本で読んだような。
クソっ!考えてても切りが無い!行くしかないな。
「シェリアは、援護を頼む!俺は接近戦で行く!」
「危ないよ!ここは遠距離で攻撃したほうがいいよ!」
「悪いけど、もう遅い!」
あいつの牙を凍らせてみるか。
「我が放つ斬撃は全てのものを凍てつくし、永遠の死をもたらす!氷死斬!」
あの呪文みたいなの、どこかで聞いたことがあるような……。そんな事より、私は援護に集中しないと!
「生きる雷、灰となれ炎上……。炎雷覇!」
二つの魔法を融合して撃つのも、ちょっと辛いわね。でも、ウィルの援護を任されたんだから泣き言は無しだわ!
凄いな、シェリアの融合魔法。あれのおかげで結構なダメージを与えられたはずだ。あと少し、あと少しで終わりそうだ。
「シェリア!さっきの融合魔法、もう一発いけるか!」
「誰にものを言ってるの?余裕よ!」
なら、こっちはあいつが動けなくしなくちゃな!
「我の歩んだ道は全て凍てつくし、二度と歩む事の出来無い道。氷牙亞!」
動きは止めた。頼むぞシェリア!
「流れる風臥、生きる雷……。風雷覇!」
キュリャーーーーー。
やっと終わった。ていうか、この蟒蛇こんな声で死ぬんだな。なんか可愛い死に方だ。
「大丈夫か、シェリア!」
「大丈夫って言いたいところだけど、もう動けないや」
「なら、おぶってくよ」
ギルドに戻ってから、またこの家に来よう。今日からは、ここが俺のいや俺達の家だ!
       第四章
      国の追放者
 俺達は、依頼を終わらせてギルドに戻ってる最中に悲鳴が聞こえたので駆けつけてみたところ、何やら盗賊に襲われている女性を見つけた。
「あんたら、何大人数で女性を困らせてんだ。恥ずかしくないのか?」
「うるせー!怪我したくなかったら、黙ってろ!」
「ここで見てろってんなら、無理な相談だ。逆にそっちが怪我したくなかったらここから立ち去りな!」
悪いなシェリア、ちょっと行ってくる。
本当にお人好しねウィルは、いいわよ行ってきて。
向こうから攻撃を仕掛けてきてくれて助かった。
「我が放つ斬撃は全てのものを凍てつくし、永遠の死をもたらす。氷死斬!」
あと二人か、俺もまだまだ甘いな。
「兄貴、こいつ氷剣のウィルだ!国を追放されたって聞いたがまさかこんな所で会うなんて」
氷剣のウィル。私の国で軍隊長をしていた人の名前だ。そうだ、私昔ウィルに会ってる。だからあの呪文みたいなのに覚えがあったんだ。
「まだやるかい?あんたも仲間みたいに氷漬けになりたいかい?」
「いいや、やめておこう。氷剣のウィルに勝てるほどの剣技はないからな。ここは引くことにしよう」
疲れた。あの蟒蛇と連戦だからな、流石に疲れた。とっととギルドに戻ろう。
「あの、ありがとう御座います!助けてくれて」
「礼には及ばないよ。あんたも気をつけて帰りなよ!」
「さぁ、帰るぞシェリア!」
「私動けないんだけど……」
「悪い、忘れてた」
「あんたね!」
後で、ウィルに聞いてみよう。なんで国を追放されたのか、なんで追放した国の王女を助けたのか。
       第五章 
      大丈夫かな?
 ギルドに着いて、あの家を使っても良いと許しを得たのでさっそく戻って使うことにし、今色々な所を掃除しているところだ。
「あの蟒蛇、一体どんな生活してたらこんなにネバネバしたやつが付くんだよ。もしかして飼い主はこれのせいで旅に出たんじゃ」
早いとこ掃除を終わらせて、飯にしよう。腹が減った。
「おぉ、流石に風呂はでかいな!見た目が豪邸だったから期待はしてたけど、ここまでとは」
まぁ、豪邸並みだから部屋の量も多いし結構広いしな!でも二人で使うには広すぎやしないか?
部屋の事は後で考えよう。
「シェリア!そっちは終わったか?」
「終わったわよ!そっちこそどうなの?」
「こっちも終わった!飯にするか?」
「そうね、そうしましょ」
まずい、考えてみたらシェリアは王女だったんだ。としたら俺が作るしかないのか?作れるけどなぁ、何を作ろう。王女の口に合うものを作らないと!
「シェリア、出来たぞ!」
「凄いね、ウィル料理出来たのね」
「まぁ一応な」
ゴクリ。ここで上手くないって言われたら、俺どうなるんだ?また、外食になり金がどんどんなくなってく事になる。それだけは避けたい。
「美味しい!ウィルが作った料理全部美味しいわよ!」
よ、よかった。なんか安心したら、腰が抜けた。
「ちょっとウィルどうしたの?」
「いや俺の料理上手くないって言われたらどうしようって思ってから」
「バカね。私がウィルの作った料理を不味いなんていうわけ無いでしょ」
よかった。
これで外食は免れた!
そういえば、この街に料理器具の売ってる店あったかな?明日、行って見てこよう。
       第六章
     街に行ってみると
 さて、食材を買ってくるとするか!金は蟒蛇退治の時に結構貰ったから問題はないだろう。
「シェリア!俺は買い物に行くけど、シェリアはどうする?」
「行くわよ!私をひとりにしないでよ!」
「悪かった。じゃあ行くか」
「うん!」
シェリアは、なんだか嬉しそうだな。なんかいい事でもあったのか?
 ウィルと買い物なんて、こんないい事があるなんて!いつもなら依頼とかで一緒だけど、今日は違う。なんだかデートみたいで楽しい!
「ん?あれは」
いじめられてる?それも、男が寄ってたかって昨日の盗賊みたいだな。
「おいガキ共!寄ってたかって女の子をいじめてんじゃねぇよ」
「うるせぇよオッサン!」
今のは流石にイラッときたぞ!
「誰がオッサンだ!おじさんと呼べ!」
「知るか!行くぞお前ら」
ぞろぞろとガキ共が走って逃げていった。面倒な奴らだな。
「大丈夫かい?嬢ちゃん」
「ありがとう、おじさん」
「いいってことよ。それより家はどこだ?送ってくよ」
「本当?」
「ああ、本当だ」
そう言って、少女についていき家まで送っていった。すると、昨日助けた女性がそこにはいた。
「あなたは、確か昨日盗賊に襲われていた」
「あなたこそ、昨日助けたくれた方じゃないですか!今度は妹を助けてもらってすいません!」
「いえ、別にいいんですよ。それより……」
なんとなく、この子がいじめられてた理由が分かった気がする。おそらく、貧乏だから周りの子供から色々言われてきたんだろう。ちょっと提案をしてみるか。
       第七章
      新しい住人
 この提案をのってくれるのなら、いじめられる事もなくなるはずだ。あくまでのってくれたらの話だが。
「なぁ、あんた。俺の家で使用人をやらないか?もちろん、金は払うし俺の家で暮らしてもいい。どうだ?」
「でも、また迷惑になるわけにはいきませんし」
「妹の方は、行きたそうにしてるが?」
やっぱり子供は正直だな。これでいじめられる事もなくなるし、俺も依頼に集中出来る。一石二鳥だ。
ただ、姉の方がこの提案のってくれるかどうか。
「分かりました。お世話になります、でもお金はいいです。家に住まさせてもらえるだけで充分です」
「そうか?なら今日から頼んでもいいか?必要なものは俺が買っておくから、準備が出来たらここに来てくれ」
そう言って、地図を書いたメモを渡した。
「ありがとう御座います。何から何まで」
「いいよお礼は。もし飯の買い物に行く時は言ってくれ、金を渡すから」
「分かりました」
そういえば、シェリアの事すっかり忘れてた。
あいつ放っておいて来ちまったからな、なんて説明しよう。
「また、家で会おう。えっと名前は?」
「申し遅れました。私は、レイナ・アンジェラです。こっちは妹の、メリア・エリカラです」
「よろしく、レイナ、メリア」
「よろしくお願いします」
よし、とりあえずこの二人の服は後にして、生活用品を買いに行こう。二人増えるから、結構な荷物になるかも。
シェリアも捜しに行かないと。
「見つけた!ウィル、あんた今まで何してたの?ずっと捜してたんだよ!」
「悪い、ちょっと色々とな」
シェリアから来てくれるなんて、思いもしなかったな。今日はラッキーな事が多い。
そんな事より、生活用品を買いに行こう。
       第八章
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 そういえば、私何かウィルに聞こうとしていたことがあったような……。
ま、いっか。忘れるぐらいなんだから、たいした事じゃないだろうし。
「おーい、シェリア!」
ウィルが呼んでる。早くウィルの元へ行かなきゃ!
「何か用?ウィル」
「今日から使用人をしてくれる、レイナとメリアだ」
「よろしくお願いします。シェリア様、私がレイナでこっちが妹のメリアです」
ダメだな。シェリアのやつ、いきなり使用人を家に連れてきたあげく、二人共女性だからな。
絶対に怒ってる。
「よろしくね。レイナ、メリア」
ちょいちょいと手で呼ばれたので近づいたら
「あの二人何?なんで使用人なの?説明あるわよね」
「簡単に言ったら、貧乏な二人を家で使用人として働かせることにした」
「大丈夫なの?」
「何かあったら、俺がなんとかするさ」
とは言ったものの、どうしたものか。
メリアはまだ家事が出来無い。レイナは家事全般何でも出来ると見た。そうすると、
「家事全般は、レイナがやってくれ。メリアはレイナの補助を頼むけど、いけるか?」 
「家事は大丈夫です。メリアもそこそこ出来ますので、ご心配無く」
「そっか。なら大丈夫そうだな。今日はもう休んでいいよ、明日からお願い」
「かしこまりました。ウィル様」
なんだか、様で呼ばれるのは気がのらないな。
「レイナ、メリア俺の事はウィルでいい。それが無理ならウィルさんで」
「よろしいので?」
「無論だ」
「かしこまりました。ウィルさん」
なんとなく、シェリアの気持ちがわかったような気がする。確かに様で呼ばれるのは嫌だな。
あれっ?シェリアは?
       第九章 
    一緒にいてくれる理由  
 シェリアがどこかに行ったと思ったら、部屋にいたのか。少し安心した。
「シェリア、ちょっといいか?」
「私も、聞きたい事があるの」
「ウィル、なんで私と一緒にいてくれるの?ウィルは国を追放されたんでしょ?私の父のせいで。なのに、どうして私の事恨んだりしないで普通に接してくれるの?」
「確かに国を追放されたのは事実だが、シェリアが望んだわけじゃない。俺は国の王、つまりシェリアの父によって追放されたんだ。だからシェリアを恨む理由なんてない」
シェリアには、なんの罪もない。
俺はあの時、王の命令に逆らって国を追放されただけだ。
すると、下からレイナに呼ばれた。
「ウィルさん!お客様です!」
客?依頼は受けてないし、誰だろう。
「今行く!」
シェリアは、このまま部屋にいさせた方がいいかもしれないな。
「ウィルさん、おそらくお客様は国の軍隊かもしれません」
「軍?なんでそんなのがこんな所に?」
いや、思い当たる節ならある。
いずれ来るとは思っていたが、どうやってこの場所を特定できたんだ?それより、まずは軍隊の奴らを乗り切るのが先だな。
「俺の家に何か用ですか?」
「久しいな、ウィル」
「………誰?」
「俺だよ!お前の補佐役やってたエビル・プラント!」
エビル・プラント?そんなのいたっけな?
うーん、ああ!あの口だけの全然使えないパシリのエビルか!
「用はなんだ、パシリのエビル」
「パシリじゃねーよ!用は、お前の所にいるアーデル王国第一王女シェリア様を迎えに来たんだよ」
やっぱりそうか。娘がいなくなったんだから探さないわけないよな。
「いないって言ったら?」
「力ずくでも奪っていいと、王に言われてるんでね。怪我したくなかったらシェリア様を出しな」
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       第十章
     守り切ってみせる
 さーてと、どうしようかな。一気に終わらせたいが、それだと面白くないしな。
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「俺が逃げるわけにいかねぇだろ。軍隊長なんだから」
「立派になったなお前も。じゃあな、氷死斬!」
「あれっ?生きてるどうして」
ここでこいつを殺したら、隊長がいなくなるからやめておこう。
「もう帰れ生かしといてやるから。でも次に会った時は氷漬けにしてやるけどな!」
「参ったよ。俺は、お前には勝てないや」
よかった。何事もなく終わってくれて。
シェリアの部屋に行って、様子を見てくるとしよう。普段のシェリアになっててほしいが。
「シェリア、いいか?」
返事がない?まさか、いやでも、どうやって。
「シェリア入るぞ!」
クソっ!やられた。あの軍隊は囮だったのか!
俺が軍を相手してる内に、軍の一人が連れて行ったってわけか!やられた。シェリアを助けに行かないとな。絶対に助けてみせる!
       第十一章 
      二つの選択肢
 そういえば、シェリアはもともと第一王女だったんだ。軍の奴らがシェリアを取り返しにくるのは当たり前なのに。
シェリアは、王女なんだから自分の国にいるのが普通なんだ。俺は本当に助けに行ってもいいのか?迷惑じゃないか?とりあえず、シェリアの元へ行こう。
「レイナ、少し家を空けるが大丈夫か?」
「はい、家の事は任せて下さい」
そう言ってても、顔が悲しそうな顔をしている。
「そんな顔しないでくれ、ちゃんと戻ってくるから」
「本当に?絶対に戻ってきて下さいね?」
「ああ、絶対に戻ってくる。それまで待っててくれ」
「分かりました。いってらっしゃい!」
「うん、いってくる」
シェリア、待っててくれ。俺が本当に助けてもいいのか分からないが、すぐに行くから!
国を向かってる途中で何度も盗賊に出会った。
王の差し金か、もしくはエビルの奴かのどちらかだな。
そんなことしている内に、おそらく王女。つまりシェリアの部屋の下に着いた。
流石に、正面突破は難しいので部屋の下からシェリアの元へ向かう事にした。
「シェリア、シェリア!」
なんだろう、ウィルが呼んでる気がする。まさかね、ウィルはここにはいない。
「シェリア!ここを開けてくれ!」
「……ウィル、どうしてここに?後なんで空を?」
「飛行系の魔法を使った。シェリア、お前に二つ選択肢を選んでもらうぞ」
「一つ目は、このまま城の中で暮らし王になるか。二つ目は、俺についてきてあの家に戻るか」
私は、ウィルと一緒にいたい。
だけど、もう一度ウィルと一緒にいる事がバレたらウィルは殺される。それだけは嫌だ!
「ここに、残るよ。ごめんね……ウィル」
「そうか……なら俺は無理矢理にでもシェリアを連れ出す!」
       第十二章
       涙の理由
 ここまで来たら大丈夫だろう。ていうか俺、王女を誘拐したんだよな?これ完全に犯罪じゃん!
俺、犯罪者になっちまった!
「どうした?シェリア」
「なんで、私を無理矢理連れ出したの?こんな事したらウィルが死んじゃうのに……」
泣いてるのか?それより、今俺が死ぬって言わなかったか?
「どういうことだ?確かに俺は犯罪を償う為に牢獄送りかもしれないが、死刑はないんじゃないか?」
「違うの。またウィルと一緒にいる事がバレたらウィルは殺される。私の父にそう言われたの」
なるほど、だからあの時、城に残るって言ったのか。
俺の命を奪わない為に。
「バレなかったらいいんだろ?」
「そうかもしれない。でも、きっとすぐに軍が私の事を捜しに来る!そしたらウィルは、私の父によって殺される!」
「ウィルが死んだら、私の生きる意味がなくなる。ウィルがいるから今の私がある!」
そういう事か、つまり俺が死ななかったらいいだけの話じゃねぇか。
「シェリア、俺は死なねぇ。お前を残して死ねるわけないだろう?安心しろ、また軍が来たら追い返してやるから」
「本当に?私の前から消えたりしない?」
「もちろん。約束する」
シェリアは安心したのか寝てしまった。
俺は家に着くと、レイナ達に事情を話してある物を渡した。
「俺は今から氷の壁をこの家全体に作る。だが作ったらレイナ達が外に出られなくなる。でもそれを持っていたら、普通に出られる」
「いいか!外に出る時は、絶対に持って行けよ!でないと、氷漬けになるからな!」
「分かりました。もう、持っておきます!」
「それならいいや。じゃあ俺は今から作るから、飯の時間になったら呼びに来てくれ」
「了解しましました。ウィルさん」
        最終章
        突然の告白
 やっと終わった。
やっぱりこの家でかいから壁を作るのは難しかったな。でもこれで、軍が来ても大丈夫だ。仮にまた前みたいに、軍を囮にしてシェリアを奪おうとしても凍りついて動けなくなる。完璧だ!自分でいうのも何だけど上手いな、この作戦。
それからというもの、別に軍が来る事もなく三年も経つ。今は、普通にレイナとメリア、シェリアと何事もなく暮らしていた。
ただ、ある日の事。軍の奴らが俺の家に来た。
しかし、シェリアを奪い返しに来たわけではなかった。
俺がシェリアを無理矢理連れ出した日に、国王つまりシェリアの父親が病気にかかり、今の今まで命を繋いできたがとうとう亡くなったらしい。
だからシェリアを新しい国王にする為の式典に出てもらう為にわざわざこの家まで来たという。
「分かったわ。ただし、一つお願いがあるけどいいかしら?」
「何でしょう?うシェリア様」
「ウィルも同行させてもいい?」
おいおい、それはないだろシェリア!俺は、お前を誘拐した男たぞ!軍の奴らが許すわけが……
「いいでしょう。ウィルさんにも同行してもらっても構いません」
いいのかよ!
なんで警戒しないんだよ!
普通こういう時って、条件を呑めないからシェリアは行かないって言って仕方なく許す、みたいな感じだろ?それをあっさり許すなんて。
そんな事考えてたらいつの間にか城に着いちまったよ。
「ほら、行こうウィル」
「ああ、分かってる」
式典って言っても、俺は後ろにいるだけだろうな。
「私は、国王にはなりません!代わりにこの、ウィル・スミスが国王となり、私の夫となります!」
あ、もしかしてこれ仕組まれてた?あの時簡単に許したのはこの為か!でも、国民は許さないだろうな!駄目だ。もう手遅れ、国民全員許してるよ!
もう、なるしかないのか?いっその事なるか、国王に。
「今、紹介されたウィル・スミスです。国民の事を考えていい国にしようと努力します!」
何言ってんだ俺は。でもまぁ、やってやろうじゃねぇの!いい国にして、強い軍を作り、戦争なんて起らない国にしてやる!
                     完

一応、この後どうなるかのストーリーも書きますんで良かったら読んで下さい。(時間がかかると思いますが)言っときますが、中二病じゃないので!
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